第30話 娯楽の施設2

「さぁ、次はここだとも」

と彼女が紹介するのは全体的にピンク色の建物

なのだが、

「いや、俺今それどころじゃ無いんですけど⁉︎」

あれから耳栓が耳の何処にあるかも分からず焦りと恐怖が迫っていた。

「はぁ、あのねギルティ君。私が普通の耳栓を君に買うわけないだろう?」

「いや、普通の耳栓を買ってくださいよ」

まぁ、買ってもらい何の疑問も持たずに着けてしまった俺も俺なのだが

「君に買い渡したのはね。魔型耳栓と言って、突然の爆音や不快な音を聞き取りやすい音に変換してくれる魔道具…」

「もしかして、俺の耳を心配して」

この国に来て速攻音により潰れてしまった俺を見て買ってくれた、彼女の気遣いの賜物で…

「というのがあの魔道具の売り文句だね」

は無かったようだ

「本来の魔型耳栓はね耳を治療するためのものなんだ」

「耳の治療?でも、俺の耳に異常なんて…」

いや、でも耳栓をつけたあの時、音の聞こえが良くなったのは

「君さ、左耳が聞こえてなかったんだよ」

「…」

知らなかった。いや、知れるわけが無かった

この世界の音が、この聞こえ方が普通だと今日まで思っていたのだから

「ルクナさんはどうやってそれを知ったんですか?」

「私は『知識』の保持者だからね…と言えたら良かったが」

それを言っていたら溜め息と呆れが彼女を襲っていただろう

「本当は君と馬車で移動していた時に気が付いたんだ」

「馬車で移動していた時?」

馬車では彼女の話をひたすら聞いたぐらいで…

「君が私の話を聞かずに寝てしまったときにねどうにも反応が悪いから耳元で囁いたんだ。すると、どうだ?左耳で反応が無かったのに右耳では直ぐに反応するんだよ」

確かに彼女に起こされた時いつも右側に立っていたが

「正直、たまたまだと思ったよ。でもね、どれだけ試しても君は右耳でしか起きない。それに、君は意識してないだろうけど自然と人の左側を歩いているんだよ」

「…」

思い返してみると納得してしまう。人と歩きながら話す時や座る位置、人が隣に座る時も俺は導くように右に座らせていた。そして、寝る時も右耳を上にしていた気がする

「さぁ、答え合わせも終わった事だし。君は私に感謝をし、この店についてきたまえ」

「確かにそうですね。本当にありがとうございました」

俺は深々と頭を下げる。耳の治療をしてくれたんだ、頭を下げるぐらいで足りるとは思わない

「いやいや、結構だとも。さぁ、とりあえずこっちの店に…」

彼女は本当に心配してくれていたんだと、感謝をするべきなの…だろうが

「ルクナさん」

「ん?どうしたんだい」

「あの店には行きませんよ」

何処か甘ったるい匂いが離れていても分かる

「どうしてだい⁉︎エルフの体を隅々まで観察できる…」

「聞きたく無いです」

俺は感謝と呆れの感情を両方持ち俺はピンクの店とは反対の方向へ歩き出す

よく聞こえるようになった耳に彼女の嘆きの声が響くが俺は知らぬ顔で見知らぬ場所へ歩きだすのであった。

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