第29話 娯楽の施設1
「さぁ、まずはここだとも」
そう言い連れて来られたのは大きな四角の建物
大部分が金で装飾され、豪華な扉から聞き馴染みのない音が聞こえてくる。そして、
「いらっしゃいませ、お客さま」
マナペントほどでは無いが体が大きく、筋肉により服がパンパンになっている男が2人、扉の横に立っていた
「なぁ、ジャック君。彼はここが初めてなんだ…魔型耳栓を売ってくれるかい?」
「…か、かしこまりました」
知り合い…と言うわけでは無さそうであった
知り合いであれば会った時にお客さま、なんて呼ばないだろうしルクナが一方的に知っていると言った感じであった
ジャックと呼ばれた男はポケットをゴソゴソと漁り、袋を取り出すと
「では、お客さま。こちらをどうぞ」
と黒色の耳栓を俺に差し出す
「ありがとうございます」
俺は彼から耳栓を受け取り
「金貨3枚だろ?ほら」
ルクナがお金を支払う
馬車代やらこの道具代やら後で返さなくては、と思いつつ耳栓をつけてみる
だが、
「さぁ、行こうかギルティ君」
着ける前と後で音に変わりがない。むしろ、聞き取りやすくなったような。
「では、お楽しみください」
俺が疑問を口に出す前に2人の男が扉に手をかけ少し重そうな戸を開け放つ
中に見えるのは四角い箱の前で座り、無我夢中にその箱を触っている人たちの姿があった
その異様とも言える光景に彼女は何も言わず俺の手を引っ張り中へと連れ入った
扉が閉まると前を歩いている彼女の解説が始まる
「ここは、娯楽その1カジノだ」
周りを見るとただの箱を触っている訳ではなく何か回転しているものを一生懸命揃えているようだった
「君は恐らく聞いたことが無いだろうが一応話させてもらうよ。この建物は3階建てになっていてね。1階はスロット、2階はパチンコ、3階はルーレットやブラックジャックとなっているんだ」
彼女から知らない単語がゴロゴロと出てきて、頭が破裂しそうになりつつも話を聞き続ける
「まず、カジノの説明だね。ここはね金銭を賭け…金銭を出し勝負をする場所なんだ。勝てばお金が増え負ければ失う、そんな場所さ」
ニヤリと彼女が笑うとキョロキョロと辺りを見渡し
「まぁ、物は試し。こことここに座ろうか」
と2つの席を指した。とりあえず彼女に言われるがまま座り四角い箱を見る
先端に球体が付いた棒が飛び出してきており、横に3つ並んだボタン、その下に四角い穴、そして、7やリンゴなどの絵が縦3つ程並べて描かれている
「まずは、銀貨を9枚入れてレバーを握る、そして魔力を流して引く…」
「あのう、俺魔力が無いらしいんですけど」
「…へぇ」
彼女は少し笑いながら3つのボタンを素早く押す
キュインキュインキュイン‼
7が3つ揃った事によりキラキラと箱は輝き周りのお客が少し騒がしくなる
「なら、しょうがない。カジノは止めておくとしよう」
彼女がレバーとやらについているボタンを押すと
ジャラララララ‼
と音を立ててボタン下の四角い穴から大量の銀貨を吐き出す
袋に銀貨を詰めると彼女は立ち上がると出口に向かい歩き始めた
俺も急いで立ち上がり彼女の後を追うのだが彼女が遊んでいた箱にフラフラとした足取りで群がる人たちの姿を俺は見て見ぬふりをするのであった
ゆっくりと開く扉から出て次の場所目指して歩き出している。
ぱちんこ とか すろっと とかはどうなのかという質問をしたいが恐らく聞く気が無いので諦めるしかない。とりあえず、耳栓を外そうと思うのだが…無い。耳栓があるはずの場所に耳栓が無い。
嫌な汗が流れる。最初よりもかなり奥に入ったのだろうか?
「ルクナさん、耳栓が取れなくなったんですが⁉」
こういう時こそ彼女の『知識』を借りる時だと思ったのだが
「ん?大丈夫だよ」
ケロっとした顔で何が大丈夫なのか、わからぬが先々と歩いて行くルクナ。
俺は奥にあるであろう耳栓が更に奥に入らないよう気をつけながら彼女の背を追ったのであった
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