第7話 冒険者 part2
「さぁ、これで冒険者については大体わかりましたか?」
「…まぁ、大体は」
テロサスは冒険者について書かれた紙を回収し、小さな紙を取り出す。
「じゃあ、これが冒険者の書、一部の人間からはギルドカードと呼ばれているものだ。さぁ、持ってみたまえ」
テロサスに進められ
「それに魔力を…と言いたいところだけど無いのか…じゃあ、仕方ない。また血を貰うよ」
もう慣れたと言わんばかりの速度でテロサスは彼の血液を採取し
[ギルティ:星1冒険者 所属チーム無し 依頼完了数0 魔物討伐数0 功績 ]
「よし、これで君は冒険者として協会に記録された。…もう終わろうと思うが質問はあるかい?」
「いえ、特にはありません」
「そうか、じゃあ。今日も依頼に身を打ち込んでくれ」
そう微笑むと彼は立ち上がり扉を開ける。俺も立ち上がり彼の後を追う。
「あっ、マスター」
と扉を開いた事を確認した受付嬢がテロサスの前に走ってきた。そして
「マスター、報告です。【希望の剣】のリーダーが…」
「はぁ、またあいつらか」
と遠くを眺め。首を振り少し早歩き現場に向かった。
現場には
「この野郎…ッ!」
「…や、やめ」
とボコボコにされているマナペント程では無いが筋肉質な男とボコボコにしている相手に比べ少し細身の男がいた。
細身の男は剣を持っているのがわかるので先程聞いた【希望の剣】というチーム?のリーダーなのだろう。
「お二人ともやめてください」
止めようと受付嬢が奮闘しているが2人に聞こえている様子がない。
この状況を見たテロサスは声を大きくし
「マニュアルA、下方向に‼︎」
と叫ぶ。すると、何処からか赤い服の女性…でもあの服は受付嬢のデザインに似ている。そして、
「
と彼女が唱えると足元に魔法陣が現れ、輝く。
「…魔法?」
昔、メジカお婆ちゃんが使っていたのを見たことがある。お婆ちゃんが使っていたのは松明に火を灯せるぐらいのものであったが彼女は…
バキッ‼
床の木の板が割れる音が聞こえる。
「うおっ‼」
「ぐぇ」
そして、2人はバランスを崩し床に倒れたまま動かなくなった。いや、動けなくなったのか?
「拘束魔法?」
「惜しいですね。彼女の才能は『重力魔法』です。あの場所だけ下への重力を強めて彼らを拘束しました」
俺の近くにいたテロサスは笑顔で語る。だが、目は笑っていない。周りはそれを感じ取ってか静かに震えている。
「さて…ヘル、お前ここで問題を起こすのは何度目だ」
のんびりとした足取りで近づき仰向けで倒れているヘルと呼ばれている者にしゃがんで目を合わせる
「テロサスさん…それはッ‼」
ヘルは重力で動けてはいないが一生懸命立ち上がろうとしているのが一目で分かる。
「分かってる。どうせ、ミカやセナにこいつが手をだそうとしたとかだろ?」
「…」
そう言われたヘルは黙り抗いを止める。その通りだったのだろうな。でも、テロサスはなんでわかったのだろうか?何度も問題を起こしていると言っていたから…同じ理由で問題を起こしているのだろうか?
「はぁ」
溜息をつき立ち上がる、次はボコボコにされていた男に近づき再びしゃがんで目を合わす。
「…次はゲニンお前だ。お前もお前だよ。私が最近、あいつのチームに女性に手を出してボコボコにされる問題が増えてきてるから、チームに近づくなって大掲示板で発表したよな?」
「うぅ。そ、それは…」
怒られているゲニンとやらの顔はほんのりと赤い顔が段々と青ざめていく。
「酒飲んで忘れてたか?はぁ、どいつもこいつも。酒を飲むなとは言わないが程度を考えろよ」
「…はい」
テロサスはもう一度溜息をつき立ち上がる。そして、
「マニュアルA、解除だ」
「はい、マスター」
そう言うと彼女の周りに再び魔法陣が現れ、バラバラになるよう消えていった。
すると、2人はゆっくりと立ち上がる。
「さぁ、離れて飲むなり依頼をこなしにくなり好きにしろ」
彼の言葉を聞いた2人は黙ったままヘルは待っているチームの下へ、ゲニンは酒樽の方へ歩いて行ったのだった。
「すまないね、ギルティ君。こんなみっともない姿を見せてしまって」
「大丈夫ですよ」
実際これぐらいでないと初めて聞いた冒険者のイメージとかけ離れてしまうから。
「…マスター」
先程、魔法を使っていた彼女がテロサスに対し目を輝かせる。それを見たテロサスは彼女の頭を撫でながら
「分かっている。また後で私の部屋に来なさい」
という。それを聞いた彼女は嬉しそうな足取りで何処かに消えた。
それをポカンと見ていた彼の表情は何処か羨ましそうであった。
「さて、ギルティ君。あのカウンターに
そう言うテロサスも足早にこの場を去っていった。
この場に残されたのは少し寂しそうな彼の姿であったが。彼は首を振り、言われたカウンターの方へ歩いて行った。
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