第35話 娯楽終わりの食事

お湯が出てくるシャワー、同時に3人は入れそうな風呂、良い匂いのする木

どれをとっても最高であった

体が温まり少し幸せ気分俺は部屋の鍵を閉め、ワープゲートを通り、受付へ鍵を返す

そして、俺は知恵の巨木を後にしたのであった


お腹が鳴ること大体18回ほど、4人ほどに道を尋ねることになったが、ようやく美味しそうな匂いのする場所へと辿り着いた

「あれかな?」

周りの店には見劣りするものの大きくSと書かれたお店。中から何とも言えぬ、美味しそうな匂い

ぐぅぅぅ…

と匂いに釣られお腹が唸り声をあげる

その音がそこそこ大きく、近くを通った人がクスクスと笑う。一瞬で顔が熱くなり、1秒でも早くこの場を去ろうと店の中へ入る。


カランカラン

「いらっしゃい、適当な所に座ってくれ」

低めの声、制服が裂けてしまいそう程の筋肉、そんなカッコいい男性の手にはフワフワトロトロの半熟オムライス。そして、その後ろの1人席にて

「おはよう、ギルティ君」

何か温かそうな飲み物を飲んでいるルクナの姿があった

「おはようございます」

彼女に軽い挨拶を済ませると彼女の隣の席に腰を下ろす

「さて、早速話を…いや、まずはご飯を頼もう。ルーク、この子にカツサンドを」

「あいよ」

注文を聞いたカッコいい男性ルークはオムライスをお客さんに届けると素早く目の前で調理を始める

「さて、出来上がるまで簡単な報告をしといてあげるよ。まず、君があの部屋で本を読み始めてから1日半経過した所で眠り始めたんだ。そこから、今日まで3日間…」

そんなに経って、お腹が異常な程空いているのはそれが原因だったのか

「私が何をしても起きることなく途中呼吸が深くなり停止する事もしばしば」

「俺、よく生きてましたね」

「当たり前だとも、私が付いているんだぞ?呼吸の戻し方や、延命の仕方なんかは全部試したさ」

「ありがとうござ…」

「だけど、大体実験し終わったからホテルマン君に君の処…」

「それ以上言ったら貴方を殴ります」

お礼を言おうとするとそれを帳消しにするようなことを喋る彼女、いいかげん俺は学習するべきだろうか?

「カツサンドお待ち」

「ありがとうございます」

分厚いカツに白いパン、ほかほかと出来立てで温かい

「いただきます」

カツサンドを掴むと欲望のまま食らいつく。 肉の旨みと甘辛いソースが口いっぱいに広がり完璧とも言える一品へ変えられている。

「うまぁ」

口の中の幸せが無くなりお腹の底から溢れ出た一言であった。

「はっはっは、そんな幸せそうな顔されるとこっちまで嬉しくなっちまうよ。ほら、サービスだ」

ルークが嬉しそうに黄色い飲み物を出してくれる

「さっき届いたリンゴを絞って作ったんだ。飲んでみてくれ」

言われた通りにリンゴジュースを一気に飲み干す。

「ん‼︎とても甘くて美味しいです」

りんごの甘さのみを取り出した一杯は最高であった。その隣でルクナが

「良いなぁ、ギルティ君ばっかり」

と恨めしそうにルークを睨む。ルークはその視線を完全に無視し洗い物を始めた。

「まぁ、良いさ。話を戻すよ、ギルティ君」

切り替えたルクナが俺に問う

「君はあれを体験してこの先この国を楽しめそうかい?」

「…無理、でしょうね」

楽しめないだろう

あの幸せに人が踏み込んではいけない。あの溺れそうな幸せに…

「だろうね。まぁ、だからこそこの国の人間は楽しもうとしない訳なんだが…」

「ルクナさんが手紙に書いてあった幸せって何なんです?」

「あぁ、そうだね。それの説明をしてあげよう。ルーク、ホットミルク」

「あいよ」

「語ってあげようじゃないか。この国の本来の姿を」

そう言うと出てきたホットミルクを冷ましながら語り始めた

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