私の厄病神

バーニー

第一章『恋愛成就の神様ですか?』

 大学生になって一人暮らしを始めると、一か月に一度は、ポストに怪しい宗教勧誘の入会書やら小冊子やらを入れられるようになった。興味本位で読んでみると、そこに書いてあったのは「○○神に祈ると、すべての苦しみから救われます」だとか、「○○神はキリストよりも偉大な方で、およそ一五〇億年前に世界を想像しました」だとか、一瞬ネタと疑うくらいに、胡散臭いものばかりだった。

 大体、一冊十万もする経典とか誰が買うのだろう? 十万あったら私は、お洒落な服を買ったり、美味しいスイーツを食べたり…。あと、ずっと欲しいと思っていた香水も買いたい。イヤリングもずっと同じやつを着けてばかりだから、新しいデザインのものを買いたいな。これだけ買って、貯金はいくら残るだろう? 一か月分の生活費くらいは残っていてほしいな…。

 と、捕らぬ狸の皮算用はここまでにして、まあとにかく、「神様」という存在は信用ならない。

 神さまに祈るだけで幸せになる人生なんてつまらないじゃない。自分が幸せになるのも、そうじゃないのも、自分の頑張り次第でしょう? あと、実家が裕福だとか、田舎じゃなくて都会に住んでいるとか、顔が美人だとか、胸が大きいとか…。あと、才能とか? あれ? もしかして、意外に人の幸せは神さまが決定づけている?

 いや、私は公正世界信念の持ち主だからね。そんな、実家が裕福だとか、都会に住んでいるとか、顔が美人だとか、胸が大きいとか、才能とか…、確かにハンデはあろうとも、それ相応に努力すれば、必ず、幸せになれると信じている。

 だらだらと語ったけど、つまり、「神さまなんてものは必要ない! 全て、自分の努力次第!」。

 そんなことを言っておいて、お前はクリスマスにはクリスマスケーキを食べ、チキンも食べるし、親しい友人にはプレゼントを贈るじゃないか。それに、正月には初詣に行って、「玉の輿になれますように!」と願っているのを知っているぞ!

 と、何処からか聞こえるような気がするが、無視をする。そもそも、日本における信仰は自然宗教だから、唯一神を崇める創唱宗教とはわけが違う。苦しい時の神頼みとはこのことよ。

 とにかく、私は努力主義。例え、周りよりちょっと貧乏だったとしても、バイトのシフトを増やせば良い! 例え、田舎に住んでいたとしても、頑張って勉強して、都会にある大学に進学すればいい話。例え、周りよりちょっと顔が良くなくても、化粧して、アクセサリーつけて、髪を整えていれば、それなりに男は寄って来る! たぶん…。

 努力に勝る才能無し! 

 …とまあ、私はこういう信念で生きてきたわけだが、「人生を知る」とはこのことのようで、大学二年生の夏…二十歳になった私に、神さまに頼らざるを得ない出来事が起こった。

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