③
私は手をついて立ち上がると、スカートの裾に付いた埃も掃わず、ゆらゆらと歩き始めた。
お酒は飲めない。飲んだことが無い。それなのに、腹の底がむかむかとして、足にも力が入らなかった。地面が泥のように柔らかくなっているようで、その感覚の中進む私は、まさに千鳥足を踏んでいた。
…忘れよう。嫌なことは全部、忘れてやるんだ。
ははっ…と笑う私。道行く者たちは、酔っ払いの戯言だと思い、何の反応も示さなかった。
よし、今日は、やけ酒だ…。
そう決心した私は、すぐ目に入った居酒屋の暖簾を潜り、出迎えた大将に言った。
「ヘイ大将! ウーロン茶に見せかけたウイスキーに見せかけたウォッカ一杯!」
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