⑤
ファミレスを出た私たちは、その場で別れることとなった。
「それじゃあ、オレはあずさのところに戻るわ」
「は、はい。お気をつけて」
先輩に手を振る。先輩も私に手を振り返し、「またサークルで」と言った。
先輩が路地を曲がって見えなくなるまで、私はずっと手を振っていた。
「さてと…」
西を見ると、日輪が傾き、夕方が来つつあった。
少し和らいだ猛暑の中、私は頬を伝う汗を拭うと、スキップを踏みながら歩きだす。
そのままアパートに戻ろうとしたが、サダハルのことを思い出し立ち止まった。
「どうしよう、サダハルおいてきちゃった…」
いや、まあ、あの自由奔放な厄病神のことだから、どうせ夜になるまでには腹を空かせて帰って来ることだろう。
そう判断した私は、城山さんのマンションに引き返すことなく、また歩き始めた。
そうして、大学の前を通り過ぎ、商店街を抜け、人気の無い路地を進み、もう少しでアパートに辿り着こうとした時…。
「ねえ」
背後から誰かに話しかけられた。
「え…」
反射的に振り返った瞬間、何やら黒いものが迫り、私の額に直撃した。
カアアンッ! と甲高い音が空に吸い込まれるとともに、私の身体が大きくのけぞる。
額が裂けて、吹きだした血が、空の赤色に溶け込んでいく。と思えば、まるでライターで炙ったかのように、ぷつぷつ…と視界に黒いものが広がった。
あ…。
次の瞬間、私は気を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます