ファミレスを出た私たちは、その場で別れることとなった。

「それじゃあ、オレはあずさのところに戻るわ」

「は、はい。お気をつけて」

 先輩に手を振る。先輩も私に手を振り返し、「またサークルで」と言った。

 先輩が路地を曲がって見えなくなるまで、私はずっと手を振っていた。

「さてと…」

 西を見ると、日輪が傾き、夕方が来つつあった。

 少し和らいだ猛暑の中、私は頬を伝う汗を拭うと、スキップを踏みながら歩きだす。

 そのままアパートに戻ろうとしたが、サダハルのことを思い出し立ち止まった。

「どうしよう、サダハルおいてきちゃった…」

 いや、まあ、あの自由奔放な厄病神のことだから、どうせ夜になるまでには腹を空かせて帰って来ることだろう。

 そう判断した私は、城山さんのマンションに引き返すことなく、また歩き始めた。

 そうして、大学の前を通り過ぎ、商店街を抜け、人気の無い路地を進み、もう少しでアパートに辿り着こうとした時…。

「ねえ」

 背後から誰かに話しかけられた。

「え…」

 反射的に振り返った瞬間、何やら黒いものが迫り、私の額に直撃した。

 カアアンッ! と甲高い音が空に吸い込まれるとともに、私の身体が大きくのけぞる。

 額が裂けて、吹きだした血が、空の赤色に溶け込んでいく。と思えば、まるでライターで炙ったかのように、ぷつぷつ…と視界に黒いものが広がった。

 あ…。

 次の瞬間、私は気を失った。

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