第51話 三国平定

 建業は、平定された。それに伴い旧呉国の城も降伏して行く。杜預君と賈充君の電撃作戦が功を奏した。短期間で旧呉国が平定できたよ。

 孫権は捉えて、洛陽へ送る。

 捕虜にして、俺も一緒に帰るのだ。荷造りをしてる時だった。


「待って~、陛下! こいつ玉璽を隠していました!」


「ありがとうなのね。王渾おうこん君」


 実は、忘れていた玉璽。だけどさ、もう必要なくない?

 シミュレーションゲームだと真っ先に欲しいアイテムだけど、最後に手に入ったのか……。

 諸葛丞相が、見つけたんだか作ったかした玉璽を、俺は持っているし。

 まあ、蜀漢国の正統性を示すためにも持っておくか。

 俺は、玉璽を受け取って懐に仕舞った。


 孫権を見ると、睨んでいるよ……。


「貴様~! この俺にこんなことして、ただで済むと思っているのか~!!」


 ……本格的にダメだね。

 国が滅んだのも理解していないっぽい。マジにボケてるよ。


 孫権の子と孫の、孫亮と孫休及びその一族も捉えた。孫家全員とはいかないけど、まあ大丈夫だろう。

 それと、呉の四姓だな~。一応降伏している。


「とりあえずさ、呉の四姓は独立自治でいいよ? ただし、侵略はしないでね。今の土地で満足してね」


「「「えええ!?」」」


 涼州とか隴西地方は、ほぼ独立状態だ。だけど、物資の援助で臣従させている。

 結局のところ、土地を持っていても、売り買いする商人がいなければ、単独での自治は不可能っぽい。

 少しずつ、資産を削って行って、呉の四姓は、自然消滅させようと思う。


 建業の太守には、王渾おうこん君を大抜擢した。これは、玉璽を見つけた功績という理由をつけたんだ。

 反発も多いけど、実力で黙らせて貰おうと思う。才能はある。俺はそれを知っている。

 それと、司馬炎君が柴桑に残った。荊州と揚州を纏めて貰おうと思う。次期、丞相候補だね。





 洛陽に帰って来た。

 もうね、お祭り騒ぎだよ。住民まで浮かれてんじゃん。

 宮殿に入り、玉座に着く。


「「「陛下! 天下統一おめでとうございます!」」」


「あ~、まだね。交州が残ってんじゃん? それで、天下統一ね」


「「「えええ? あんな、遠くまで遠征するつもりですか?」」」


 交州刺史の陸胤りくいんに、洛陽に挨拶に来るように手紙を書く。

 そうすると、貢物を差し出して来た。

 俺の密偵に反乱起こされて、苦し紛れの策に出て来たか。


『シミュレーションゲームだと、払えるモノが亡くなった時点で降伏すんだよな~』


 益州と荊州の兵を南部に集結させて、威嚇する。

 それと、月一回の手紙だ。

 段々と、貢物がショボくなって来た。

 そして、三ヶ月後に陸胤りくいんが自ら来た。恭順の意を示してくれたよ。


陸胤りくいん君は、そのまま交州を治めてね。それとさ、お土産持って帰ってね」


「「「えええ!?」」」


 陸胤りくいん君は、泣きながらお礼を言って帰って行った。

 お土産の兵糧は、多かったかもしんない。

 反乱は、頑張って沈めて貰おうか。それと、俺の名もなき密偵君にも褒美を与えないとね。彼が、陰の功労者なのを知っているのは、俺だけだ。


「終わったね~。これで本当に天下統一だ」


「……陛下。これからですぞ!」


 そうだよね……。これから、内乱と戦わないといけない。



 そうそう、陳寿を見つけたよ。そう言えば、蜀の人だったね。

 陳寿には、洛陽に呼んで『三国志』の編纂に励んで貰う。

 特に、父の劉備時代だな~。

 資料がない部分があるので、追記して貰おう。

 それと、俺の都合の良いように改ざんしたい箇所もある。問題なのが、俺の名もなき密偵君だな~。ちょいちょい、活躍して貰っている。どう説明しようかね?

 





 今日は、禅譲の儀だ。

 一年間、各地の平定に忙しく働いていた。やっと行えるよ。


 延熙14年(251年)。三国志演義だと、司馬懿の死亡した年だね。因果とかないと思うけど、まあこじつけかな。

 孫権の死亡より、1年早い。晋国設立よりも20年以上早いな。

 

 1,000人を超える文武官、それと張皇后が参列してくれている。張皇后は、後宮を纏めてくれていた。費禕ひい君と共に、洛陽で陰から支えてくれていたよ。曹操の失敗とか知っているからね。感謝しかないよ。

 蜀漢国は、身内が腐敗しなかったから、統一を成し遂げられたんだと思う。


 それと久々に旧臣を呼び寄せた。張翼君、王平君、廖化君、趙統君だ。呉国討伐には参加させられなかったけど、俺の腹心であることに変わりない。

 州牧に任命していたけど、もう老人もいる。彼等の手を取る。


「君たちがいてくれたので、後顧の憂いなく魏国と呉国を討てたのよ~。感謝しかないのね~」


 全員が、涙を流して喜んでくれた。

 特に廖化君だ。大泣きだよ。俺が関羽将軍の仇を討つとは、思わなかったよね。本当は、呉国討伐に呼びたかったけど、李厳君の失敗もある。上庸で待って貰った。



 後漢の献帝、魏の曹芳、呉の孫権から、皇帝の位を譲り受ける。

 献帝は必要なかったかもしれないけど、これで蜀漢国の正当性を証明できた。

 国号は、『漢』でいいかな? 前漢と後漢があるから……、新漢? まあ、後から考えよう。


 俺が両手を上げると、100万人の兵士が歓声を上げてくれた。


「ふう~。戦国の世が、終わったのね~。でもこれからは、匈奴に備えないとね~」


 司馬炎君の晋国は、北から攻められている。

 【八王の乱】は起きないだろうけど、これから内乱は起きると思う。

 できるだけ国力を消費せずに、匈奴に備えないとな~。


 献帝時代は、長安のすぐそばまで土地を取られているんだし。

 ここで、相国に戻した司馬師君が答えてくれる。彼は、皇帝の一番の相談者だった。


「陛下の徳と善政による賜物です。采配も神采配としか言いようがありません。古の覇者にも劣りません。市政では、『救国覇王皇帝』と呼ばれており、天下統一だけでなく匈奴討伐も望まれております。古の春秋五覇や、始皇帝、楚の覇王、漢の高祖に並び称されています! 私が断言します。陛下は、この戦国の世の『誰よりも優れた名将』と呼ばれるでしょう」


 おう? 仇名が変わってますやん?

 三国志で一番の知将ってこと?

 俺が?

 劉禅だよ?



 陳寿は、この時代をどう書くのかな?


 ―了―

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長編:転生したら【阿斗】かよ~諸葛丞相いないんだけど、どうすっかな~ 信仙夜祭 @tomi1070

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