第18話 井陘の山道
軍隊は、見られなかったのだ。魏国も匈奴も防衛しないのか?
しかし狭い。馬2頭で移動するのがやっとの道だ。
「う~ん。誰も史記を読んでないのかな~。韓信が使ったと思うんだけど~?」
この道を使うと、一気に華北と中原に出ることができる。前漢の
こそこそと奇襲するのには、いいのかもしんない。
とりあえず、道の出入り口を封鎖して兵士を置くことにした。
「趙統君。任せていい?」
「了解っす。お任せください」
うん、うん。いいね~。いいね~。信頼できるね~。
物資は太原から運ばせる。補給も繋がった。
「そんじゃ、朕は長安に戻るね~」
「はっ! お供します」
こうして、太原攻略が終わった。司馬師君と共に長安へ帰る。
◇
長安に戻ると、魏軍はいなかった。
なんかあったの?
「司馬昭君。どうなったの?」
「匈奴が去り、魏軍は半分が戦死いたしました。そして、襄陽を取られて、華北と中原に蜀漢の旗が見えたのです。魏国は、一時撤退を選択したのでしょう」
「魏軍を追撃したの?」
「はっ。
なんか……、魏軍が、年々弱くなってるな~。
指揮官がバカだと、こんなもんかな?
「魏国に人なし……とか言ったら、怒られそうだな~」
「なんの故事ですか?」
「独り言なのよ~」
大丈夫だよね? 40年以上経っているし。
◇
各地に斥候を放って、情報収集に入る。
魏国は、南陽と洛陽、そして魏函谷関に兵士を集め出したらしい。
これは、呉国に対する警戒でもあるな~。
そうすると……。
「南は厚そうだから、北か、中央からだね~。何処が手薄かな~?」
「陛下、お待ちを! 罠かもしれません! もうちょっと精査しましょうよ」
そうかな~。今までの魏国の動きから、罠なんてあるとは思えないんだけどな~。
ここで、
「うん? 魏国の中枢が変わったの?」
「はっ。曹爽が更迭されて、魏皇帝の
え……。驚いてしまう。
無能のTOP2が、いなくなっちゃったの? つうか、曹爽は、まだ中枢にいたんだ?
「
ごふっ?
全員、魏に反乱を起こす人じゃないですか。司馬懿に処される人たちじゃないですか?
結託して、このタイミングで政変起こしたの?
「さ~て、困ったぞ……」
無駄に出兵してくれてたし。
だけど、これから防衛に回られると、これまでみたいな快進撃はできなくなるな~。
◇
俺の予想は的中した。
魏軍は、出兵を控えて、守りを堅め始めたんだ。
「……予想外でしたな。せめて
う~ん。結果論だね~。
「司馬師君。匈奴の方はどう?」
「再侵攻の兆しはありません。兵力の大半を失っているかと。ただし、援軍が来なければ――の話になります」
北も気が抜けないな~。匈奴の総兵力なんて、誰も分かんないと思うし。
それに、単于だ。今は、誰かね?
有能な人物でなければいいんだけど。
「司馬昭君。呉国はどうなってるの?」
「はっ。
孫権がボケるのは、まだ先か~。
「魏国と呉国が手を組む可能性は――ない?」
「……あり得ないとは言い切れませんね。呉国次第ですが、蜀漢国の勢いを恐れて、手を組む可能性も考えられます」
まいったね。
快進撃もここまでっぽい。
「防衛に徹せられると、被害が大きくなりそうだね~。迂闊に手を出せなくなっちゃったよ」
「父司馬懿も執った作戦ですので……。陛下の神采配に対抗するのであれば、これしかないかと……」
暫くは、膠着状態かな~。
まあ、焦る事もない。重要な拠点は抑えてんだし。
「そんじゃ、襄陽に援軍を送ってね~。楊儀君だけでは不安なのよ~」
「
あ……、そうだった。杜預君がいたんだった。
長いこと、楊儀君を任せきりにしているかもしれない。
相性として、どうなのかな?
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