第17話 太原攻略

 戦車が、予定数でき上った。蜀漢国って何気に工作が得意よね。諸葛丞相の『木牛流馬』や『連弩』とか作ってるし、『軍船』は常に必要になる土地だ。

 後は、タイミングだな~。匈奴が隙を晒してくんないかな~。


 史記を思い出す。

 戦国四大名将の李牧は、匈奴を油断させて深入りして来たところを、打ち破ったんだよな~。

 地図を見る。


「雁門は残ってるのね~」


 俺が魏国の皇帝なら、雁門から西進して、包囲すんだけどな~。

 地図を見ながら、戦略を練っていた。

 そんな時だった。


「うん? 匈奴が攻めて来たの?」


「はっ。魏国と組んだみたいです。東の洛陽と南の襄陽からも攻められるかと。進軍の兆しがあります」


 三方向からの攻撃か~。長安攻防戦になりそうなのね。


「まず、呉国に出兵を促してね~」


「はっ!」


 その後、軍議を重ねて城門を閉じて守ることにした。

 今回は、長安での防衛戦だ。





「総勢、30万人の軍勢かな~」


 城壁から敵軍を見下ろす。人で地面が埋まっているよ。

 うん、大軍勢だ。でも、長安には同数くらいの味方がいる。甘く見られているね。


 魏軍の総攻撃が始まった。

 でも守るのは、難攻不落の長安なんだよね~。魏国の兵士の損耗率が激しい。

 匈奴は、見ているだけだな~。まあ、計算のうちなんだけど。騎馬民族に攻城戦は無理だよね~。なにもしなくても、兵糧は消費して行く。それが、30万人ともなれば、膨大だ。


「一応、予定通りかな~。待ってれば、その内撤退してくれるっしょ」


「こちらから、撃って出ないのですか?」


 まあ、そうだよね~。蜀漢国の本気はここからだ。

 疲れるまで、攻めて貰おう。





 一ヵ月程度、防衛を続けた。

 地下道とかの仕掛けは、全部潰してある。城門も簡単に開かないように、封鎖してある。食料の備蓄も十分だ。

 魏軍が、正攻法でしか攻められないようにしていた。

 予定外だろうね~。


 そして、命令を下す。

 まず、楊儀君が動いた。襄陽に攻めかかったんだ。二度目の居留守戦法だよね。しかも今回は、廖化君にも手伝って貰っている。参謀に杜預君だ。

 荊州北部までを、攻め落としてくれた。

 ついでに、樊城はんじょうまで攻める姿勢を示してくれる。

 そうすれば、南陽なんようも狙えるんだよね。

 まあ、そこまでは進ませないけど、脅しとしては十分だ。

 魏軍は、攻撃を中止して軍議を重ねる様になっていた。


 そして、安定城だ。長安から見て北西だよね。

 関統かんとう関彝かんい趙広ちょうこうが、匈奴に攻めかかった。退路を断つ感じかな~。兵士がいれば、包囲になる布陣だな。

 一ヵ月間、なにもせずに陣取っていた匈奴が、背後を取られて、慌てて撤退を始める。兵糧の無駄にしかなんなかったね~。


 その背後を戦車隊が撃つために、出陣する。俺も指揮車に乗って出陣だ。

 魏国は、見て見ぬふりだ。まあ、将兵の半分を失っているんだし、動けないと言った方がいいかな。


 匈奴軍は、反転して来て蜀漢軍と激突した……。


「武器が違うんだよね~。ランチェスターの法則って知ってる?」


 如何に平地と言えど、騎兵と戦車では、戦車に分がある。それと、弓兵で削って行く。

 足の止まった騎兵など、歩兵の餌食だよね~。

 匈奴軍は、一日の戦闘で総崩れだ。

 バラバラに、太原に帰ろうとする。


 ここで登場、関羽と趙雲の孫たち。

 包囲殲滅までは行かないけど、大いに匈奴軍を撃ってくれた。


「三人共、ありがとうなのね~」


「「「はっ! ありがたき幸せ!」」」


 俺は、長安の半分の兵士を率いて、北の太原に向かった。

 長安は、司馬昭君を太守に任命してあるので、大丈夫だろう。





「う~ん。太原は……結構抵抗してくるのね~」


「まあ、最終防衛線でもありますし。この城があるから、この一帯の平野を匈奴が支配できていたのでしょう」


 大人しく、北に帰ってくれれば良かったのにな~。

 ここで登場、井闌車せいらんしゃ。城壁よりも高い、移動式の車と言ったところかな。

 戦車と共に作らせていた。

 匈奴に支配された、太原城は、大混乱だ。

 そうだよね~。この時代の遊牧民族に、工作技術なんて持っているわけがない。予想外だよね~。


 そうすると、あっという間に城門が開いたよ。

 こうして、匈奴に奪われていた、太原城を奪うことができた。

 匈奴の捕虜は、北へ逃がす。虐殺はしない。国境は、万里の長城までとした。


 長安の北に関所でも作ろうと思ったけど、太原城が手に入るのであれば、不要だよね。





 太原城を見回る。もうね、中華とは違う文化だよ。匈奴に長く支配されていたのかもしれない。


「この城は、秦の蒙驁もうごう将軍が、奪った城で有名なのよね~」


 これで、戦略的に幅が広がった。

 魏国の北側……、併州へいしゅう冀州きしゅうに攻め込める。場合によって、公孫淵君と同盟を組んでもいい。


関統かんとう君、関彝かんい君、趙広ちょうこう君。太原城をお願いね~。防衛第一でいいけど、従わない兵士は、場合によって追放していいからね~」


「「「承知っす。お任せください」」」


 さて、長安に戻るか。太守は……、くじ引きで趙広ちょうこう君とした。異論は認めない。

 そんじゃ、長安に帰ろうか。

 ここで、司馬師君から待ったがかかった。


井陘せいけいの山道を抑えませんか?」


 あれだ。劉邦の部下の韓信が、趙国を攻めた時の山道だね。

 ほうほう……。これで、魏国の北と南、そして中央から攻めることができるな。

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