第11話 雍州涼州侵攻

 さて、悲しんでいてもなにも進まない。

 これから、どうしよっかな~。

 魏延君、張翼君、廖化君が、援軍として挙手して来た。

 兵力は、まだ十分にある。長安に援軍を一万人送れば、そうそう落とされることもないだろう。


 ここで、成都より趙統ちょうとうが来た。超雲の息子だ。援軍も一万人だ。

 蒋琬当たりの采配だな~。


「趙統君。長安と潼関に行ってくれる? ちょっとさ、援軍として守りを堅めて欲しいのよ」


「OKっす。任せてください」


 まあ、彼に任せてみるか。

 三人の将軍は、不満みたいだけど、多方面から攻められてもいる。不満を口には出さなかった。俺は、皇帝なんだしね。指示には、従って貰おう。


 あ……。そう言えば、姜維君はなにしてんのかね? 連絡ないんだけど?





 密偵から報告が上がって来た。

 魏は、混乱の極みだとか。魏の都のぎょうは、騒乱状態みたいだ。

 内乱なんかしてるから、長安を落とされちゃうんだよ。それと、幽州での反乱はどうなったのかな? 対応できてるんかね? 公孫淵君は、実は優秀だった?


「【遼隧の戦いりょうすいのたたかい】は、司馬懿の電撃作戦もしくは、奇襲で国都の襄平を攻めてんだよな。司馬懿だから短期間で治められたとも言える」


 考えていると進言された。


「洛陽に攻め込むべきです! 今しかありません! 南陽方面からであれば、手薄になっているはずです!」


 司馬師君からの提案だった。

 う~ん。地図を見る。


『呉が裏切って来たら、楊儀では止められないよな~。それに天水には、郭淮がいる。背後が怖い。戦端を広げ過ぎだよな~』


 少し考えた。後顧の憂いを断つべきだ。

 前進だけして、後戻りはしたくない。


「司馬師君。悪いんだけど、天水城を攻略してくんない? 姜維将軍と王平将軍に合流して欲しいんだけど~」


 戦略を否定して、別な場所を攻めさせる。魏の張郃ちょうこう将軍は、これで袁紹を裏切ったんだよな~。


「委細承知! 郭淮を捉えて来ます! その次に洛陽っすね!」


 おう? 大丈夫そうだ。

 戦略に明るいんだね。





 司馬師君に十万の軍を与えて出陣して貰う。蜀漢国で動員できる最大人数だ。

 予備兵も全て導入した。

 もう、このタイミングじゃないと、雍州は落とせないとの判断だ。だけど、守りも薄くなるから、一ヵ所が敗戦したら、蜀漢国全部が危うくなる、諸刃の作戦でもある。


 部下として、関羽の孫の関統かんとう関彝かんい。趙雲の孫の趙広ちょうこうだ。

 まだ若いけど、頑張って貰おう。

 食料長官には、諸葛瞻しょかつせん李豊りほうを任命した。内政を頑張ったから、食料にはまだ余裕がある。でも、火計を食らって焼かれたら、計算が狂うから、常に備えないとね。


 司馬師君は、まず祁山を目指した。

 そうすると、郭淮は持久戦を選んで来た。司馬懿の戦略そのまんまだな。

 天水城から兵士を出して、祁山の防衛みたいだ。


 そうすると、司馬師君は方向を変えた。

 〈街亭〉に向かったんだ。そして、街亭に陣を敷いたのだとか。


「ふむ……。分断して孤立を狙ってんだね」


 これで、長安からの渭水の道と北の街亭からの道を遮断できる。雍州は、本土の救援を期待できなくなったな。

 大きいのは、天水城と安定城かね?

 慌てた魏国は、安定城からの出陣したらしいけど、司馬師君が一蹴したそうだ。

 それで、安定城も落としてるのだから、文句のつけようもない。

 街亭は、一大要塞と化しているみたいだな。城の設計図を見たけど、もう城じゃんと言いたい。


「郭淮は、どう出て来るのかな~」


 相手も歴戦の英雄だ。

 俺は司馬師君を信頼しているけど、負けないとは限らない。

 雍州は……、膠着状態になった。





 数ヵ月後、報告が来た。


「えっ? 郭淮軍が撤退?」


 詳細を聞く。

 曹叡からの撤退命令が、出たんだそうだ。


「あ~、あれだ。諸葛丞相と馬謖が仕組んだ計略と同じだな~。司馬懿が涼州の太守となったけど、諫言を受けて解雇した話だ」


 でも、辺境の地を守るより、中央に兵を集めたいのは分からなくもない。

 司馬師君が、間者を放って煽ったんだろうな~。

 でも、なんか違う気がするな……。郭淮の撤退なんでしょ?


「陛下! 長安が攻められているそうです!」


 司馬懿の解雇とは、話が違った。曹叡は、土地を捨てででも長安を取り戻す戦略に切り替えたのか。


 でも、そうなるよね……。郭淮が西から、曹叡が東からになるよね。

 雍州涼州より、長安の奪還を優先したのか。


「張翼君。援軍に行ってくれない?」


「OKっす。任せてください」


 後は、廖化君にも依頼だな~。魏軍の糧道を断って貰おう。

 そう思ったんだけど、再度の報告が来た。


「魏軍の兵士は、少ないんだね……。防衛戦なら、援軍は必要ないかな?」


 報告書を読んで驚いてしまった。

 数十万規模と思ったら、十万人にも満たなかったんだ。

 不思議に思ってしまう。


「戦力の逐次投入? なに考えてんだ?」


 岐山にも兵を残しているのだとか。天水城も抵抗を続けているらしい。俺から言わせて貰えると、逃げ遅れて見捨てられた部隊に見える。


 魏国に密偵を放つ。

 戦争では呉国にも負けて、内乱が頻発しているらしい。

 中央も混乱していて、機能していないみたいだ。


「それで、司馬懿の右腕だった郭淮を、中央に招集か……」


 土地を捨てでも、郭淮が欲しいのか……。

 魏軍は、長安で合流すると、申し訳程度に攻撃してから撤退してしまった。


「これで、長安から西は、空白地帯になったのね~」


 ここからは、調略だな~。

 隴西地方……。諸葛丞相が説得できなかったんだよね。

 誰がいいかな~、って、姜維君しかいないんだよね。

 だけど、魏国は撤退したんだし、任せても大丈夫だろう。


「そんじゃさ、姜維将軍を呼んでね」

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