第12話 雍州涼州平定

 一ヵ月後、天水城が落ちたと連絡があった。雍州の要となる城だね。後は、安定城をとれば、雍州は魏国から分離することができる。諸葛丞相が思い描いていた、領土の獲得ができそうだよ。


 結局魏軍は、言い訳程度の長安侵攻があったくらいだ。まあ全部、司馬師君の計略なんだろうな。

 魏軍の動きを掴んでいるんだろうな~。

 マジに、司馬家は、麒麟児だよな~。


 王平将軍と姜維将軍は、涼州南部と長安までの都市の平定に尽力してくれた。異民族も多いので、時間をかけて交渉して貰おう。隴西地方が問題だったけど、もう魏国の援助はない。抵抗するのであれば、住民を煽って、太守を襲わせればそれで詰みだ。


 司馬師君は、この後涼州に侵攻だな。元馬騰ばとう韓遂かんすいの領土だ。その前は、董卓とうたくだったな~。辺境の土地だけど、屈強な将兵が多く生まれる土地でもある。無視はできないんだよな~。

 現在は異民族が、支配していそうだ。

 都は、シミュレーションゲームだと武威城かな? 遠いんだよね~。


 司馬師君は、異民族と同盟を結んで行った。

 武力で鎮圧を行わないのか……。

 時間がかかりそうだけど、今はこれでいい。任せよう。

 将兵を割いて、戦端を広げるよりも味方に引き込んだ方がいいとの判断なんだろうな。

 問題視していた、隴西地方は、姜維将軍と王平将軍に任せる。時間をかけてもいいので、説得して貰う。もう魏国の援助はないし、抵抗の意味ないよね?


「……故郷だし、虐殺はないよね?」


 まあ、報告を待とう。





 数ヵ月後に、魏国が軍を起こした。

 総勢、五十万人だ。曹叡も本気を出して来たな。


 でもね~、時間をかけ過ぎ。こちらも、戦略を練ってんだよ。

 まず、呉国に援軍を要請する。今なら、合肥城も落とせるだろう。戦力を長安に集中させている。陸遜も優秀だし、理解していると期待しよう。

 呉国と蜀漢国の各地に手紙を送る。


 司馬師君に連絡すると、異民族を率いて長安に来てくれたよ。数万人規模だね。

 これは、大きな援軍だな。


「涼州攻略途中なのに、ゴメンね~。途中で呼び戻す感じになっちゃって」


「全て計算の上です。天水城と安定城に将兵を残して来ました。涼州は、半分程度ですが、同盟を結べています。しばらくは放置でも問題ないでしょう」


 司馬師君の言葉に、全員が頷く。

 そんじゃ、魏国に集中しようか。長安防衛だね。


「魏延君、張翼君、廖化君。天下分け目の合戦になりそうだ。司馬兄弟が兵法に明るいんだけど、従ってくれないかな~?」


「「「もちっす。実績十分だし、信頼できるっす!」」」


 いいね、いいね。味方が厚い信頼で結ばれている感じがするよ。これ、勝てんじゃない?


「朕も行くね。跡継ぎは長男の劉璿りゅうせんって決めてるし」


 劉璿は……、遊び人だったけど、蒋琬と費禕に命令して、内政を学ばせた。騎射を嗜みたいと言って来たら、上庸に派遣して、本物の戦争に参加させる。

 すると、人が変わったように真面目に内政を学んでくれた。


「「「ダメっす。漢中で吉報をお待ちください」」」


 え~。俺も兵法とか使ってみたかったのに……。

 また、お留守番か~。





 またしても出兵を見送ることになった、俺。漢中から動けないよ。

 進軍ルートだけど、騎兵は斜谷道で、歩兵は子午谷道なんだそうだ。


 ちなみに子午谷道の兵士は、残す様に指示を出した。全部持っていかれると、反撃を受けかねない。

 これは、歴史の姜維の失敗からの教訓だ。

 子午谷道は、魏延が父劉備の期待に応えて作った道だ。元は、曹操が漢中に入って来た道でもある。

 魏国の漢中再侵攻の際は、やっぱり子午谷道を使ったんだ。曹操も面倒な道を作ってくれたよ。


「長安が手に入っていると言っても、油断してると陽平関を落とされちゃうよね~」


 戦略に明るい敵将がいれば、狙って来ると思う。

 五十万もの兵士がいるんだ。一部を割いて漢中を狙わない理由もない。

 秦嶺山脈に穴を開けるなと言いたいよ。防衛拠点が増えちゃったじゃない。しかも、30年に一回しか使われないし。



「陛下! 俺も出兵したいっす!」


 いきなり戻って来た姜維将軍からだった。

 王平将軍を隴西地方に残して、漢中まで来たんだとか。

 ここは、𠮟ってもいいかもしれない。命令違反だし……。

 だけど、数の少ない蜀漢国の将軍を遊ばせているのも問題だな~。


「姜維将軍……。そんならさ、郿城びじょうに行ってくんない? 後方になるけど、攻め落とされると、長安が孤立するんだ。後方支援で補給船の確保だけど、いいかな?」


 渭水の道を遡られて、祁山きざんをとられるかもしれない。国境に兵を集中させているので、渭水道を防衛したいのもある。


「OKっす。任せてください」


 姜維君は、喜んで出陣して行った。

 敵兵が来るとも来ないとも言えない場所だ。諸葛丞相時代の西城になりかねないので、先手を打って防衛する。馬謖の失敗を繰り返しちゃいけないよね。

 

 郿城びじょうは、董卓とうたくが作った城だけど、今だに残っている。戦略的価値は低いけど、とられたくはないんだな。



 その後の報告で、子午谷道と郿城にも魏軍が現れたと報告があった。

 別動隊として、現れたみたいだ。戦闘状態になったけど、防衛できていると報告があった。


「危ない、危ない。だけど、これで魏軍にできることはなくなったかな?」


 長安を落とす以外の選択肢を、奪ったと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る