第13話 長安攻防戦
今俺は、雍州涼州の報告書を呼んでいる。
郭淮は、長期戦に備えて、涼州に兵糧を溜め込んでいた。
まあ、魏は蜀漢の十倍くらいの収穫があるんだ。兵士を養うのにも、これくらいは必要だったんだろう。
王平が、天水に残って、姜維と司馬昭が、潼関に向かった。
食料輸送は、諸葛瞻に任せる。長安と潼関に運ばせた。
後は、成都に連絡して、兵士をできる限り集めた。
楊儀が、出陣許可を求めて来たけど、却下する。呉国の備えなのだ。それと、楊儀は、戦争の指揮権を持ったことがないはずだ。
「これで、できることは終わったかな~」
斥候を放って、各地の戦況を収集する日々が始まった。
◇
魏軍は、三軍に分かれた。上庸と長安と潼関に攻め込んで来たのだ。
アホとしか言いようがない。戦力は集中させるべきだろうに。
でも、こちらも分散して兵力を配置している。空いた軍は、敵の背後を突く予定だったんだけど。
ナポレオンの戦術って言っても、誰も分からないのが悲しい。
ハンニバルは、故人だな。だけど、西洋の戦術はまだ聞こえてこないんだよな~。何処で止まっているんかね?
「こうなると長期戦だな~」
そう思ったんだけど、呉軍が動いた。合肥城を落としてくれたのだ。そのまま、洛陽に攻めかかる。陸遜は、やっぱ優秀だな~。部下に欲しいよ。
背後を取られた魏軍は、慌てて撤退だ。洛陽は、失えないもんね。
蜀漢は、その背後を大いに撃った。
戻って来た将軍たちは、自慢げに手柄を報告する。
もうね、劉家の宝物を全部吐き出したよ。
俺の財産は、スッカラカンだよ。嬉しいので、いいんだけどね。
一年後、呉軍が撤退した。
呉軍は、洛陽を落とせなかった。流石に兵力差があり過ぎたか。でも合肥城をとったので、魏国としては、戦略上かなり痛いだろう。
守るべき城が、大量に増えてしまったからだ。
蜀漢は、涼州を完全に掌握した。
王平君が纏めてくれていたけど、優秀だったのね。統治能力もあったんだ。知らなかったよ。
それと、楊儀は襄陽を落とした……。まあ、魏国は洛陽に兵を送って、ほぼ空だったんだけどね。空き巣戦法と言っていい。命令無視だけど、褒美は出そう。
楊儀を荊州牧に任命すると、忠誠心爆上がりだったよ。宝物はなかったけど、許してね。印綬って無料なので、使いやすいな~。
◇
「う~ん。兵を失い過ぎたね~」
「……攻め時なのですが、こればかりは、どうしようもありませんでした」
司馬昭君がいなければ、守れなかったのは、誰もが知っている。
「別に、責めてないよ? 魏国も呉国も継戦は無理だろうし。魏延将軍は、徴兵と練兵をお願いね」
「承知っす。お任せを」
これからは、国力の回復次第だな~。三国の内どの国が一番戦力を整えるのが早いか……。
「朕は、成都に帰るね~。防衛はお願いね~」
「「「はっ!」」」
まあ、攻めなければ、兵が大幅に減ることもないだろう。唯一の懸念は楊儀かな~。
でも、そんなに兵士を預けてないし、荊州を統治してくれるのであれば、任せてみよう。諸葛丞相が目をかけていた人物なんだし、隠れた才能があるかもしんない。
◇
成都に帰って来た。
何年ぶりかな~。
民衆の大歓声を受けながら、成都の道を進む。長安奪取は、蜀漢にとって悲願だったからね~。
そのまま、玉座に座った。
「皆……長い間、留守にしてゴメンね~。それと、救援は助かったのよ~。ありがとうね~」
「「「はっ! ありがたき幸せ!」」」
「これからは、内政に力を入れるから、引き続き協力をお願いね~」
「「「もちろんっす!」」」
いいね、いいね。蜀漢って人がいなくて、諸葛丞相ワンマン国って思われてたけど、有能な人材がいたんじゃん。
「陛下? どうかなされましたか?」
にやけてしまっていたか。
「皆が頼もしくてさ~。とても嬉しいのよ~」
◇
とりあえず、食料からだな。
開墾は順調だった。曹操の屯田制は、この時代に合っているみたいだ。
「予定より、食料が多いのね?」
「北方の異民族も協力してくれており、不足は起きておりません。飢饉もありません」
ほうほう……。
「南方は? 交州? え~と、
え~と、三国志知識を振り絞る。
「今のところは、反乱などありませぬ。交易も順調です」
諸葛丞相が、南蛮征伐してから、結構な時間が経っている。
背くのであれば、そろそろのはずだ。
誰がいいかな~。
「
鄧芝は、呉国との国交回復や、趙雲との北伐が有名な人物だ。
「OKっす。任せてください」
「なんだったら、そのまま統治して来てもいいからね~」
「ありがたき幸せ」
有能な人材なんだ。俺としては、丞相にしてもいいと思っている。
鄧芝は、南中に向かってくれた。
結果論になるけど、子の鄧良が跡を継いで、南中での反乱は、長期間に渡り起きなかった。
南蛮との貿易も滞らずに、国庫を潤してくれることになる。盗賊を退治してくれたからだ。
「鄧芝は、知勇に優れた人材なのよね~」
もう少し、若かったら俺の右腕になって貰っていたんだけど。
後数年で死亡してしまう人材……。
「ちょっと悲しいのよね~」
俺は、夜空を見上げた。
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