第14話 現状把握

 魏国も呉国も、戦争で疲れているはずだ。しばらくは、平穏が続くと思う。

 玉座に座って考える。

 少し、三国志知識を思い出した。


 魏 面積:約134万平方キロメートル 人口:約430万人(263年)


 呉 面積:約136万平方キロメートル 人口:約230万人(280年)


 蜀漢 面積:約100万平方キロメートル 人口:約94万人(263年)


 有名なデータだよね。

 暗記していたわけではないけど、パッと出て来た。ステータス画面とか欲しかったけど、出ないんだよね。

 まあ、転生特典と考えよう。転生特典が、【三国志知識】ってのも、結構渋いかもしれない。聞いたことないけど。


「問題なのは、食料生産力なのよね~」


 魏国は、麦が主食だ。黄河流域で、穀物も良く取れて、平地が多い。二毛作も可能だろう。

 呉国は、移動が水路なほど、川が多い。米が主食だったな。

 蜀漢国は、主食が米だ。山岳地帯の盆地で米を生産している。


「三国志好きとしては、当たり前過ぎる知識なのね~」


 だけど、この数字は当てにならない。

 俺は、長安を落として、雍州と涼州を手に入れてんだし。

 魏は、内乱が続いている。大分混乱していると思う。人口も食料生産力も落ちているはずだ。

 呉の数字は、280年の数字だ。まだ、交州七郡の士燮ししょうを下していないと思う。半分までは行かないけど、約150万人程度と考えよう。


「……交州行っとくか?」


 諸葛丞相の南蛮征伐の前例もある。

 あれは、孫権が士燮ししょうに手紙を送って、雍闓ようがいに反乱を起こさせたんだ。それに、孟獲もうかくが呼応したんだよな。


「鄧芝がいるから問題ないだろうけど、一応手紙を書いておくか」


 交州は、現在孫家の支配だと思う。だけど、呉国滅亡は、交州での反乱が引き金になったのもある。俺は、交州情勢を調べるために密偵を放った。


 すぐに密偵から返事が返って来た。


『孫権が無理を言っています。孔雀と大猪を要求していて、住民が困っています。密偵より』


 孫権もな~。同盟組んでいるのに、反乱起こさせるとか、訳分かんないよ。

 それに孔雀かよ。もしかすると、今交州は、反乱の真っ最中かもしんない。

 孫権には、手紙を書かない。無理難題が、帰って来そうだ。


「最悪、襄陽城を寄越せとか言ってくんだろうな~。荊州を守り切れなかった癖にさ」


 強欲なんだよな~。ボケる前は、名君なのかもしんないけど、小賢しい策略が多いのよね~。


「後、心残りは……、なんだろう。匈奴とか公孫淵かな……」


 匈奴は、長安から近い場所まで進出している。これから相手にしないといけない。

 公孫淵は、まだ出兵を続けていた。魏国で対応できる人材がいないのかな?





 のんびりしていると、魏国が軍を起こした。蜀漢国は、すぐさま防衛態勢に移行する。国境には、兵を配置しているので、大きな変動はないかな。

 遊軍を用意するくらいだ。


 斥候を放って、魏軍の動向を探る。つうか、攻撃目標は何処なのかね?

 敵将の名前が分かれば、俺の三国志知識から先回りできるかもしれない。

 そう思ったんだけど……。


夏侯玄かこうげん? 誰だっけ?」


「はっ! 夏侯玄かこうげんを名乗る者が、進軍してくるそうです。およそ10万の軍勢とか」


 う~ん。考えていると、思い出した。閃いたと言った方がいいな。転生特典かもしんない。


「あ~、曹爽が亡くなった後に、李豊りほう夏侯玄かこうげん張緝ちょうしゅうで反乱を計画する人か。その前に、漢中侵攻して失敗してたのね……。それで、今来たのか~」


「はいぃ? なんの情報っすか?」


 俺の転生特典……。三国志知識だ。

 そうか……、【興勢の役こうせいのえき】ってのがあったのね。

 曹爽と夏侯玄が、漢中に攻め込んで来るイベントだったのね~。でも漢中は直接攻められないから、何処を攻めるんだろう? 歴史的にズレて来ているんだよな。年号も合っていないし。


「歴史の修正力なんかね~。まあ、そんなんあれば、俺が長安落とせるわけないんだけど」


「……ご謙遜を。それで、如何なされますか?」


 負けはないかな? 不安なのが、襄陽の楊儀ようぎかな~。


「特にないかな。防衛をお願いね~。攻められそうな城は、全て防衛の指示を出してね~」


「はっ!」


 夏侯玄かこうげんは、ウロウロしたけど、あんまり攻めないで帰って行った。つけ入る隙が見つかんなかったらしい。

 何だったんかね?


 でも分かったことがある。


「俺が、歴史を変えてしまったけど、イベントとして発生することもあるんだな~。多分、年数とか滅茶苦茶だけど、『蜀漢を攻める』のは、今しかできなんだと思う。だから、夏侯玄かこうげんが来た……。そう考えた方がいいかな」


 三国志演義では、【芍陂の役しゃくひのえき】の後に、【興勢の役こうせいのえき】だったけど、前後しているかもしんない。

 この後に、【芍陂の役しゃくひのえき】が発生しない可能性もあるけど、魏国と呉国の戦争なんだ。俺は関わっていないので、発生する確率が高い。


 それと、転生特典だ。

 三国志の歴史を思い出せるのは、大きい。未来視ともとれる。

 特に、魏国で反乱を起こす人物だ。

 司馬懿は、粛清を重ねた。その人物を登用できるかもしれない。

 司馬家に反発した人物でもいい。反乱を成功させても、蜀漢国には、有利に働く。


「在野に大物はいなさそうだけど……、引き抜いたり、反乱の後押しをしてもいい。調略できる可能性……。覚えておこう」


 俺は、日常に戻った。

 各地に斥候を放ち、集めた情報を精査する日々だ。

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