第15話 北伐開始

 転生してから10年が経過した。実に平穏な時間だったな。

 延熙えんき7年。西暦……244年かな~、多分。


 近年は、三国共に内政に力を注いでいたので、大きな国境線変更はない。

 魏国は、内乱が続いているみたいだ。【遼隧の戦い】も続いている。後何年長引くのかな~。武将は残っているけど、都督に抜擢されるほどの人物はいないのかもしれない。国の中枢が麻痺ってると、こんなもんかもしんないな。


 それと、曹叡が亡くなり、曹芳そうほうに代わっている。まあ、遊び人なのは変わりがない。

 ちなみに、曹芳そうほうは、母親が不明だったりする。本当に曹家なのかも怪しいんだそうだ。それって、父親が曹叡という証拠もなくないか?

 この時点で、曹家って危ういんだな。



 長安・潼関に、張翼と王平、それと司馬昭を置く。

 上庸には、廖化だ。それと、古参の将軍を纏めて貰う。

 天水には、姜維を置いて、隴西地方の説得を頼んである。異民族の説得と吸収だな。この時代の異民族は、脅威なんだよね~。涼州の交渉も頼んである。


 漢中は、魏延だ。父劉備が見出しただけあって、優秀に働いてくれている。

 それと、襄陽なんだけど……、楊儀は撤退した。まあ、無理があるよね。懲罰は科さないけど、綿竹関で大人しくして貰おう。それと、杜預を目付け役にした。


「正直、小物ばかりだな~。陸遜が欲しいよ」


 俺には、司馬師という軍師もいるけど、三国志を彩った英雄が配下にいない。

 時代なのかもしれないけど、寂しいな~。

 こう、在野の大物を登用して、兵権を預けたりしたかったな~。ないものねだりなのは分かってんだけど。

 期待するのは、関羽と張飛の孫かな~。もうちょっと成長を待とう。


 内政も上手く行っている。現在の丞相は費禕だ。民心も安定しており、疫病も飢饉も発生していない。

 そんな時だった。


「うん? 魏軍が攻めて来たの? 天水取られたの? 姜維君敗走?」


 詳細を聞く。

 あ~、夏侯覇か。鄧艾と鍾会かと思って驚いてしまった。彼等は、15年後くらいかな? 今の内に暗殺してもいいかもしれない。

 でも、長安と潼関を落とさずに、天水ね~。兵法がなっていない。いや、手柄を焦っているな。

 張翼君に命じて、糧道を断つと、彼等は孤立した。

 涼州の異民族とも友好な関係にある蜀漢なのだ。彼等は、干上がって、冬前に降伏して来た。冬に、マイナス数十度になる土地なんだ。死にたくなければ、投降だよね~。

 包囲戦術最高! 10万人の兵士を吸収できたよ。


 夏侯覇に話を聞くと、魏は混乱状態なんだとか。曹爽が、滅茶苦茶やっているらしい。皇帝が変わっても国の中身は同じなんだな~。郭淮が、中央で権力を握ったんだけど、司馬懿の代わりは無理っぽい。

 それと、雍州と涼州は諦めムードなんだとか。

 夏侯覇は、異を唱えて出兵許可を得たのだとか。意気込みは買うけど、見捨てられたとも取れる。

 

 とりあえず彼は、捕虜にする。その内懐柔して、北伐に協力して貰おう。

 暫くすると、曹爽一族に対するクーデターが勃発! 司馬懿がいなくても曹爽君は、魏国に裏切られるのね。どんだけ恨まれてるのよ。

 首謀者は誰かな~? まあ、誰でもいいんだけど。


 数年前の仮の【芍陂の役しゃくひのえき】での敗戦で、曹爽君の支持率が、一気に下がったんだろうな。もう、戦争としては、終わってるからね。

 そうなると、呉は【二宮の変】の真っただ中かな? 陸遜君は……、投獄中――かな?

 陸遜の子供の、陸抗を引き抜きたいけど、来ないだろうな~。陸抗が、呉国の最後の名将になんだけど、今のうちにどうにかしたいのもある。

 まあ、どうにもなんないけどね。暗殺も不可能だろうな~。


 魏国も呉国も動けない時期だよな~。

 蜀漢国だけ、雍州と涼州の平定が終わっている。隴西地方の説得も一応完了。ちょっと反乱があるけど、問題ない。

 粛清すれば、すぐだけど、俺は気長に交渉する君主なのだ。


 人も物資も、これ以上は望めない状況だな~。


「そんじゃ、北伐を再開しよっか~。今なら行けるっしょ」


「「「はっ!」」」



 今俺は、長安に向かっている最中だ。


「これで、先帝の意志を継げそうなのよ~。皆に感謝!」


 ここから先は、漢の高祖と秦の始皇帝以外は、到達できなかった領域だ。諸葛丞相でさえも未知の領域。

 俺の転生知識も役に立たない可能性がある。

 それと、魏国にも呉国にもまだ人材がいる。油断は禁物だよね~。


 それでも、俺の気分は晴れやかだった。

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