第5話 撤退後の劉禅
なんとか、五丈原に着いた。魏の攻撃はなかったな~。司馬懿が、行方不明で混乱してんのかね? それだけ指揮系統がしっかりしている軍勢だったというわけだ。
それが裏目に出てるね~。
俺は、蜀漢軍の陣に向かう。そうすると、将軍と兵士が出て来てくれたよ。旗で味方であることを伝える。
そうすると、将軍2人が、前に出て来た。
「魏延将軍と馬岱将軍。ご苦労だったのね~」
二人共、泣いて手を取ってくれた。
馬岱将軍には、密命のキャンセルをヒソヒソと伝える。最下位の雑将軍から昇格させると約束すると、首を縦に振ってくれた。
「そんじゃ、荷物を纏めて帰ろうか~。漢中まで護衛をよろしくね~」
全員で、物資を馬車に積み込む。
とにかく急ぎたい。奇襲を受けると、今は危ない。
「「「はっ!」」」
従ってくれるんだな~。
蜀漢も、この時はまだ人材がいたんだよね。魏と呉が多過ぎただけなのだ。
諸葛丞相の人気が、なかったとも言える。まあ、報酬が違うしね。こればかりは、しょうがいない。
収入も、城の数も違う。抱えられる将軍の数は決まっているのだし。
それと、刑罰だよね。ルールが厳し過ぎた。軍隊としては、正解なんだけど、ある程度の"遊び"も入れないと、頭の固い集団しかでき上らない。
帰路に着いた。だけど、まだ安全とは言えない。斥候を放ち周囲を確認しながら進む。将軍には、100人の護衛を義務付けた。俺の隣には、張翼将軍だ。
そして、何事もなく漢中へ帰って来れた。かなり危ない橋を渡ったけど、最上の結果と言えると思う。
まあ、当然だな。指揮官の司馬懿の護衛軍は、全滅させた。
今頃魏軍は、混乱していて動けないだろう。指揮官不在で、生死不明なんだし。
「祁山を取っても良かったけど、三倍の兵力差だし~。俺の兵法も生兵法としか言いようがない。無理は禁物だよね~」
「祁山は、要塞と化しています。陛下の判断は、賢明かと」
王平君が、褒めちぎってくれる。
一回の敗戦で、全てを失うのが戦争だ。
なにより、人材を失いたくない。
それと、正直言って、祁山は無理かな~って思う。少なくとも隴西地方が降伏しないんだし。
「そんじゃ、戦の疲れを癒してね~。魏軍が攻めて来たら迎撃よろしくね~。朕は、諸葛丞相の葬式の準備をするんで。定軍山はここから近いよね~」
「陛下! 出兵の許可を!
魏延君からだった。
三国志演義だと、"子午谷道"かな~。俺も反対なんだよね~。補給のない部隊なんて、全滅して当たり前なんだけど。
潼関が落とせれば、確かに攻めやすくはなるんだけど、無謀としか言いようがない。
馬岱君は、困惑の表情だ。君、一度潼関を落としているんだよね?
さて、どうしよっかな~。
正史三国志を思い返す。楊儀と魏延は、性格が悪いので処刑されてしまう。俺は、諸葛丞相の失敗だと思っている。理由はどうあれ、国の重臣二人を失うんだし。
董允・蒋琬・費禕・馬岱は、短命だ。これは、変えられないと思う。
う~ん。人材が乏しい。つうか、この時代だと、人気のある英雄って皆死亡してんじゃん。今の蜀漢国って誰が残っているんだ?
ここで、
「廖化君。兵糧はまだある?」
「まあ、数年戦える分は……。ですが、農民一揆が起こりそうです」
ああ、そうだった。諸葛丞相は、戦争のし過ぎて、農民に反乱を起こされていたんだった。屯田兵を作って、現地で農業させてんだし。
でも~、司馬懿が亡くなった今は攻め時とも言える……。雍州刺史
斜谷道から、魏軍の背後を突くか……。いや、長年戦っているんだ。対策済みだろう。
ここは、無理をせずに兵士を休ませたいな。
「陛下! 実は、上庸方面が手薄になっております。南陽方面の兵が動員され、呉がハラスメント攻撃を行っているのです。長年、戦がなく兵が緩み切っています」
廖化君からだった。
ほう?
いいね、いいね。視野が広いね。祁山だけに固執しちゃいけないよね。
それと情報戦は、未来でも重要だよ。
俺は、地図を広げた。
ここで、三国志の歴史を思い出した。
「241年……、【
曹爽が信頼を失墜する戦だったはずだ。そして、呉は人材の差で勝ったんだった。
司馬懿が、私兵一万人を周囲の反対も聞かずに派遣して、やっと呉軍を撃退したんだったな。
蜀漢国は、王平が防衛に成功しているはずだ。
司馬懿は、もういない……。
歴史から逆算すれば……、行けるか?
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