第6話 上庸攻略戦

 漢中への撤退から、上庸に軍を進めた。

 押さえておきたい地点があったからだ。

 上庸は、呉の対策で城に兵士を残しておらず、砦に兵を派遣していた。

 蜀漢の進軍は、予想外だったみたいだ。

 それもそうか、渭水に大軍を置いてんだし。

 魏としては、背後を襲われた形に近いよね。


 この上庸攻撃は、蒋琬の案だけど、実現はしなかったんだよね。


 つうか、こんだけの好機だったのに、諸葛丞相は派兵しなかったんだな。

 北伐中に、呉に出兵を依頼したけど、簡単に引き上げられたので、関係が悪化してたんかね?

 呉との関係修復も、課題だな~。

 それよりも、目の前に集中するか。


「廖化将軍、城の弱点は分かる?」


 途中で廖化軍が加わってくれた。関羽の元部下だ。この人も長生きだよね。

 荊州との国境は、廖化に任せていた。


「お任せを。四方より攻め込んで、地下道から奇襲をかけます。敵も孟達軍の元大将李輔と甥の鄧賢ですので、性格も熟知しております」


 ほうほう。いいね、いいね。兵法って感じだ。しかも、心理戦も組み込むと言っている。

 それと、地下道があるのか。新城として新しく作られているのに、知ってんだ?

 知られていたら防衛側には、致命的だよね。

 廖化君は、実は優秀だったんじゃない?


「そんじゃ、総指揮をお願いね。朕は、武功を上げた人に褒美を与えるので」


「ありがたき幸せ。ここが、蜀漢の未来を分けるでしょう。全滅も厭わずに猛攻を仕掛けます!」


 他の将軍も、廖化君に従ってくれると約束してくれた。

 こうして総攻撃が始まった。





「……落とせちゃったね」


「まあ、元蜀漢の城だったのですし。儂は、土地勘もありますので。四方より攻めると見せかけて、地下道から攻め込めば、城などこんなもんです」


 十日かからなかったな。上庸の新城は、結構堅固だったのに。

 場内に進入したら、兵士たちは、一目散に逃げ出しちゃったよ。

 この地は、長年戦場にならなかったから、兵士の質が落ちていたのかもしれない。


 李輔と鄧賢は、逃げた。でも追う必要もないな。曹叡が、処刑するだろうし。


「廖化君。君優秀だね~。グレートよ~。ブラボー。君はこれから鎮東将軍ね。上庸太守お願いね~」


「ありがたき、お言葉」


 俺は北からの魏軍の備えとして、姜維に軍を預けた。

 魏延には、漢中太守を任せる。父の劉備時代の地位に戻したので、魏延の機嫌もいい。

 楊儀には……、綿竹関を任せた。蜀の重要拠点であり、中央から遠ざける処分だ。だけど、高い地位にあるので、不満は言っていないらしい。丞相は、任せられないけど、それに次ぐ地位だし、これで不満を言ったら、流石に庇いきれないな。


 馬岱は、元の平北将軍に任命するけど、俺の護衛としてついて来て貰った。彼は、蜀漢の中でも優秀だ。

 それと、王平と張翼を加えた四人で、上庸を落としたのだ。


「陛下、お見事です! 神采配としか言いようがありません!」


「いやいや、働いたのは君たちだからね~。でも、魏軍も取り返しに来るだろうから、防衛をお願いね~」


「「「「はっ!」」」」


 ふう~。少ない人材で、性格に難のある人材配置……。楽しいけど、疲れるな~。





 一ヵ月経っても、魏軍は攻めて来なかった。

 その間に、上庸の地は、難攻不落と言えるほど、防備を固めた。四人の将軍を配置すれば、落とされることもないだろう。

 この上庸は、長安も洛陽も狙える土地だ。もっと言うなら、襄陽もだな。交通の要衝と言っていい。


 ちなみに、俺はシミュレーションゲームで、上庸から魏の攻略を行った。この地で、魏の大軍を撃破したんだよな。一騎打ちで、敵兵を無力化吸収して行ったのが、大きかったな~。その後、長安と涼州を制圧したら、収入が増えたのを覚えている。

 だけど、実際問題として、隴西地方の説得が最難関だ。これは、諸葛丞相でもできなかったんだし。


 とりあえず、魏国との国境はこれで安定するだろう。

 魏国も混乱しているだろうし。

 そうなると……。


「朕は、一度成都に帰るね~。防衛よろしくね~」


「「「「はっ! お任せください!」」」」


 成功続きで、4人の忠誠心も爆上がりだな。

 うん、信頼できる部下だと安心だな~。三国志からすると、小物だけど蜀漢の未来は彼等にかかっているんだよね。





 成都に帰って来た。

 さて、次は内政に手を加えないとな~。正史の劉禅は、政治に関与しなかった。それで、諸葛亮の負担が増えていた。

 董允・蒋琬・費禕しかいないけど、何とかなるかな~。時々、喧嘩すんだよね。

 人材登用……、今の時代に在野に誰かいたっけ? まあ、後にしよう。


 一応、勝ち戦の帰りなので、盛大な歓迎を受けて街を進む。敗戦でなくて良かったよ、ホント。

 そのまま、玉座に着く。文武官は、引き締まった表情をしているな。

 皇帝自ら出陣して、司馬懿を討ち取り、上庸まで落としたからね。


「陛下! 撤退戦からの上庸攻略お見事でした。神采配としか、言いようがありません!」


 賛辞は、別に要らないんだけどな~。

 そういえば、もう秋だな~。一年間走り回っていた。脂肪も消費されて、今や俺も細マッチョだ。

 そして、収穫の時期か~。


「……ちょっと戦争のし過ぎだよね。民衆の不満も高まっていそうだね~。今年の税は、去年の半分にしてね~」


「「「えええ?」」」


 三人が、目玉を飛び出しそうなほど驚いている。

 この時代に、減税って珍しいのかな?


「それと、休憩中の兵士には屯田をお願いしてね。少しでも収入を増やしてね。諸葛丞相が実施させてたんだし、できるっしょ」


「「「はっ、はい~!?」」」


 国として苦しくなるけど、戦争をしなければ、一年くらいであれば持つはずだ。外敵よりも、内乱の方が怖い。

 減税を約束すれば、休みの兵士も喜んで畑を耕してくれると思う。


 それと、蜀漢の癌を今の内に排除しておくか。

 まず、宦官の黄皓は、罷免した。まだ、下級役人だったけど、成都から追い出したのだ。

 それと、費禕を殺害する郭循だな。まだ見ないけど、魏から郭家の帰順を認めない宣旨を出した。理由は、郭淮が密偵を放っているからとしたら、皆困惑してたな。うん、意味不明だよね。

 でもね、これが蜀漢の未来を分けるのよ。


 まだ不安なので、郭循の動向も密偵を送り込んで調べることにした。今は、長安にいるらしい。ここまですれば大丈夫だろう。

 実際のところ、魏と呉の降将は結構来ている。まあ、蜀漢から出て行く人も多いけど。

 裏切りが、当たり前の世界。そんな時代なんだろうな~。


 人材は、少ないかもしんない。

 でもこれで内政は、数年くらいは大丈夫だろう。

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