第7話 内政

 さて、今年は、色々な生産物の収入量を上げよう。

 まず、主力産業だよね~。


「今年から来年にかけて開墾した土地は、三年間無税にしてね~」


 これで農民が、自主的に開墾を行ってくれるだろう。

 兵役を解かれた兵士も自立を促せる。

 この時代は、やっぱ屯田兵だよね~。半農半兵?


「はっ? はい~!?」


 もっといこうか。

 工芸品にも手を加えたいよね。


「それと、蜀江錦しょくこうきんの増産計画をお願いね~。蚕飼育小屋と絹織物機器を倍にしてね~」


 機織りはたおり機を作らないとな~。

 工作部隊の任を解いて、生産させるか。


「えええ~!? 倍ってどうやって!?」


 蜀の絹織物は、重要な収入源だった。

 魏国も呉国も大量に購入するほどだ。隴西地方にも卸したいな~。


「それと、銀の産出はどうなってんの?」


「陛下……。銀もそうですが、鉄の産出はいかがいたしますか? 正直滞っております」


 う~ん。何処も人手不足なんだな。

 諸葛丞相は、こんな状態で戦争してたのか……。

 戦争で最後にモノを言うのは、国力なんだけどな~。


「国庫が、空になるまで銀の産出と、矢を作ってね~。兵役を解かれた兵士に仕事を与えてね~。足りない場合は、劉家の宝物を売り払うから、出費を気にせずに働かせてね~」


「うお~い!? 太っ腹だな~!?」


 成果が出るのは、三年後かな~。

 上手く行けば、国力が倍になると思う。


「それと……、いきなり戦端が開かれるかもしれないね~。魏延将軍と楊儀将軍に練兵を頼んでおいてね~。あっ、廖化将軍からの連絡は、朕に直接持って来てね~。上庸を取られたくないし~」


「……あっ。はい」


 これからは苦しい、三年間だな~。

 でも、魏国の曹叡は、浪費を始める。呉国は、同盟を続けると思う。

 今こそ、国土開発に全力を注ぐべき時だ。

 三年後が、見ものだな。

 そして……、十年後が分水嶺になるはずだ。





 内政の大改革を行うと、各地で苦情が奏上されるようになった。

 その一つ一つを、中央で処理して行く。

 丁寧に取り組むと、半年も経てば苦情も大体減って来たな~。

 改革って一気にやった方がいいのよね。その方が、民衆に負担をかけない。


 董允、蒋琬、費禕はやっぱり優秀だったみたいだ。俺の無茶な命令を熟してくれた。


「陛下……。国庫がやばいです。もう、すっごいヤバいっす。空もいいとこです。カラッカラっす。言っちゃなんですが、マイナスです。赤字です。真っ赤です。どうすっとか?」


 う~ん。出費が凄いことになっているな。

 公共事業を行うと、兵糧で賄わないといけないので、消費が激しいのよね。

 場合により治水なんて、戦争より消費量が多いし……。

 でも、兵士が獣を狩って来てくれた。木樵きこりは、山菜を採って来てくれる。

 屯田を行った半農の兵士は、納める必要のない農作物を、税として治めてくれる。無料って言ったんだけど、各地で困っている場所に救援を行ってくれたんだ。

 足りないところに、自動的に農作物が納められる。


「国民が一丸となって、助け合っているのね~。中抜きする官吏がいれば、厳罰を科してね~。処していいよ~」


 この一言で、官吏がピリリと引き締まった。

 悪徳官吏は、一掃されたみたいだ。農民に袋叩きにあったとか聞こえて来たな~。


 処さないどころか、有能な人は、その地域の官吏に任命したら士気が上がったそうだ。生産量が、計画よりも多くなったと報告があったよ。

 やっぱ、善政って大事よね。





 春となり、交易が始まった。意外だったのは、関係の良くない、隴西地方と匈奴が、絹織物を欲して来たことだな~。

 穀物とか、家畜とかと交換する。しかも、魏本国より高く買ってくれるし。どうやら、魏国はかなり税金をかけて売っていたんだな~。直売ならかなり安いみたいだ。

 これを機に、異民族とも友好関係を結ぼうと思う。


 使者をもてなして、酒で潰す。美女をあてがって、もう拒否できない様に懐柔した。劉家の宝物もお土産に持たせると、友好関係が築けたよ。


 銀の産出量も、去年の倍だ。鉱山夫に食事を与えると収穫量が増えるんだな。それと囚人を使うのは、テンプレかな?

 農作物は……、トータルで減算になっているけど、後二年もすれば、国庫を満たしてくれるだろう。


 戦争は、休戦状態だ。魏国も呉国も動かない。

 その間に、武器防具を大量生産した。漢中に保存しており、魏国と呉国対策としては、十分過ぎるほどの量になった。まあ、他国に比べて兵士数が少ないんだけどね。


 食料以外は、一年で十分になったな~。蜀漢国は、やればできる子だった。


「戦争さえ、起きなければ、問題ないかな? 兵士も休めただろうし」


「いえ……。十年かかるのを三年で熟せそうです。はい」


 来年には、国庫も回復するだろう。ちょっとピンチだったけど、攻められなかったし。戦争しなければ、これから増える――と思いたい。


「陛下の慧眼には驚かされるばかりです」

「全ての生産物が、倍になっています。陛下の善政の賜物です! 農作物は、来年に期待ですな」

「国中が、喜んで働いています。陛下の徳が、益州を駆け回っています」


 善政? 徳? 国益を考えているだけなんだけどな~。

 それと慧眼ね~。未来を知ってんだし。こんなもんじゃない?





 それと、俺の妻だった敬哀皇后が亡くなった。葬式には、国中が悲しんでくれたな。

 周囲の推薦を受けて、俺は後妻に、敬哀皇后の妹の張皇后を迎えた。父は張飛で、母が夏侯覇の従妹なんだ。


「祝言が、貧しくなっちゃってごめんね~」


「いえ……。国を挙げての改革中なのです。今の劉禅皇帝を見たら父も喜んでおりましょう」


 うん。国母に相応しい人柄だね。この人なら後宮も纏められるだろう。

 その日は、国中が祝ってくれたよ。





 実は結構ピンチだった、劉禅でした。ですが、周囲が助けてくれています。

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