第26話 燕国の使者1
「燕国が、冀州を攻めるの?」
「はっ、食料を融通して欲しいとのことです」
燕国王は、焦っているな~。幽州を完全に掌握しているんかね?
そもそも食糧難なのに、他国に進攻か……。
『袁紹って、冀州と幽州を平定したら、曹操よりも優位に立ったんだよな~』
それと、魏国は匈奴を追い払っている。冀州には、良将がいそうだ。
考える……。現状を俯瞰する。
『燕国では、落とせないよな……。でも、魏国にも疲弊して貰うか』
良し! 決まった!
「OKよ~。并州から送るね~。でも、鄴は、趙統君が攻めているので。その北までにしてね~」
「「「えええ? 陛下? 正気ですか?」」」
あれ? 司馬師君たちは、断ると思っていたらしい。
并州南部には、司馬昭君を配置する。今までは、呉国の動向を探って貰っていたけど、これからは北を統治して貰う。
「食料輸送をお願いね~。それと、匈奴の動きに注意してね~。雁門重要ね」
「はあ……。お任せください」
「それと、燕国の冀州には、食糧援助だけでいいからね? 攻め落とさないでね~」
「……委細承知」
表情が変わった。
この配置の意図を、理解したようだ。
燕国の侵攻が始まった。
でも、城の防備が堅く、城は落とせていないみたいだ。農民は、城に籠ってしまったし。
司馬昭君が、放置された土地の収穫を行って行く……。
燕国は、それを横目で見ながら、城攻めだ。
「今は麦の収穫時期なのよね~」
冀州がどれくらい兵糧を溜め込んでいのかは、分からない。
でも、一回でも収穫が得られなければ、民衆の不満が高まるだろう。
それは、どんな名将でも抑えることができない。
例え、諸葛丞相でもだ。
「冀州は、荒れ果てそうだけど、復興を約束しないとね~」
趙統君も持久戦の構えだ。慌てないように、手紙を送る。
これで冀州は、時間の問題だ。魏国の兵糧が尽きるか、燕国の兵士が力尽きるか……。
「さて、蜀漢国は、陳留攻略と行こうかね」
「はっ! 今回も神采配でしたな! 二虎強食の計、流石以外の言葉がありませぬ」
司馬師君も納得してくれたようだ。
食糧援助だけで、魏国を疲弊させてくれるのであれば、匈奴と組んでもいいかもしんない。
◇
「う~ん。寿春も呉国も動かないと、陳留攻略は、正攻法しかないのね~」
「ガチンコでよろしいかと」
呉国が、小沛と下邳を落としてくれていれば、また違ったんだけどな~。
正直、呉国の徐州侵攻は失敗だったな。長江から北側を少しとっただけだ。
寿春は、城を閉ざして動かない。
「こちらの兵力は?」
「ご指示いただければ、五十万人を動員できます。各地で指示を待っております」
ごふ?
もうそんなに増えたんだ。
夜空を見上げて、考える。
「ここまで、奇策と奇襲で城を落として来たけど、もう無理かな~」
最終決戦……。鄴と陳留を落とせれば、魏国は、もう逃げ場がない。そして、守る兵士もいなくなるだろう。
呉国は、無駄な戦で兵士を失っている。
背後を突かれる恐れはなさそうだ。
「姜維と
何時攻められるか分からないからね。
でも……、後一手が欲しいな。
とりあえず、総攻撃の命令は出さなかった。
持久戦を続けていれば、魏国は追い詰められていく。豊かな土地は、奪ったか荒したので、兵糧が足らなくなるはずだ。
逆に蜀漢は、善政を敷いて民衆を受け入れている。
戦火を逃れたい人々が、洛陽や長安に集まって来ている。
「密偵に注意してね~。特に魏国からの降将は、費禕に近づけさせないでね~」
まだ可能性のある事件は、事前に摘んで行く。郭循は、処したけど、歴史の修正力を危惧している。
この後の魏国の歴史を思い返してみるけど、小規模な内乱しかないな~。
魏国が揺らぐ事件はなさそうだ。
そんな時だった。
「うん? 寿春が徐州へ侵攻?」
歴史ではなかった、事態だな。
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