第25話 陳留攻略2

 寿春は、呉国に落とされていなかった。

 ずっと最前線だったみたいだ。つうか、独立自治みたいな感じだ。


曹彪そうひょうが、怖いかもしんないな~」


 少なくとも、曹芳そうほうよりは、器が大きいかもしんない。

 でも、陳留と寿春が落とせれば、魏は終わりだと思う。国を守る兵士がいないはずだ。

 強制徴兵すれば、住民に反発されるだろうし。


「呉国は、どうなってるの?」


 司馬昭君が答えてくれる。


「兵士を失い過ぎて、守備兵もギリギリみたいです。攻め込めば、落とせますな」


 いかに陸抗りくこうと言えども、ボケた孫権を御せないか……。

 軍事行動ができなくなるまで、領土拡大を謀ったんだな。

 それでいて、奪えた領土は少ない。春秋戦国時代の斉国そのままだ。違うのは、内乱起こされそうってとこかな?

 ああ、そうだ。交州の密偵に手紙を送ってみよう。反乱が続いているかもしんない。

 三国志には、あんまりというか、全然出て来ない地域だけど、結構重要だったりする。呉国滅亡の鍵だからね。


 すぐに密偵から、返事が返って来た。


『原住民が、太守とか殺しています。もう、内乱状態です。密偵より』


 予想通りだけど、味方に引き込むのは無理がありそうだ。反乱軍と手を組みたいけど、あれって下級役人の反乱だった気がする。時期が合っていない。

 今は、楊儀君も杜預君も動かしたくないな。

 兵士がいなくなった都市の、反乱が怖い。

 成都と漢中も大分帰ってないけど、大丈夫なんかね?


「雍州と涼州は、姜維。漢中は、魏延。益州は費禕。襄陽は、楊儀と杜預……。反乱されたら、終わりだよね……」


 自分の背後を考えてなかったな。信頼してんだけど、一ヵ所でも綻びが出たら終わりだ。

 司馬師君が答えてくれる。


「全員、忠誠心の厚い人物です。心配は無用かと」


 そうあって欲しいね。





 費禕君は、洛陽への遷都の総指揮を執ってくれた。その時に、正式に益州牧に任命する。丞相から降ろしちゃってゴメンね。


「ありがたき幸せ。成都より物資を送り続けます」


 費禕君は、大丈夫そうだ。


 今度は、魏延君が来た。援軍を連れて来てくれた。


「何時も援軍をありがとうね」


「ありがたきお言葉。これからも練兵を続けます」


 魏延君も大丈夫そうだ。


 次に、姜維君が物資を持って来た。


「隴西地方は、大丈夫そう?」


「……戦いたいっす。諸葛丞相の意思を継ぐのは、俺なんです」


 姜維君は、不満があるみたいだ。


「張翼君と王平君。雍州と涼州に行ってくんない? 州牧に任命するので」


「「こればかりは、しょうがありませんな。受けるっす」」


 交代してくれた。

 ずっと戦ってたんだし、少し休んで貰おう。


「襄陽からは、来なかったな~」


「杜預がいるので、心配無用です。反乱を企てるのであれば、事前に防いでくれるでしょう」


 楊儀って、人の悪口を言うのよね。

 いるよね、不満を言い続けたい人って。部下が心配だ。

 でも、人が変わったように指揮を執っているとも聞こえて来る。指揮官に任命したのが大きいんかね?





 姜維君と羅憲らけん君が、魏国に攻めかかる。

 陳留を避けて、呉国が取り損ねた城を奪って行く。

 魏国はもう体力がないみたいだ。次々に落城して行った。


 寿春は、防衛の構えだ。籠城している……。


「寿春だけで、独立する気なんかね?」


 陳留からは、攻め込まないので戦端は開かれない。何してるんかね?


「姜維君と羅憲らけん君には、常に退路を確保するように伝えてね~。伏兵に気を付けるように」


 それと、冀州だ。趙統君に援軍として、関統かんとう関彝かんい趙広ちょうこうを送った。鄴は、抵抗を続けている。一回攻め落として、放置したので、守りを固めているみたいだ。難攻不落の城になったみたいなので、時間をかけよう。兵力もそんなにかけられないしね。


 匈奴は……、攻めて来なかった。

 北でも争っているんかね? 雁門でやり合っているらしい。

 だけど、蜀漢国には、襲って来なかった。


「戦車隊での脅しが効いたのでしょう。陛下の戦上手も伝わっています。戦車隊からの逆襲と、包囲殲滅作戦……。戦国四大名将の李牧ぐらいに恐れられています。劉家の旗を見るだけで、逃げて行っております」


 う~ん。油断はいけないよね。

 雍州と涼州から、援軍を送って貰おう。

 新しく手に入った太原の城は、雁門と同じくらい重要な城になった。


「万里の長城まで押し返したいけど~、今は兵を割けないのよね~」


「万里の長城?」


 作られたのは、秦国の時代だけど、まだそんな呼ばれ方はしていないのか~。

 そんな話をしている時だった。


「陛下、燕国より使者が来ました」


 おう? 他国の使者?

 同盟を組んでんだし、会う必要があるな。

 司馬師君を見る。


「なんだと思う?」


「燕国も行き詰っているので、救援要請かと……」


 そんじゃ、会ってみるか。

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