第33話 幽州3

 城攻めの号令をかける。

 だけど、けいの城は、抵抗して来た。

 予想と違うな~。本格的な攻城戦になっちゃったよ~。


「なんでかな? 燕国の支配がいいのかな? 内政が良かった?」


 俺の予想では、将兵は逃げ出すと思っていたんだけど?

 他国に食糧援助とか求めてんだし。


「公孫淵の身内が、指揮を執っているんじゃないんですか?」


 ふ~む。結構抵抗されているな。味方の被害が大きくなりそうだ。


「食料事情とか分かる?」


「明言は出来ませんが、少ないはずです。燕王は、陛下に援助を求めて来たのだし」


 羊祜君は、住民もいれば、籠城は無理と考えているのか。俺と同じ考えだ。

 俺は、兵を引かせた。


「ちょっと、防衛戦に変更ね。援軍が来るかもしれないので、後ろにも気をつけてね~。特に夜襲ね~。暗殺者を陣に入れないように気をつけてね~」


「「「はっ!」」」


 後は、俺の居場所が分からなければ、問題ないだろう。

 全滅覚悟の奇襲は、受けたくない。


 一日、二日、三日……。静かな時間が過ぎて行く。けいの城の包囲も完璧だ。外部との連絡は、鳥を使う以外にないだろう。地下道とかあるかもしれないけど、城の周囲を巡回させているので、逃げ出すことも出来ないと思う。

 俺は、放った斥候の報告を聞くことにした。


「周辺の村は、降伏ね~」


「食べるだけで精一杯だったみたいです。男手は、けいの城に集められていますし。抵抗はありませんでした」


 う~ん。長期戦で行こうか~。

 何時もこれだな。だけど、物資の豊富な軍って楽なのよね。



 途中で、易京城の兵士が、遼東へ逃げて行った。兵糧が尽きたんだな。

 その背後を迎撃したので、どれだけの兵士が辿り着けたか……。


「陛下。降伏の使者が来ました」


 けいの城は、半月持たなかったね。

 それと、守将は、公孫脩こうそんしゅうだった。公孫淵の子供ね。

 処刑するかどうかは、後から考えよう。

 公孫脩は、洛陽に送る。


「そんじゃ、誰か武将を城に入れて、武装放棄させてね~。羊祜君は、朕と一緒に遼東に進軍ね~」


「では、城を任せられる人材を選びます」


 待っていると、鍾会が来た。蜀漢を滅亡させた人だ。郭淮の部下だと思っていたんだけど、降っていたんだな~。

 まあ、羊祜君の推薦だし、大丈夫っしょ。


 ここで、孫礼と王凌が戻って来た。北の烏桓族の偵察を行って貰っていた。

 話を聞く。


「うん? 単于(匈奴の王)が、兵を集めているの?」


「はっ! 我が軍の補給が伸び切った所を攻めて来そうです。今、遼東に向かうと背後を突かれそうです」


 う~ん。面倒だな~。


「陛下! 先に匈奴を討つべきです! 燕国だけでもなく烏桓族にも、蜀漢国の武威を示しましょう」


 地図がないんだよね……。

 ここで大敗はしたくないのが本音だ。





 鄴に使者を送る。曹操時代の郭嘉かくかの烏桓征伐記録を求めたんだ。

 一ヶ月かかったけど、送られて来た。

 地図を広げる……。


「う~ん。手書きの地図だね~。これで進んだのか……」


 それと、日誌みたいな軍事記録だ。

 郭嘉って凄いな。未開の土地に地図なしで攻め込んだのか。

 古代の戦争だけど、過酷さが分かる。


「これでは、補給は無理だよね~。匈奴討伐は、中止しよう」


 羊祜君は、不満なようだ。

 でもね、ここで大敗したくないのよ。


 そのまま、けいで時間を過ごす。

 一度、洛陽に帰りたいけど、反撃にあいそうだ。燕国の放置は、命取りだよね。

 部下は、練兵を繰り返している。

 今なら、勝てそうだな~。


「来てくんないかな~。迎撃戦なら勝てそうなんだけどな~」


「無理でしょう。陛下の采配を目にして、挑んで来る者などおりますまい」


 後ろを振り向く。


「おお、司馬昭君! 来てくれたのか!」


 司馬昭君には、并州を任せていた。匈奴が撤退したので来てくれたみたいだ。

 その後、軍議を重ねる。


「昔、趙国の李牧が、匈奴を引き込んで殲滅いたしました。雁門の話です。ここは、一度、陛下が洛陽に帰られて、羊祜が迎撃するのがよろしいかと」


 関羽と陸遜の話でもあるね。実績のほぼない若者に軍権を任せて、油断を誘い攻め込ませる。

 う~ん。一抹の不安を感じるな~。

 だけど、実績を積んで貰うために、降将に頑張って貰うのもいいか~。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る