第32話 幽州2

 燕国は、兵を出して来た。燕軍だよね。国を名乗ってるんだし。

 冀州と幽州の国境付近で対峙だ。

 橋を落とされた川で対峙する。


「う~ん。どうすっかな~」


 地図を見る。この地域は、川が多い。

 防衛されると、面倒だな。

 橋を落とされると、復旧に時間がかかるし。


「ちょっとさ、誰か遠回りして来てくんない? 燕軍の背後を突いて欲しいんだけど~」


「「「はは!」」」


 雑将軍たちが、我先にと出陣してしまった。


「陛下……。統率が取れていません。烏合の衆になっています」


「大軍に兵法は、必要ないんだよ。それに、数千人程度の雑将軍が、バラバラに動き出したら、対応は無理じゃない?」


「各個撃破される恐れがあります」


「う~ん、戦争なんだし、一人二人の雑将軍の損害は、覚悟しないとね。それと燕軍にそこまでの実力があればね~」


「……なるほど。陛下は、相手の力量も計算に入れているのですね。小手調べであれば、上策かもしれません」


 羊祜は、納得してくれたようだ。



 俺は、陣取っているだけだけど、次々に戦果が報告されて来る。

 燕軍は、対応できないみたいだね。


「羊祜君……。そろそろ、本陣も動かそうか。川を渡ろう」


「はっ!」


 軍を半分に分けて、橋のある場所へ移動する。

 そうすると、燕軍も対応して来た。


「う~ん。通せん坊だな~。でも川の水量も少ないし。渡れない?」


「「「陛下、お任せください!」」」


 あれ? みんな一斉に渡河し出したぞ?

 燕軍は、数が少ない。蜀漢軍の1/10だな。

 一ヵ所でも突破されたら、防衛は無理だよね。

 つうか、川の上流と下流の布陣していない場所から、渡河してしまった。


「燕軍は……、総崩れだね」


「お見事です。陛下!」


 俺は、なにも指示していないよ? 燕軍が勝手に崩れただけじゃない?

 まあ、兵力差は10倍だしね。


「そんじゃ、損害の報告をお願い」


「軽微です」





 次は、易京城の攻略かな~。

 曹操は、破壊せずに残したのか……。廃墟とも言えるけど、邪魔だな~。


「陛下! 燕王は逃げたそうです。ですが、投降兵が多数です!」


 もう、この時点で燕軍は終わりだよね。

 兵糧もなく、兵士が半分逃げてしまった。

 地図を見る。


けい遼東りょうとうが残ってんだな~」


「陛下……。匈奴もお忘れなく。匈奴が巻き返すとなると、今しかありません」


 羊祜君を見る。


「進み過ぎない方が、いいってこと?」


「時間をかけても、負けのない戦い方がよろしいかと……。陛下を討ち取る好機は今しかありませんし」


 なるほどね……。

 俺が戦場に出るのは、本当に稀になった。


 孫礼と王凌を呼んだ。降将として雇ったんだ。

 本当は、対呉国の要なんだけど、まだ雑将軍なので、ここで手柄を上げて貰う予定だ。

 今回の遠征が終わったら、杜預の下に行って貰う予定だ。


「ちょっと、匈奴の偵察に行って来てくんない?」


「「OKっす。お任せください」」


 匈奴が、援軍に来るのであれば、倒しちゃおうか。



 まず、易京城に向かう。

 瓦礫が凄いことになってるね。防衛のために兵士も残っている。僅かだけど。

 だけど、指揮官は聞いたこともない人物だった。


「う~ん。ゲリラ戦仕掛けられて、兵士を失うのは避けたいな~」


「げ……、なんですか?」


 地図を見る。

 正直ここは、関所でしかない。


「うん。易京城は無視して、けいに行こう。とりあえず、易京城には、半包囲程度の兵力を残しておいてね~」


「えええ~!? 糧道の確保と、背後からの挟撃をどうすんですか?」


 燕国ってさ、食糧援助を求めて来て、領民に与えたのよ? 易京城に食料が残っているとは思えない。

 俺は、一割程度の兵力を残して、前進した。まあ、易京城は、包囲しているので、大丈夫だろう。


 幽州は、騒然となったね。

 逃げるか服従かだけど、服従して来る農民がほとんどだ。彼等を見れば、どんな生活を強いられていたかは分かる。

 燕王は、戦上手だったかもしれないけど、政治は下手っぽいね。奪うだけしかしなかったみたいだ。

 元は、魏国の支配下の土地だったんだ。

 奴隷にしないと約束すると、忠誠を誓ってくれたよ。


「そんじゃ、屯田兵ね~。二万人くらい常駐してね~」


「はっ!」


 幽州は、これだけで農民が降った。孤立しているけいの城だけを包囲する。

 易京城は、動かないんだそうだ。


「そんじゃ、四方を包囲して総攻撃ね」


「「「はっ!」」」


 こうして、攻城戦が始まった。

 兵士数が10倍だと、取れる作戦が多くて、迷ってしまいそうだ。

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