第36話 魏志倭人伝……かもしんない人たち

 司馬昭君は、三軍に分けたみたいだ。

 鳥桓族討伐隊と燕国討伐隊。そして、薊を護る守備隊だ。

 時短を狙ったんかね? 輸送の関係からかもしんない。

 鳥桓族討伐に集中しても良さそうだけど……。大軍を投入しなかったのか?

 報告書の木簡と、にらめっこする。

 伝令には、模擬的な地形を作成して貰い、進軍ルートを説明して貰う。


 司馬懿の【遼隧の戦いりょうすいのたたかい】の再現を行わせようとしたけど、なんかあったんかね? 引き込んでから包囲できるように準備したんだけど、撃って出たんだ……。


「陛下、お気になされますな。弟は、そこそこ優秀です」


 司馬師君を見る。

 そこそこの評価なんだ?

 史実であれば、『晋国』の礎を作る人でもあるんだけどな~。

 まあ、彼等の父親が偉大なんだろうな。


「兵士は、足りると思う?」


「……心配であれば、数万人程度を薊に移動させてください。文武官もつければ、問題ないでしょう。それで、失敗するのであれば、そこまでの人材だったということです。見捨ててください」


 司馬師君……。弟には、辛らつだな。

 でも、援軍を送れとも言っている。

 とりあえず、元魏国の降将を集めて送ればいいか。

 活躍を望んでいて、場がない文武官が大勢いる。


「そんじゃ、手続きをお願いね~」


「委細承知……。陛下、ありがとうございます」


 なんだかんだで、兄弟仲はいいのかな。





 ある日、連絡が来た。

 緊急性はないと判断されて、後回しにされていたらしい。それを、司馬師君が見つけたんだそうだ。


「うん? 他国の使者?」


「はっ! 燕国の東からだそうです。燕国にて止められていたそうです。もう、すっごい異文化の服装なんです。それと、苦難の道を乗り越えて来たみたいです。会ってやってくれませんか?」


 ……燕国の東っていったら、あの国しかないじゃん!


「うん、会う会う。連れて来て」


「陛下……。蛮族かもしれませんが? 時間の無駄と思われます」


 他の文官が止めに入って来る。


「良いの良いの。会ってみたいのよ~」


「……陛下?」



 数日後、その使節団が来た。


「****、*****。*****、********、********」


「うん、言葉が通じないんだね。通訳もいないのか~」


 木簡を受け取るけど、字が汚くて読めないね。これ、漢字じゃないのかもしれない。


「陛下……。どうなされるのですか?」


「金の印綬を送ろっか~」


「「「えええ!? 最上級の待遇を行うのですか!?」」」


 倭国の使者だ――と思う。丁重に扱わないとね~。

 そういえば、聞いたことがあったな。

 本来であれば、公孫淵に邪魔されて来れなかったんだよね。

 そんで、司馬懿が討伐したら、魏国に来れたんだっけ?


「ちょっとさ、誰か倭国を見て来てくんない? 様子が知りたいのよ~」


「ちょっ、陛下? 秦の時代に『蓬莱』と呼ばれた土地ですよ? 始皇帝を騙した徐福が、行ったとか行かなかったとか、怪しい記述があるだけです。そのような土地に興味があるのですか? 陸続きではないのですよ? 海を越えるんですよ? 分かってんですか?」


 興味があるんだよ。

 この歴史は、変えたくない。

 くじを引いて、アタリの人に見学に行って貰うことになった。

 帰って来れたら、昇格を約束すると喜んでくれたよ。


「戦争してるかもしんないけど、できるだけ詳細に情報を伝えてね~」


「「「ははっ!」」」


 彼等には、大金と船をつけた。徐州で準備して出発して貰おう。植物の種や、馬や羊なんかも贈る。

 そんなこんなで、数日もてなしてから、出発して貰った。



「陛下……。何故あんな蛮族を優遇したのですか?」


 蛮族ね~。

 まだ、文化が花開いていないだけじゃない?


「一応さ、お隣さんだから。燕国が逃げるかもしれないじゃん? 先回りしておこうよ」


 それっぽいことを言ってみる。


「……なるほど。陛下の慧眼極まれりですな」


 納得してくれたよ。

 それと、天竺方向だな~。インド方向は、文化的にどうなってんのかね?

 発展しているかもしんない。もしかすると、西洋の文化を取り入れているかもしんないし。それと、定番の胡椒だよね。輸入できるなら、買いたいのもある。

 誰か行かせないといけないね~。





 報告が来た。幽州からだ。


「司馬昭君は、一進一退の攻防を繰り返しているのね……」


「この体たらく……。慚愧ざんきに堪えません。私が行きましょうか?」


「まだ、数ヵ月だしさ。見守ろうよ」


 司馬懿は、奇襲からの電撃作戦で公孫淵君を討ち取ったはずだ。戦争の短期決戦は、望ましいけど、今回は攻城戦も含まれる。制圧戦なんだ。

 敵が出て来なかったみたいだね。


「陛下の寛大な処置。痛み入ります」


 う~ん。薊に引き込んでから、包囲殲滅するように誘導したんだけど、燕国はどうしたんかね? 罠を張っていたんだけど、飛び込んで来なかったみたいだ。

 それに、烏桓族もだ。各個撃破ってなに?

 勝っているので、問題はないんだけど、予想より弱かったかもしんない。

 司馬昭君は、力攻めを行っているし。高度な戦略はとっていないんだな~。


 まあ、戦争は国力だ。

 司馬昭君が、戦死しなければ、負けはない。

 それに、ちょっと危険な匂いもした。

 現場に行かないと、分からないこともあるよね。


「まあ、朕たちは、この間に内政に力を入れよっか~」


「「「はっ!」」」


 蜀漢国は、安定して来たのね~。



 一年後、幽州が平定された。

 そして……、郭淮と曹芳が捕らえられたと、連絡が来た。

 燕王は、討ち取られたらしい。

 流石、司馬昭君だよ。

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