第21話 魏国侵攻1
魏函谷関も洛陽も、黄河の南にある。
本当は、攻め落としたいけど、後回しだ。
「
春秋戦国時代、秦国の
黄河を境にして、魏国を南北に分断すれば、中華の地は大きく揺らぐだろう。
「「「はっ!」」」
東進して、順次城を落として行く。
皇帝自らの指揮だけあって、士気が高いな~。
それに、10年くらい練兵したから、精鋭揃いだ。
呉国は呼応してくれた。南陽に攻めかかってくれたのだ。
これで、南から攻められることはないと思う。
「流石、
ラスボスは、
でも、まだまだ先だな~。目の前の敵に集中しよう。
そんなこんなで、
鄴城は撃って出て来て、平地に陣を張っていた。
「う~ん。平地戦か~。ここで、兵士を減らしたくないのね~」
「仕方ないかと……」
まあ、これが天下分け目の合戦の一回目になりそうだ。
出し惜しみは、なしだな。
「そんじゃ、突撃よろしくね~」
「「「はっ!」」」
◇
「案外弱いのね~。武器を持った農民みたいだ」
魏軍は、正直弱かった。
精鋭を国境に送って、中央には兵がいなかったみたいだな。
急遽、徴兵したんだろうな~。
魏軍は、平地戦での敗北を悟ったら、あっさりと城の防衛に切り替えて来たよ。
それと、先手の大将の
こんな人材を、地方の守りにつけていたのか。
姜維君も見出せば、また変わってただろうにな~。蜀漢といえど、まだ他に人材がいるかもしんないな。
兵士数が、ほぼ同数だけど、日に日に魏軍が消耗して行く。
それでも、城には入らなかった。
「なんか狙ってんのかね?」
「いえ……。国の中枢を逃がす時間稼ぎでしょう。このまま、戦えば近いうちに鄴城は陥落するでしょうな」
司馬師君が、的確に答えてくれる。まるで、相手の太守の心理を読んでいるようだ。曹芳とその側近を逃がす算段をしているのか~。
「何処に逃げると思う?」
「歴史から、北に向かえば、信都か巨鹿が、趙国時代の退路ですな。黄河を渡ると……、徐州か青州でしょうな。何処に新しい都を置くのかは、分かりませぬ」
「今の内に、北を塞いでおく?」
秦国の
「不要かと……。自滅を待ちましょう。それよりも、魏曹家の首都を落としたという事実を中華の地に轟かせる方が先決です。劉禅陛下の威光により、多くの城が降伏するでしょう」
まあいいか。北伐の目的は、洛陽の奪取だもんね。
曹家を滅ぼすのは、時間をかけてもいい。ちなみに俺は、玉璽には執着していない。諸葛丞相が、何処かから持って来た玉璽があるんだからね。
◇
一ヵ月の攻防の後、鄴が陥落した。
今は、追いかけない。そのうち居場所が分かるだろうから、それまで待つ。
「そんじゃ、黄河を渡って南下しよう。洛陽に向かおっか~」
「「「はっ!」」」
鄴城は、少数の兵士でもって、火を放って貰う。
一時的に、宮殿だけでも使えなくして貰えればいい。宝物とかは、持ち出しているだろうしね。
一般市民は残っていたけど、手を出さないように沙汰を出す。
占拠はしない。敵地のど真ん中だし、僅かな兵で守備させても、死なせて奪い返されてしまうだけだ。
船で黄河を渡る。船は長安から回して貰った。
渡航中が危ないんだけど、襲撃はなかったな~。
この時点で、魏国に人材がいないのが分かってしまう。
そのまま、洛陽に着いた。
まず、情報収集だな~。
「報告をお願い」
「はっ。洛陽と魏函谷関の兵は、南陽に送られております。呉の陸抗は、大軍相手に苦戦しているとのことです」
「んっ? それじゃあ、洛陽を守る兵は少ないの?」
「そうなるかと……」
なるほどね~。
蜀漢軍が、戻って来るとは思っていなかったんだ。
まあ、そうなるか。鄴という大都市を落としても、支配せずに戻って来るとは、誰も思わないよね。
「陛下! 今しかありませぬ。先帝の意思を継ぐ時です!」
ずっとついて来てくれた、廖化君からだった。
もう、最古参だよね。
「うん、そうだね。もう小細工も必要ないね~」
俺は立ち上がった。
全員の表情が引き締まる。
「そんじゃ、洛陽に総攻撃をお願いね~」
◇
分かりづらいかもしれないので補足説明
1.蜀漢軍が長安から鄴へ向かう(黄河の北)。
2.魏軍は、洛陽が攻め込まれないと思い、南陽を襲っている呉軍に援軍を送る。
3.劉禅は、陥落させた鄴を放置して洛陽をとりに南下した。
4.魏軍は、蜀漢軍は鄴を統治すると思っており、洛陽を空にしていた。
5.魏軍は、南陽を守るか洛陽を守るかの選択に迫られるが、皇帝が行方知れずで動けない。
6.空の洛陽に劉禅が到着。
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