長編:転生したら【阿斗】かよ~諸葛丞相いないんだけど、どうすっかな~
信仙夜祭
第1話 三国志の劉禅に転生
「なに? 諸葛丞相が亡くなっただと? 戦場で?」
朕こと
周囲の文武官も動揺しているな。だけど、動揺するなという方が、おかしい。
この後どうしようか……。
朕たちだけで、国を回せていけるのかな~?
「無念にも、五丈原にて亡くなられたそうです……。病死とのこと」
伝令が、涙を流しながら報告を行う。
朕は、目眩がしてしまった。
とりあえず、座ろう。皇帝が、動揺なんかしてはいけないんだ。
――ズル
座り損ねた。
そして……、階段を転げ落ちる。
――ゴロゴロ、ドスン
「「「陛下~!?」」」
日頃の運動不足と貧血が招いた惨事だな。特に食事には気をつけよう。
それと、皇帝の椅子って階段の上に作る必要あるんかね?
高祖劉邦? 始皇帝? その前の時代から? 無駄じゃない?
毎日階段を登るのが、辛いんだけど……。
『体中痛いな。それと最後の顔面ダイブは、結構なダメージだった。もうちょっと、体重が軽かったら、最後の一撃もなかったのにな……』
その後、医者に診て貰って、運んで貰う。
そこで意識を失った。
起きているのか、寝ているのか……。
まどろみの中で、なにかを思い出して来た。
「正史三国志……。三国志演義……。シミュレーションゲーム?」
苦しみの中、私の前世の知識が、少しだけ蘇った夜だった。
◇
朝起きて、確認する。
「首は痛いけど、体は問題なく動きそうなのね~」
薄暗い部屋を出て、庭に出る。黙って、護衛がついて来てくれた。
まだ、朝日が昇った時間なので、静かだな~。
朝日に照らされて、自分の姿を湖で確認する。
「うん、大怪我になんなくて良かったな~。鼻血が結構出たくらいなのね~」
体は痛いけど、動けないほどじゃない。首が心配だったけど、左右に振れるし。
ちょっと軽率だったな。うん、運動しよう。そうしよう。
それよりも……。
「俺……、
独り言が、出てしまった。
転生になんのかな? 頭を打って、前世の記憶が蘇った?
でも、劉禅はないだろう……。
いくら三国志好きでも、選ぶ奴なんてそうそういないと思う。
そして、
シミュレーションゲームなら……、まあ蜀漢から始めんのはありだけど。でも、シナリオの最後だぞ? 武将も少ないので、オリジナルキャラを作らないと、城の方が多くなり、統一できなかった気がする。最新作だと、改善されてんのかね?
周囲を確認して、状況確認を行う。
『うん、古代中国っぽい庭だ。建物が違うし、岩が渋い。マジで転生したっぽいな……』
人気だった、後宮モノでもないのが残念だ。(げふん、げふん)
そして、残念な人物の残念な時代への転生か~。
「陛下……、ご無理をなさらずに、ご静養ください」
護衛が、諫めて来た。
「うん、心配かけてごめんね~。でも、もう大丈夫よ~」
「……陛下?」
さ~て、どうすっかな~。
丞相の
この後、内乱が起きるけど、蜀漢って四十年しか続かないんだよな。残りは……、三十年弱くらいか?
西暦は……、234年のはずだ。俺は、三国志オタクだったから知っている。数字も並んでるしね。
そして、この後の出来事も思い出せる。
転生特典だな。
他になんかないんかな? 知識だけ? チート能力とか欲しいんだけど。
念動力とか試してみるけど、当然動かない。火も風も起きない。腕力も普通だ。
『こう……、戦国時代に転生って言ったら、漫画みたいに一人で数十人を倒せる膂力とかないんかい……』
どうやら、残念な転生のようだ。チートなしの残念な人物への転生か~。時代も、蜀漢国は最盛期をとっくに過ぎている。これから凋落の一途だ。
まあ俺は、皇帝ではあるんだけどね。権力のみあり……か。
ゲンナリする。
「陛下! お目覚めでしたか。不在でしたので、探しましたぞ」
でも、出入り口にいなかったから、仮眠でもとっていたんだろう。
「心配かけてゴメンね~。でも、もう大丈夫よ~」
「……陛下?」
護衛と董允君が、視線で会話している。首を左右に振っているので、なんかが不自然なんだろうな。
俺の中には、二人分の知識があるので、この時代の作法に沿っていないのかもしれない。
まあ、そのうち思い出そう。
「報告をお願いね~」
「あ……、はい。諸葛丞相は、撤退の指示も出されており、
ごふっ……。
「ダメじゃん! 味方同士で殺し合う撤退戦じゃん!!」
「はえ?」
やべぇよ。いきなり国力が削られるイベントじゃん。
ここでの将兵の損失は、強大な魏国に対して致命傷になる。いや、なったんだ。
国力を取り戻すのに、十年はかかるぞ。その十年で更に差が広がる。
三国志オタクだった、俺だから知っている。兵士数というより、国民の数が、魏国とは十倍くらい違うんだよ。
いや、待てよ……。考え方を変えよう。
「歴史を変えられるのであれば、まだ間に合うか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます