第28話 魏国攻略2

 徐州兵と青州兵が、楊儀軍に襲いかかる。

 だけど、楊儀は強固な陣地を構築して抵抗している。


「楊儀君は、実は優秀だった?」


「いえ……、もう魏国に将がおりません」


 なるほどね~。


「それよりも、ここまで匈奴と燕国、魏国、そして寿春までもが、魏国に攻め込んだり、反乱しております。どうやって、情報収集を成されたのですか? 私も独自の情報網がありますが、あまりにも視野が広すぎるかと。まるで、未来を知られているような……」


「う……」


 転生特典だとは、言えないよね。


「ち、朕にも密偵部隊がいるのよ?」


 司馬師君は、疑いの目だ。


「そうでしたか……。司馬家以上の密偵などいないと思ったのですが。流石陛下です」


 これは、納得していないな。言い訳を考えておこう。



 楊儀軍は、徐州に攻め込んだんだけど、防戦一方になったようだ。でも頑張っている。

 俺も、物資の補給は怠らない。

 一進一退の攻防……。

 勝ったり負けたりしているみたいだ。


「う~ん。援軍を送りたいけど、将がないな~」


 魏国の中枢は、毌丘倹・文欽・郭淮・諸葛誕が握っている。本来であれば、司馬氏に粛清される人材だけど、優秀だったみたいだ。支配する土地が少なくなったので、中央の監視も鋭くなり、防衛も強固になってるし。


「撤退させてみては? 兵士と物資の損失を続けているだけかと」


「それも一つの手だよね~」


 でも、楊儀君の性格を考えると、自分で帰って来て貰うのが一番だ。

 十万人の兵士には悪いけど、頑張って貰おう。


「陛下! ここは、多少の損害を負っても鄴か陳留を落とすべきです」


「なんか策があるの?」


「御足労を頂きたく」


 何処でも行くよ?

 そのまま、司馬師君に連れられて、城の外に連れて行かれた。


「こんな時のために、 霹靂車へきれきしゃ衝車しょうしゃ床弩しょうど井蘭車せいらんしゃ雲梯車うんていしゃ木慢もくまんを大量に作っておきました」


 ごふ?

 すっごい数なんだけど?


「陳留攻めを、お任せいただきたく」


 ……。これ、防げる城なんてあるんかね?





 司馬師君は、陳留に向かった。

 俺は、洛陽に帰って各地の状況を聞く。今背後を突かれると全てが終わる。

 信頼している部下に州牧を任せているけど、油断はしない。


 密偵が帰って来た。


「異民族の不満がちょっと溜まっているのか……。貢物を送っておいてね~」


「はっ!」


 各城には、最低限の兵力を置いている。万全なはずだ……。

 俺の知識では、抜けはないはずだった。



「陳留陥落?」


 司馬師君が向かって、数日だよ?

 落としちゃったの?


「はっ! 攻城兵器の大量投入により、場内に進入! 羅憲殿が、城の扉を開いたそうです」


「援軍は、必要そう?」


「いえ……。魏軍は、大勢降伏したそうです。もう、魏国に忠誠を誓う意味もないみたいです。兵士の士気が地まで落ちました」


 兵士でさえ、魏国滅亡を悟っているんだな~。

 まあ、最盛期の2/3の領土を失ってんだし。


「食料援助をお願いね~」


「はっ!」


 一般市民は、苦しい生活をしていたはずだ。助ければ、反乱を防げる。統治も上手く行くだろう。


「それと、司馬師君は、どうしてる?」


「黄河を渡って、鄴に向かいました。攻城兵器は、木材なので浮きます。数日で到着するかと」


 陳留は、羅憲君が太守になってんだそうだ。

 ここで、決めるつもりなんだな。


「陛下! 青州兵が鄴に向かったら、趙統殿と司馬師殿も危ないかと」


 廖化君からだった。

 確かに、黄河を渡る必要はあるけど、徐州と近いな。


「廖化君。援軍に行ってくれる?」


 廖化君は、洛陽太守のかなり高い地位にいるんだけどね……。

 ここで、大将に任命して送り出すのは、降格になる。


「OKっす、お任せを。これで先帝の意思を継げます。関羽大将軍もお悦びでしょう」


 俺の周囲には、忠誠心の厚い人物しかいない。

 嬉しいのね~。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る