第46話 武昌
「武昌は、もう少しで落ちそうだね~」
もうね、数の暴力だね。
水軍も陸軍も、数で囲んで殲滅している。城の外に出て来た軍勢は、蹴散らした。
残りは、門を閉ざした城だけだ。
攻城兵器も、司馬昭君が送って来てくれた。それと長江の北の情勢だけど、合肥城は、抵抗を続けているらしい。今だと合肥新城かな?
支援物資は、司馬師君が継続的に送ってくれる。
「負ける要素は、ないかな~。問題は、時間と兵士の損耗率くらいかな~」
疫病は、発生する前提で動いている。疫病が発生したら、進軍停止して、落とした城で療養する予定だ。
「陛下! 柴桑が近いです。援軍が来るかもしれません!」
柴桑か~。長江の上流方向を見る。
だけど、水軍どころか陸軍も来ない。
多分、呉国の援軍はないかな。
「柴桑は、兵士をかき集めてると思うよ。一大決戦になりそうだよね」
「援軍は、ないとの判断ですか……。従いますが、警戒の兵は出させてください」
「うん、哨戒をお願いね~」
武昌の城は、魏延君を先頭に
攻め続けていれば、落ちると思う。武昌に籠る兵士数が分からないので、日数は計算できない。
「なんだろう、この言い知れぬ不安感は……」
ちょっと空気がピリピリしている気がする。
急ごうか……。
◇
俺は、まず軍を4つに分けた。
「朝、昼、晩で四刻(8時間)ごとに交代ですか……」
「そそ、3日働いて1日休みね」
「戦争中の兵士に休みですか……。怪我していない兵士を休ませるのですか……」
魏延君は、理解できないようだ。
休憩は大事よ? 戦時下でもね。
俺は、『三班四交代制度』を立案した。
今は理解されないかもしれないけど、実績を挙げればいいよね?
武昌は、大混乱に陥ったね。
なんせ、24時間攻撃され続けているんだ。
休憩は、こちらの交代時のみだ。
兵士は、何時も陽が昇っている時間は、緊張していた。だけど、今は16時間の休憩がある。
3日働けば、1日の休みも貰えるんだ。
動きが格段に良くなったよ。
比例して、武昌の兵士は、動きが悪くなって来た。
「4日目以降、動きが悪くなりましたな。城壁も残り一つです。明日か明後日には、陥落するでしょう」
武昌の城は、城壁が三枚の城だった。残りは、宮殿を護る一番内側だけだ。
武昌は、大きな城だったよ。
とりあえず、住民には出て行って貰う。戦火に巻き込みたくない。
「戦火を避けるために、柴桑方面以外に逃げてね~」
「「「いえ……。蜀漢国に移住させて貰えないでしょうか?」」」
んっ?
話を聞くと、孫権の滅茶苦茶な政治に、嫌気がさしているらしい。
この際、土地と家を与えてくれるなら、蜀漢国に移住したいんだそうだ。
「襄陽と江夏方向ならいいよ?」
「「「ありっす。流石、皇帝っす!」」」
こうして、武昌の住民の大移動が始まった。
司馬師君に応援の手紙を書く。
すぐに、返事が返って来た。
『大変なことを簡単に言わんといてください。だけど、なんとかします。司馬師より』
流石、俺の参謀だね。一番の相談者だ。
そういえば、史実の羊祜君も呉国の住民を晋国へ招いて、国力を上げていたね。
呉国の混乱は、農民まで被害を出していたみたいだ。
今は、孫権がボケているけど、その後も酷いしね。
酷い政治をする丞相が三代続いて、最悪皇帝の
「でも、この時点でダメだったのね……」
呉国の民草が、可哀相だよ。
◇
武昌は、戦法を変えてから5日目で陥落した。
太守は、討ち取られるまで抵抗して来たよ。
「被害はどう?」
「正直、軽微です。想定の1/10ですね。『三班四交代制度』……。陛下の兵法は、古の孫氏呉氏にも引けをとりませんな。この戦法は、後世に伝えられることでしょう」
てへへ。褒めてもなにも出ないよ?
つうか、結局のところ24時間攻撃されて、武昌の兵士が疲れちゃったのが原因だよね。
人間が寝ないで動けるのは、3日くらいが限界だよね。
戦争で、ドーパミンというか、脳汁ドバドバでも、限界は来る。
ディスクワークじゃないんだし。……ディスクワークでもアウトかな?
「食事する時間もなかったと思うし、相手の疲労を蓄積させる戦法だったのね~」
それと、住民が非協力的だったのもある。
計算外だったのは、武昌の太守が最後まで抵抗をして来たことかな。孫家の者だったかもしれない。
将兵の遺体は、丁寧に葬るように指示を出した。
ここで、司馬昭君から連絡が来た。
『合肥新城を落としました。合流できるように長江沿岸で待っちょります。司馬昭より』
「お……。合肥新城を落としたか」
寿春からは、
細かい進軍ルートが書かれていた。
それと、杜預君からも連絡が来た。
「ふむ……。羊祜君と杜預君は、柴桑に来るみたいだね」
襄陽からの援助物資を、持って来てくれるみたいだ。
江陵方面も落ち着いたらしい。運べなかった軍需物資を、持って合流してくれるみたいだ。
こうなると、数日待ってから合流した方がいいかもしんない。
ここで、司馬炎君と賈充君が来た。
「夏口を降しました。後顧の憂いは、取り除いてあります」
「ご苦労だったのね~」
二人の手を取る。
司馬炎君……、疑ってゴメンね。君は、信頼できる部下だったよ。処さなくて良かった~。
「杜預軍がもうすぐ来るので、魏延軍、司馬炎軍と合流して、柴桑を攻めよっか」
「「「OKっす!」」」
遅れて、
「陛下! 柴桑の情報を掴んできました!」
お!? お手柄かもしんないね。
「
「ごふっ!?」
やっべえよ、呉国最後の名将の二人じゃん。
それに、
「【赤壁の戦い】くらいの規模の戦いになりそうだね……」
主力同士のぶつかり合いだ。
絶対に負けない戦い方をしたいけど、今が最大のチャンスともとれる。
俺は、地図を広げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます