part Kon 7/25 am 8:34


 


「ゴメン。今日も 夏期講習 行かなきゃいけないから……。一旦 帰るね。また 夕方 来る」


 

 そう 言い残して 亜樹は 病室から 出ていった。

 

 脚は 相変わらず 不自由。

 だけど 心は スッキリ。


 亜樹が バシッと 怒ってくれて なんか 全部 リセットされた。


 亜樹が 本気で怒ってるの 見たのは3回目。

 あたしに 怒ったのは 初めて。

 ドンッって 顔の横に 手を衝かれたときには 本気でビビった。


 ママより 監督より 亜樹が怖い。

 だって 誰より真剣に あたしのこと 愛してくれてるから。



 亜樹が 言いたかったのは ツラいこと 苦しいことを 誰かの 何かのに しちゃいけないってこと。


 亜樹が 背負った業は ホント 重くて ツラくて 苦しいこと。

 亜樹も 迷ったり 戸惑ったり 立ち竦んだり 時には 逃げ出しちゃったり。

 いつも いつも 前向きに カッコよく 乗り越えられてるワケじゃない。

 だけど 亜樹は 誰かのせいにしたりは しない。


 ちゃんと 自分で背負って 自分で考えて 自分で決める。


 亜樹は あたしにも そうあって欲しいって思ってる。

 だから あたしが 罰って言葉で 何かのせいにしようとしたとき 怒った。

 ツラくて 苦しいことって 何かの罰とか 運命だとか 恨むんじゃダメ。

 そうじゃなくて どうしたらいいか 考えて 前に進もうって。


『今度のことも 時間は かかるかも知れないけど 瞳なら きっと大丈夫。心配なら 頼ってくれて大丈夫。上手に一人で歩けるようになるまで ボクが支えるから……』


 痴漢されたときも 同じようなこと言ってくれてた。

 そして それは 一言一句 嘘じゃなかった。

 あの日から ずっと 亜樹は あたしのこと守ってくれてる。


 だから

  

 

『……これからも 2人で いよう』



 って言われたときは


 

 ズッキューーーーーン!



 って 感じだった。

 

 まるで 少女マンガの主人公になったみたいな気分。

 壁ドンじゃなくて 床ドンだったけど。

 パジャマ姿でスッピンだったけど。


 

 でも 最高のトキメキ。


  


 バレーボールが 抜けた穴は やっぱ ポッカリ空いている。


  

 でも 亜樹がいる。

 ってゆーか いてくれる。


 なんにも 無い。

 でも 不安も 無い。


 これから2人で いろいろ 入れていくんだ。



 

 亜樹が カーテンを開けてくれて だんだん明るくなっていく街を 見ながら 色々 話した。

 亜樹が 一生懸命 話してくれる。

 それを あたしは うんうんって 言って聞いてあげる。

 

 いっぱい 笑った。

 こんなに 笑ったの 久しぶり。


 ときどき 手招きして ハグして ナデナデしてあげる。

 頬擦りしたり。


 なんか ホント 男らしくて カッコいいのに 見た目が 可愛い過ぎる。

 大好き。


 ついでに ちょっとお尻触ったら


『……セクハラ』


 って 怒った。

 

 いいじゃん……。

 別に。

 

 減るもんじゃなし。

 


 そんな感じで イチャイチャしてたら 耳元で 亜樹が 囁いた。

 思いっきり 低い声で。


 身体の奥が ゾクッとした。


 

『わかった……頼んでみる』


 

 って 返事した。

 

 もうすぐ 交代で ママが来る。

 落ち着いて ゆっくり話そう。

 …べっ 別に 悪いことするワケじゃないし。


 大丈夫 大丈夫……。

 ………。

 ……。

 …。

 

 

              to be continued in “part Aki 8/8 am 9:27”





 

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