part Aki 12/24 pm 4:05




 


 パパとママに引き留められてる間に なっちゃんも帰り支度を済ましたみたい。結局 講堂を出たときには いつもの5人で 歩くハメに。……プラス こーちゃん。この後 なっちゃんと 大聖堂のライトアップ見に行くらしい。文化祭からだから かれこれ3ヶ月くらい。相変わらず なっちゃんは こーちゃんと付き合ってることについて ボクに ほとんど話さない。こーちゃんの方は コーディネートのこと尋ねてきたり なっちゃんの好み聞いてきたり。今日のデートコースも こーちゃんから聞いた。とはいえ 具体的なことは こーちゃんも話さないから 2人がキスしたのか もっと 先までしたのかとか 全然 知らない。まぁ 生々しい感じするし あんまり聞きたくもないけど。

 今も なっちゃんは 美優姉と話してて こーちゃんは その横を歩いてる。手も繋いでないし。ホントに付き合ってんのかな? こーちゃんの妄想なんじゃ? とか 思っちゃうんだけど……。


 


「……ふーん。そーなんだ。で なんで 知り合ったの?」


「あー だから さっきも 言ったかもですけど 通学電車が一緒だったんで……」



 ボクはボクで サクヤから 尋問中。『ボク』って言っちゃった件については 聞いてこないけど ボクと瞳の関係について 訝しんでる。とにかく サクヤは ヤバい。5人の中じゃ(ってゆーか 学年の中でも)断トツに頭がいい上に 異常に 勘が鋭い。ウカツなことは 言わないように 気をつけないと……。



 正門のところに 瞳の姿が見える。詰所の壁にもたれて こっちに 小さく手を振ってくれてる。ボクも 手を振り返して 瞳のところへと急ぐ。



「瞳 ゴメンです。友だちが紹介して欲しいって ついてきちゃって…」

 


 まず 謝る。ホントに申し訳ない。2人で ゆっくりしたかったのに ややこしい事態に巻き込んでしまった。


 

「ううん。全然。それより コンサート お疲れ。スゴい綺麗な声で 感動したよ」



 瞳は ニッコリ微笑んでくれる。ソロを 瞳の前で歌えたのは ホントによかった。綺麗な声って言ってもらえたのも 嬉しいけど 残念なことに 今日の公演について 話すのは 後回し。ご飯のときか ムリなら 帰りの電車かな…。電話で ボクが あんなミスしなきゃ もう少し余裕あったハズなんだけど。

 


「あー ありがとです。……あの みんな。 こちら の紺野 瞳さん」



 〈友だち〉を強調して 瞳を紹介する。恋人って紹介できないってこと 瞳に伝わるだろうか? 前にも 話してあるし 大丈夫だとは 思うけど。



「はじめまして。……あの 紺野 瞳です。藤浜工業の2年生です」


「こっちが 細川 菜摘さん。あの…時々話したことある『なっちゃん』です。で こっちが……」


 なっちゃん サクヤ 美優姉 はるな…。順々に紹介していく。瞳は けっこう硬い表情。……瞳は 聖心館のこと 物凄いお嬢様学校って思ってるからな。みんなのことも 大金持ちの社長令嬢みたいに思ってるのかな? サクヤは ともかく あとのみんなは 普通に女子高生なんだけど……。緊張からか 瞳が ボクの方へ 手を伸ばしてるのに気づく。ボクに 手を繋いで欲しいみたい。はっきり言って ヤバいと思った。ボクは 学校の友だちと手を繋ぐなんて 絶対しない。ボクが スキンシップを避けてるってゆーのは 今の面子にとっては 公然の事実。

 

 ……でも 不安になってる 瞳の手を拒否するなんて 選択肢は 存在しない。


 いつものように 自然に手を繋ぐ。手袋越しの微かな温もり。初めて手を繋いだときみたいにドキドキする。あの頃は 繋いだ手から 好きだってバレたらどうしようって思ってた。今日も 同じ。手を繋いだせいで 2人が好き同士ってバレたら ホント 困る。『女の子同士で恋人同士?』『実は 中身は男で』……面倒なことになるのは 火を見るより明らか。ここはポーカーフェイスでやり過ごしたい。マジで…。

 ……だけど 結局 片想いって思って繋いでた頃と 本心も一緒かも。あの頃だって 本当は 瞳に『ボクの気持ちが伝わればいいのに』って思ってた。今も『ボクには こんな素敵な彼女がいるんだ』って みんなに わかって欲しいって想いは ある。まぁ でも 事無かれ的に 流しといた方が無難は無難。やっぱ ポーカーフェイスだな…。



 「紺野さんって『はじめまして』ですかぁ? 文化祭とかで 会ってません?」


「あたし 文化祭は 来れなかったんで…」



 美優姉が 瞳に話しかけてる。いつものことながら 全然 人見知りしない。ホントだったら ボクが間に入って 会話を取り持ったりしないといけないんだろうけど ボクは 人見知りで 口下手な上に 今は 下手に会話して ボロを出したくない。美優姉がいて マジに 助かる。坂の下まで 降りれば 一番厄介なサクヤは バスで帰る。そこから3分 公園東口に着けば はるなと美優姉は 逆方向。なっちゃんとこーちゃんは六ヶ杜に行くらしいから 光岡中央までは 一緒だけど カップルの邪魔したくないしとか言って 離れちゃう手もある…。あと数分 誤魔化せばいいだけ。……なんとかなる。そうすれば 5000円で 瞳とクリスマスデート。ご褒美が待ってる。もうちょっとの辛抱だ。



「美優姉 ウカツ過ぎ。紺野さんが アキの文化祭の絵のモデルなんだと思うけど?」


「Model? Surely yes! あの カッコいい眼 ソックリ!」


「題名も『瞳』だったしね。あたし 名前 聞いたとき ピンときたよー」


「普通 解るわよ。美優姉がニブイだけ」


 

 美優姉と瞳の会話に はるなとサクヤも絡んでくる。でも はるなは人見知りだから 直接 瞳には関わらない。あくまでも 美優姉や サクヤにツッコむスタイル。 かなり辛辣な言い方だけど 誰も気にしない。ホントは優しいのみんな知ってるから。……けど 瞳は ビックリしてるだろうな。言葉遣い エグいもんな。大丈夫かな?



「いやー あの絵の眼って スッゴい綺麗だったけど 瞳さんの眼って ホントにキレイだよー」



 サクヤが 瞳の眼を ジーっと見つめながら言う。確かに。瞳って どこをとっても ホント 綺麗だと思うけど やっぱ 眼が一等好き。でも あんまり見ないで欲しい。だって それ ボクのだし…。とか 身勝手なこと 考えてたら サクヤがニヤリと笑って トンでもないことを言った。



「あきに 聞いたんですけど 2人って 付き合ってるんですよね?」



 あ? なに それ? そんなこと 言ってない…。

 

 ……いや。違う。罠だ。サクヤ 瞳のこと 引っかけようとしてる。


 驚いた顔して 瞳が ボクの方を向く。目が合う。アイコンタクトで 罠だって 全力で訴えるけど そんなの通じるワケもない…。



「えっ!? 亜樹 しゃべったの?」


「おっっしゃ!ビンゴォ! 絶対 そーだと思った。あきが 手 繋いで歩くなんて 怪し過ぎだもん」


「……ううん。ボクは しゃべってない。……ゴメン。先に 言っとけば よかった。サクヤは 平気で こーゆーことするヤツなんだ……」



 ……にしても あり得ない。ボクら相手なら ともかく 初対面の瞳相手に カマかけるか? フツー……。どーでも よくなって 喋り方も男の子喋り。どーとでも なれって感じ……。

 ………。

 ……。

 …。


                        to be continued in “part Aki 12/24 pm 4:11”


 



 


 

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