part Aki 12/24 pm 10:43


  

 

 お互いの舌先を触れ合わせる。

 スゴく情熱的で でも ちょっとHな感じのキス。瞳にハグされながらの 夢見心地の時間。瞳は 長い腕で ぼくを包んでくれて 大きな掌で 色んなところを ぎゅっと抱き締めてくれる。撫でられるたび 幸せな気分だったけど 気がついたら お尻を撫でられてる。状況が飲み込めずに 混乱する。大混乱だ。痴漢に触られてるワケじゃあない。桜橋―藤浜間は 激混みだから ボクも痴漢にあったことが 3度ほどある。3回とも思いっきり足踏んでやったけど。でも 瞳は 痴漢じゃあ無い。どうしていいか 分かんなくて 頭の中が グルグル回った。触られてるのは 嫌だった。

 ……いや 絶対 嫌ってワケじゃ無い。相手 瞳だし。でも やっぱり 嫌ってゆーか 恥ずかしいってゆーか 嬉しい気持ちじゃなかった。はじめは 色々 撫でてくれてたから お尻も たまたま 撫でてくれてるだけって 思おうとした。けど 瞳の手は ずっとお尻。もちろん 揉んだり 擦ったりとか そんなヤラシイ触り方じゃない。ただ 優しく撫でてくれてるだけ。でも 触られてるところが 暖かいってゆーか 熱いような感じ。感じるまでは いかないけど ドキドキしてるのも 事実だった。自分の感情が 整理できないうちに 更なる追い打ち。



「亜樹。好き。大好き。……あ あの…さ。あの…さ。亜樹の 胸 触っても いいかな……?」



 耳のすぐ側 大人っぽい ハスキーな声。ゾクゾクする。でも 胸 触るとか いいわけない。ボクは 男の子なんだ。だけど そのことも 。その上で 『触りたい』って言ってるんだ。この前 カラオケでも『触りたい』って言われた。あの時は 断ったけど そのことも 瞳は 覚えてるハズ。それでも 瞳は 聞いてきた。



「ひ 瞳は 触りたいの…?」



 声に出して確かめる。 

 


「……や 優しくするから…」



 ボクの問いには 直接 答えず 瞳は 触ること 前提の答え。やっぱり 嫌だ。他の女の子に『女の子』身体してるって思われるのは ボクにとって 耐え難いこと。恥ずかしくて 悔しくて 涙が 出そうになる…。『ヤメテ』って言わなきゃ…。……でも 2回も お願いされたのに 2回とも拒否したら 瞳 傷つくかも…。



「……好き。……大好き」



 囁くような 瞳の声。ズルい。そんなこと言われたら 拒絶なんて できない。ボクだって 瞳のことは 好きなんだから。でも 『嫌だ』って気持ちもホンモノ。緊張で 身体が強張る。瞳の手が ゆっくりと ブレザーの下に 挿し入れられてくる……ホント 恐る恐るって感じで。ってゆーか 瞳は 本当に 震えていた。そして 触れたか 触れてないか わかんないくらい そっと ボクの胸に 掌を 当てた。


 

「……ゴメン。痛くない? 大丈夫?」



 瞳が 震える声で 尋ねてくる。痛いワケない。だって 触れてるかわかんないくらいの 触り方なんだから。……でも 瞳の気持ちは 痛いくらい伝わってくる。瞳も怖いんだ。ボクに拒絶されたら どーしよう? その迷いが このソフトタッチ。ボクのこと〈男の子〉ってわかった上で ボクの身体に触れたいって 思ってる。夏頃 瞳が まだ ボクのこと 女の子って思ってたときは 強引な感じがして 泣くほど嫌だった。でも 今は 瞳の優しさが 分かる。女の子の身体だって思われるのは やっぱり嫌だけど 瞳の気持ちを 受け入れてあげたいとも思う。

 


「うん…。……大丈夫」



 ボクの声も震える。心臓がドキドキする。恥ずかしくて恥ずかしくて 顔が真っ赤になってるのが分かる。だけど 瞳のためなら 我慢できる。瞳の震える指が ブラウス越しに ボクの胸に触れるのが分かる。



「亜樹 カワイイ……。好き。大好き……」



 恥ずかしくって 悔しくって 瞳のこと 大好きで 頭の中がグルグル回る。そして 瞳の大きくて暖かい掌。ブラウス越しに ゆっくりとボク胸をまさぐる。優しい手つきだけど 感じるほどじゃないし 感じたくもない。


 でも 突然 背筋にビクビクと電流が走る。


 熱くて柔らかいモノが ボクの首筋に押し当てられてる。ゾクゾクする感覚。うなじに触れる 瞳の唇。ボクが今まで感じたことのない 妖しい感覚。濡れた瞳の舌が ボクの首筋をゆっくりと移動する。ナメクジかカタツムリに這われるような嫌悪感とも快美感ともつかない 奇妙な感覚に悲鳴を上げそうになるけど 声は 出さない。



「……ゴメンね。タクシー来たら 絶対 止めるから」



 湿った吐息が ボクの耳に吹き入れられる。さっきより もっとゾクゾクする。舌先が ボクの耳穴に触れる。悲鳴が出そうになるのを 必死に堪える。……い いや。…嫌なワケじゃない。嫌ってゆーんじゃないし 気持ちいいってワケでもなかった。ただ 瞳に愛撫されてるって感覚は スゴくあって その感覚で 背筋は ゾクゾクしっぱなしだった。そして その感覚の中で 胸を触られるのは それは やっぱりなんてゆーか 正直 凄い快感だった。ボクが〈あき〉の胸を揉むときの方が ずっと感じる。だって 瞳の触り方は どこまでも優しいから。でも 瞳の掌は の身体に触れていた。瞳の唇 舌 指がに直接 触れる。を直に愛してくれてる。その強烈な実感。〈あき〉じゃなくてを愛してくれてるって 感覚にクラクラする。

 

 瞳は ボクの耳を執拗に 攻めてくる。舐めたり 甘噛みしたり しゃぶったり…。胸は 相変わらずのソフトタッチ。別に 耳で感じるワケじゃないけど おっぱいも ずっと微かに刺激され続けてるから なんか 焦らされてるみたいで 思考が どんどん ふやけていく……。『もうちょっと おっぱい強く揉んで欲しい…』そんな考えが 少しずつ 思考に混じり始めてる…。……ううん 違う。ボクは男の子。瞳に女の子として愛されたいワケじゃない…。


 

「――――んっ」



 ちょっと 強い甘噛みに 驚いて 声が漏れる。自分でも 驚くほど 甘い声。ボク やっぱり 感じちゃってる? ……嫌だ。ボク 男の子なのに…。でも 瞳が愛してくれてるのは で 感じてるのも 。……〈あき〉じゃあ 無い。でもでも こんな風に 愛されるのは ボクが 信じてる〈男の子〉の姿じゃ……。混乱を続ける ボクの脳内に 瞳が 更なる混乱因子を送り込んでくる。ボクの耳朶を 口に含み じゅるりと 音を立てながら しゃぶり立てる。そして 胸を触る指に力が入る……今度は ホントに感じちゃうくらいに。

 

 


「――ンッ」



 吐息が 漏れる。瞳が ボクの乳首を 摘まんで指先で転がしたんだ。目の前がチカチカするような ダイレクトな快感。ボク 瞳に 感じさせられてる……。恥ずかしくって 涙 出そうで……でも その感覚さえ ボクの脳内で 快感に変換されていく。だって 瞳が ボクのこと 愛してくれてるって 信じることができるから。瞳は ボクのこと男の子だって分かって愛してくれている。そして ボクの女の子の身体を愛してくれている。そう。ボクは で 身。全部 ひっくるめて〈ボク〉。



「……ゴメン。痛かった?」



 瞳が 優しく聞いてくれる。その 優しい声が 嬉しくて……。素直に 今の 気持ちを伝えることが できる。

 


「ううん。……も もうちょっと 強くしても 大丈夫…」



 瞳は 耳の後ろに 舌を這わせ 指にぎゅっと力を入れて応えてくれる。瞳の大きな手が ボクのおっぱい 揉んでくれてる。すっごくすっごく恥ずかしいんだけど 自分でするより 何倍も何倍も気持ちいい…。



「――――ンンッ」



 恥ずかしいから 喘ぎ声を 噛み殺そうとするんだけど 我慢しきれない。ボクの甘い吐息を聞いて 瞳が もっと情熱的に 愛撫してくれる。瞳の息も上がってきてる。『瞳が ボクに 欲情してる』それは 異様な感覚だった。ボクが 瞳のこと メチャクチャにしたいって 思うみたいに 瞳が ボクのこと メチャクチャにしたいって思ってる……。こないだのカラオケでの 瞳の悩乱した 矯態。ボクも あんな風に 狂っちゃうんだろうか? それは 足がすくむような 奈落へ墜ちるような 恐怖。でも 瞳に墜されるなら そして 瞳と一緒になら 墜ちてみたい……。

 


「――ん…瞳 好き。もっと 強くしても 大丈夫だから……」


 

 瞳の耳に 囁くように オネダリする。瞳の指が躍動し ボクのおっぱいを揉みしだく。唇は 首筋。腕は 腰をグッと抱き締めてくれる。瞳に触れられた部分 全てが 燃えるように熱くなる。気持ちよすぎて おっぱいだけで イっちゃうんじゃないかって思うほど。


 

「――――ヒッァ…ン…… 好き…… 愛してる」



 甘い声が漏れる。自分の声とは 思えないような 高くて艶っぽい声。自分の声にさえ 興奮してしまう。もっと 瞳に 啼かされて みたい もっともっと ワケわかんなくして欲しい……。そんな想いが ボクの全てを占拠した瞬間 瞳の身体が グッと強張り そして クタンと力が抜ける。



「……ひ 瞳?」

  

「……アハハ。大丈夫 大丈夫…。やっぱ あたし こらえ性のない スケベ犬だわ…。亜樹の声 H過ぎて イっちゃった……」



 ……えっ? なに? もう おしまい? ボク まだ…色んな気持ちが 交錯するけど 瞳は ボクに身体を預けて ふにゃんと甘えた感じ。頭を撫でてあげると ちょっと嬉しそう。でも もう終わっちゃった雰囲気。……いや ボク まだ 満足して無い…。もうちょっと触って イカせて欲しいかも…。けど 確かに さっきまで 触られるの嫌だって 思ってたのも事実で 今さら『イクまで 愛して欲しい』とか オネダリするとか 恥ずかしくてできるワケもない。もし これが お泊まりするんだったら もう一度キスして とかも あったのかもしれないけど カッコつけて『帰る』って言っちゃたし……。でも まだ 身体の奥に 燠火おきびが揺らめいていて また すぐに 燃え上がりそうなそんな感覚。もう一回 首筋にキスしてくれないかな…? そうしてくれたら ママに怒られようが パパに怒鳴られようが どうなったって 瞳と一晩 一緒に過ごしちゃうと思う。


 そんな期待と 裏腹に 無情にも スマホが鳴動し タクシーが到着したことを 知らせてくれる。もう一度だけ 期待を込めて 瞳を見るけど 瞳は 優しく見つめ返してくれるだけ…。



『ご予約の 宮村様の携帯電話で お間違いないでしょうか? こちら星光タクシーの……』 


「……はい そうです。宮村です。すぐ行きます。よろしくお願いします」



 スマホを切る。そう。ボクは男の子。瞳とは 周りも応援してくれる 真面目な交際をするんだ。それが 結局 2人のためなんだ。瞳も分かってくれてること。


 

「ごめん。タクシー来たから 帰るね…」


「うん。今日は ありがと。楽しかった」


 

 ボクは 自分から 瞳に口づけをすると 立ち上がり 部屋の出口へと向かう。



 ……いいんだよ。自分で決めたんだから。


 

 ………。

 ……。

 …。

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