ウロウロ······クリスマスデート

part Kon 12/24 pm 4:37



「……ゴメンね」



 地下鉄の駅で 2人で手を繋ぎ 列車を待っていると 亜樹が謝ってくる。



「ん? 何が?」


「……いや。みんな うるさかったし。色々 聞かれたりして 嫌じゃ なかった?」


「ううん。ぜ~んぜん 亜樹の学校での様子とか聞けて面白かったし」


「そう? それなら いいけど…」


「それにさ…。今まで 付き合ってることって ナイショだったじゃん。今日さ バレちゃったけどさ 逆に『あたし こんな素敵なカレシがいるんです』って 自慢ってゆーか ノロケってゆーか ができて ちょっと嬉しかった」



 いや マジで。

 友だちのカレシ自慢とか 羨ましいなって思ってたから ちょっと満足。

 あの菜摘って子にも 見せつけてやったし。

 ……ここまで言うと やっぱ あたしの方が嫌な女かな?



「けっこう みんな おめでとうって雰囲気で 聞いてくれたから ボクも 安心した。もっと 周りに 退かれるんじゃないかって 心配してたんだけど…。なっちゃんが 女同士だって ショック受けてたみたいだったし…。なんか わかってもらう いい方法ないかなぁって思うんだけど……」



 やっぱ ニブチン。

 あの子が ショック受けてたのは そこじゃないと思うんだけど。

 

 でもな…。

 たぶん 亜樹は なっちゃんのこと 親友って思ってるんだし。

 あんま 悪口も言えない。



「あたし達が 本気で 付き合ってるって わかってもらえるといいね」


「そうだね」



 亜樹 優しいから ちょっと心配。

 あの子 あっさり 引き下がるかな……。



 大きな音を立てて 地下鉄が ホームに入ってくる。

 クリスマスイブの夕方。

 車内は 光岡中央の繁華街へ 向かうカップルや 家族連れで けっこう込み合っている。



「……あのさ 瞳。この後 時間 大丈夫?」


「うん。別に 予定ないよ」



 せっかくのクリスマスイブだもん。

 ルミナス辺りで イルミネーションとか 見に行くのも いいかも…。

 恋人と過ごす 初めてのイブ。

 ちょっとくらい 恋人らしいこと したいかも。

 まあ ジャージに部活カバンなんだけど…。



「今晩 ……とママ ……行って 遅くなるみたい……。それで…… だから……んだけど……。……でさ 瞳と 一緒に……たいんだけど…… どこがいい?」


 

 周りの音が うるさくて よく聞き取れない。

 例によって 亜樹の喋り方は ゴニョゴニョしてるし……。



「……ゴメン。よく聞き取れない…。もう一回 言って」



 亜樹は 耳に口を寄せて 話してくれる。

 やっぱ 聞き取り難いけど…。


 

「パパとママ 遅くなるみたい…… だから……一緒に……しよ? どこ がいい?」


 

 えっ?

 お父さんとお母さん 遅いんだ?


 それって『今日 家に 親 居ないから……』ってヤツだよね…。

 で どこでしたい?って。

 

 亜樹は あたしの 眼を見て ニコニコしてる。

 なんで こんな優しい笑顔で こんなイジワルできんのかしら?


 こ こないだは そりゃ カラオケで しちゃったけど…。

 ……そ そんな 変な場所で 何回もするのは ヤバ過ぎる。


 亜樹の部屋がいいに決まってる。

 亜樹も それは たぶん わかってる。


『あ 亜樹のお部屋が いいです。そっ そこで いっぱい Hなイジワルしてください…』


 きっと こんな感じで おねだりさせたいんだ…。 

 でも 周りに人がいっぱいいる 地下鉄の中で 言えるワケない……。


 だけど 言ったら ご褒美…。

 列車の中で 触られるのって『痴漢』…。

 4月は 泣くほど怖かった。


 でも 亜樹にされたら 異常に興奮しそうな気がする。

 そんな 夢 見たことある。 


  

 ……ダメだ。

 ちょっと濡れてきた…。

 いつから あたし こんな変態に なっちゃったんだ…。

 

 

 地下鉄は 光岡中央に到着する。

 ドアが開くのを待って 亜樹の手を引き 柱の陰へ。

 ハグしてる風に 顔を耳に近づけ 恥ずかしいオネダリ…。

 

 血が昇って グルグル回るアタマん中で 次の行動を考える。

 

 いくらなんでも 列車の中は ムリ。

 …で でも 柱の陰でなら できるかも。

 死ぬほど 恥ずかしいけど。


 ご褒美のためなら たぶん やる。

 ってゆーか やる。


 期待と恥ずかしさで オマタは どんどん 潤んでくる。

 堪えてるつもりだけど 呼吸も速くなってる…。

 


「…お 赤い…? 大じょ…ぶ?」



 亜樹が 心配そうな顔して 目を覗き込んでくる。

 亜樹のせいで こんなことになってるって わかってるクセに…。

 ホント イジワル…。

 

 ……でも 亜樹のイジワルな笑顔にドキドキちゃう ホントにダメな あたし。


 地下鉄は 減速をはじめる。

 もうすぐ 三岡中央。


 おねだりして ご褒美。


 アタマの中は そのことでいっぱい。


 ドアが開きかける。



「……降りたら まずは イルミネーションツリー。 で その後 ご飯。それでいい?」


「……えっ?」


「いや だから この後の予定だってば。さっきから 顔 赤いし ちょっとボーッとしてるし 大丈夫? しんどい? もしかして 熱?」



 ええっ?

 亜樹って さっきから 晩ご飯の話してたの?


 あっ あたしの 勘違いってこと?


 さらに 顔が赤くなる。



「だっ 大丈夫 大丈夫。ぜんぜん 元気。しっ 心配しないでっ」


「ホントに? 春高 近いし 無理しちゃダメだよ?」


「大丈夫だって! それより イルミネーションツリーでしょ? 行ったことないし いいんじゃない?」



 恥ずかし過ぎる。

 さっさと違う話題に しちゃいたい。


 亜樹と会ってるとき いつもいつもエロいこと 考えてるワケじゃない。

 今まで通り 学校やバレーの話したり 絵の話 聞いてあげたり。


 でも ふとした瞬間に 低い声で嬲られたくなる。


 あの日から お互い カラオケでのことについては 一切 話さない。

 でも お互い 絶対 意識はしてる。



 ……たぶん。


 

 あたしだけが エロいワケじゃないハズ…… 

 ………。

 ……。

 …。



                        to be continued in “part Aki 12/24 pm 4:48” 

 

 



  

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