part Kon 12/24 pm 8:12



 


 七海堂を出たあと 亜樹は あたしの右腕に 腕を絡めて ピッタリ寄り添ってくれてる。

 占いの結果が けっこう 気になるみたい。

 確かに『身動きできない』ことが ブレイクスルーにみたいなこと 言われた。

 

 ……でも それって 別に 物理的にぎゅっとして 動けないようにするって意味じゃないと 思うんだけど?

 賢い亜樹だし それくらい解ってるハズ。

 だけど さっきから 腕を絡めて あたしの側を離れない。

 


 腕を絡めて歩くのって 初めてだけど 身長差の関係で 亜樹があたしのうでに 腕を絡める形。

 ルミナスでも 感じたけど 今日の亜樹は スッゴく女の子っぽい……。

 七海堂出た後は もう一段 女の子っぽい感じ。

 一応 車道側 歩いてくれてるし いつも通りっちゃ~いつも通りなんだけど……。


 今の 亜樹は なんか 凄く儚げ。

 いつもの カッコつけて 気を張ってる感じがない。


 初めて会ったときのことを思い出す。


 4月に 桜橋のホームで 亜樹に出会ったときの 第一印象は 華奢で可憐。

 『守ってあげたい』って 思った。

 そのあと 亜樹に痴漢から 助けてもらって その日から『亜樹に守ってもらう』のが 当たり前になった。


 勇気があって 頼りになって 賢くて。

 そして『男の子』で…。

 あたしの 理想の彼氏。

 

 でも 亜樹は 本当に 驚くほど 小さな身体。

 腕を組んで 身を寄せると その実感が湧く。


 いつもは 身体が小さいなんてこと 感じさせないくらい あたしを しっかり包み込んでくれてる。


 

 だけど 今日は たぶん 疲れちゃったんだろうな……。


 

 聖歌隊のコンサート。 

 なっちゃんの件も 亜樹にとっては 色々 頭を使わないといけなかっただろうし…。


 それだけでも 大変なのに あたしのワガママで クリスマスデートすることに。

 予定外のデートだったのに ちゃんとエスコートしてくれて イルミネーション見せてくれた。

 今日も ホント カッコよかった。


 カッコつけるのは 亜樹にとって『男の子』でいるために必要なこと。

 それは 亜樹の生き方だから 素直にカッコいいって思ってたらいい。

 キザすぎて気恥ずかしかったり 空回りしてて カワイイ感じのときも あるけど 基本 胸キュン。

 ホント カッコいい。


 

 ……でもな。

 今みたいな時間もいい。


 初デートのとき言ったけど カッコつけてるのって 絶対 疲れる。

 ふっと気を抜いて『男の子』やめてる時間があってもいい。


 男の子でも 女の子でもない 曖昧な『亜樹』。

 たぶん 亜樹自身も気づいてない 亜樹の一面。

 でも 言ったら きっと背筋 伸ばして『男の子』に戻っちゃう。

 亜樹は そういう人。

 

 そっと 見守っていよう。

 あたしだって 亜樹のこと守ってあげたいんだ。


 あたしも ぎゅっと腕に力を入れて 亜樹に身を寄せる。

 亜樹の温もり。


 男の子でも 女の子でも どっちでも いいんだ。

 あたしが好きなのは『亜樹』。

 それだけ。



「大丈夫 大丈夫。9時まで もう少しあるし ちょっとでも 一緒にいよ?」


「うん」



 亜樹と一緒に 桜橋の商店街を駅に向かって歩く。

 9時に帰るって 約束したから あと30分くらいは 亜樹といれる。

 

 どーしよう?


 寒いけど 公園かな?

 うちの裏だと いまいち落ち着かない。

 人目を気にせず ちょっとイチャイチャしたい。


 そこの銀行の角 曲がったところに 小学生のころ よく遊んだ公園がある。

 この時間なら 誰もいないんじゃないかな?



「ねぇ 亜樹。そこ曲がったとこに 公園あるんだけど そこで ちょっと喋ろ?」


「うん」



 亜樹は あたしの肩に 頭を寄せたまま 小さく頷いてくれる。

 大抵 あたしの方が よく喋って 亜樹は聞き役ってことが多い。

 とはいえ さっきから亜樹は『うん』しか言わない。


 

 やっぱ 疲れて 眠いのかな?



「眠い? もし 疲れてるんだったら 家 帰る?」


「……えっ? ううん。大丈夫。瞳と一緒がいい」



 そう言って さらに身体を擦り寄せてくる。

 スゴく甘えた感じ。

 ちょっと嬉しいけど いつもの亜樹と雰囲気違うから ちょっと心配。


 公園 行って ベンチで寝ちゃったりしたら ヤバいかも。

 いくら 亜樹が軽いといっても 抱きかかえて 運ぶなんて さすがにムリ。


 

「じゃあさ ウチ来る? 公園だと けっこう寒そうだし…」


「うん」



 やっぱ『うん』しか言わない。

 大丈夫かな?


 まあ ウチなら 万が一 寝ちゃっても 凍え死んだりはしないだろうし 安心っちゃー安心だけど……。

 ………。

 ……。

 …。



                       to be continued in “part Aki 12/24 am 10:32”

  

  








 

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