part Kon 12/24 pm 7:15



「あたしは 亜樹とずっと一緒にいたいです。だから 2人のこれからを 占ってもらえますか?」



 七海さんに 占って欲しいことを告げる。

 言葉にして『ずっと一緒に』って 言った瞬間 亜樹が 左手を握ってくれる。

 同じ気持ちなんだって わかったし 胸がキュンってなった。


 それで 十分。

 って気もするけど。


 まあ 占いって 気になるっちゃー 気になる。


 雑誌とかの 血液型占いとか星占いのコーナーって なんか読んじゃうんだよね。

 けっこう 信じてる方に入るのかな?

 そこまででも無いと 思うんだけど…。


 ちなみに あたしの血液型は O型。

 おおらかで大雑把。

 几帳面なとこも あるとは 思うんだけどな…。

 まあ 基本当たってるとは 思う。

 ……いや でも あたし 怒りっぽいしな。

 おおらかも 怪しいかも。

 あんま 当たってないのか?


 5月10日生まれの おうし座。

 意志が強くて頑固。

 こっちは 当たってる気がする…。


 

 亜樹は 確か AB型って言ってた気がする。

 プライド高くて天才肌。

 これは 亜樹にピッタリって感じ。

 

 誕生日は10月17日だけど 何座になるんだろ?

 おとめ座とか てんびん座とか そんな感じだったと思うけど よく知らない。

 見た感じは おとめ座。

 ……言ったら 怒ると思うけど。

 


 亜樹って 賢いし けっこう理屈っぽいから 占いなんて ハナからバカにしてんのかなって思ってたけど『ボクも興味あるし』って言ってた。

 ちょっと意外だったけど そー言えば アンティーク好きだったり ちょっとロマンチストなところも あるもんな。

 タロットカードのことも 七海さんに質問してた。

 カードの種類も 何個か知ってるみたい。


 まあ 亜樹も楽しんでるみたいだし。

 恋人と2人で 占いってゆーのも 恋人同士っぽいっちゃー恋人同士っぽい。

 あたしの『彼氏できたら……』シリーズには入ってなかったけど。


 そう考えたら1500円くらい安いもの。

 

 ……いや。

 やっぱ 1500円って 大金だよね…。

 恋人といるって楽しいけど なんだかんだと お金がかかる……。



「そろそろ 始めよっか? 使って欲しいデッキとかあるかしら?」


「デッキって 何ですか?」



 亜樹が聞いてくれる。



「カードのセットのこと。特に希望がないんだったら 七海のお気に入りで占うけど?」


「じゃあ それでお願いします」



 よくわかんないし 七海さんにおまかせする。



「それじゃ この子を使うわね」



 気がつくと 七海さんの手の中に カードの束がある。

 えっ いつの間に? って感じ。

 たぶん 手品みたいな感じで 隠してあったのを サッと出したんだろうけど 突然 手の中に現れたみたいに見えた。


 さっきのピアノも そうだけど 自然な感じで 不思議なことしてくるから 本物の魔法使いみたい。

 ホント 不思議な人。


 


「このタロット『愚者』フールって 言うんだけど……」



 一枚のカードを 表向きにして 渡してくれる。

 カードには『棒を持った旅人』みたいなイラスト。



「このタロットは『偶然』を表すの。さっき 貴女は 運命は自分で掴むものって 言ってたけど それでも『偶然』っていうのはあるわよね。突然の突風で 予定が狂っちゃうみたいなことって 実際あるでしょ? そんな『偶然』を表すタロット」



 そう言いながら 手元のカードを裏向けたまま扇形に広げる。

 黒地に渋い金色と銀色の線で波模様。

 S字に並べられた金色の七つ星。

 

 

「その『偶然』を 姫様の手で デッキに差し込んで欲しいの。適当に入れてくれてもいいし 7番と8番の間とか そんな決め方でもいいわ」



 言われるままに だいたい真ん中の辺りに カードを差し込む。



「次は シャッフル。両手でテーブルいっぱい使ってグルグル混ぜちゃってちょうだい。占って欲しいことを想いながら混ぜてね」



 亜樹と ずっと好き同士でいたい。

 本気で思う。

 

 優しいし 新しい自分に気づかせてくれる。

 もっと一緒の時間を過ごしたい。

 

 結婚ってゆーのは できないのかもしれない。

 だけど 兄貴とユキさんみたいに 一緒に暮らすとか 今すぐは ムリでも そんな未来が待ってれば いいな……。


 そんな想いを込めてカードを混ぜる。

 

 

「お嬢さんも 混ぜるの手伝って 貴方の想いも タロットに込めてちょうだいね」



 亜樹も カードを混ぜてくれる。



「最後に 七海が混ぜるわね」



 七海さんが カードをテーブルを いっぱいに使ってグルグルと混ぜる。

 カードの裏の 金色の星が 渦巻きを描き まるで 銀河みたいに見える。

 その銀河が 徐々に縮んでいき 最後に 七海さんの手の中に収まった。


 

「――――――gh――――――yh――――――fr――roth」



 聞き取れないような小声で 呪文かお祈りみたいなのを呟いたあと 七海さんは カードを並べ始める。


  

 まずは 六角形に6枚。

 続けて Y字形に4枚。

 合わせて10枚。



「これが姫様の生命の樹セフィロト。さあ どんな運命が 待っているのか ちょ~っと覗いてみましょうか…。まずは1枚目」



 六角形の頂点 あたしに一番近いカードを表にする。

 ライオンを抱きしめた女の人のカード。

 上下が逆になってる。



「1枚目は王冠ケテル。貴女の願い。タロットは『力』ストレングスの正位置」


 

 ああ。

 七海さんから見てで 上下見るんだ。



「意味は……っと 恋愛だから『熱烈な恋愛』『強い絆』ってとこかしら。『ずっと一緒にいたい』って言ってたものね…。まぁ 姫様の言ってた通りって感じかしら。次 いきましょうか……。2枚目… 3枚目っと……」



 2枚目は あたしから見て左。

 3枚目が右。

 カードは 女の人が 壺から壺へ 水を移し変えてるのが2枚目。

 3枚目は 抱き合った男の子と女の子。

 3枚目は こっちを向いてるから たぶん逆向き。



「2枚目が叡知コクマー。過去の状況。3枚目が理解ビナー。現状ね。で タロットが『節制』テンパランスの正位置と『恋人』ラヴァーズの逆位置か…。『節制』は『自制心』とか『友情』とかだから はじめは友達って思ってたけど 気がついたら徐々に愛情が深まってみたいな感じ…? しかも 両片想いだったんじゃない? 違うかしら?」



 ……ヤバい。

 ちょっと 心臓がドキドキしてきた。

 怖いくらい当たってる。



「あら? お嬢さんは ちょっと違う感じかしら?」


「ボクは 一目惚れでした」


「そうなんだ? 夏 会ったときも 片想い中だった感じ? 姫様は まだ 友達って思ってたの?」


「どーでしょう…。好きになりかけぐらい…だったかな。なんか まだ 色んなことが邪魔してて…って感じだったと思います」


「そっか。あのあと お互い気持ちを伝えあったって訳ね……。で 晴れて恋人同士になったんだけど 現状『恋人』の逆位置ね。『恋人』のタロットは もちろん『恋愛関係』を表すんだけど 逆位置だからね~。……なんか 不安な感じ? 浮気して ケンカしたとか?」



 ……いや。

 浮気は されてない。

 ただ あたしが 勝手に心配してるだけ。



「ボッ ボク 瞳 一筋です。ってゆーか みんなに言われるんですけど ボクって そんなに 浮気っぽく見えます!?」


「ん~。浮気っぽくは 見えないけど モテそうな雰囲気は あるから。男の子相手でも女の子相手でも 愛想よく 親切にしてない? 貴方は そんなつもりじゃなくてもね 相手の子は 貴方のこと 好きになっちゃうの。恋人的には 心配よねぇ?」


「そっ そーなんです。亜樹って ホントに 誰にでも 優しいから なんか 心配で……」


「ほらね? お嬢さん 親切も ほどほどにね。ちょっと冷たいくらいで ちょうどいいのかもよ。……でも それって お嬢さんのハナシよね。姫様は 浮気とか 言い寄ってくる人とか いない?」



 自信を持って首を振る。

 まったく 心当たりが無い。



「ふーん。……違うのか」



 七海さんは ちょっと思案顔。



「恋人には なったけど なんとなく不安って感じかしら? さっきから ちょっと見てる間でも 手を握ってくれたり 目配せし合ったり お嬢さん 姫様のこと とっても大事に思ってるの伝わってくるし 七海は 大丈夫だと思うけど。もし キスがまだ とか Hがまだ とかで心配してるんだったら 焦ることないのよ? まだまだ 若いんだから…。……でも ど~しても 心配なら 自分から 積極的になるのも ありかもね~」



 ……キスも Hも 一応 済ました。

 ただ あのカラオケでの一件は 強烈過ぎて いまいち整理しきれてない。


 少なくとも あたしが想い描いてた 恋人関係からは 程遠い…。


 でも 亜樹の低いイジワルな声を 想像するだけでゾクゾクする あたしがいる。

 

 恥ずかしくて スゴく嫌なんだけど 期待しちゃったり…。

 思い出して オナニーしちゃったり……。

 

 最近 脳みそ エロエロ。

 ホント ダメなあたし。



「まぁ『過剰なセックス』なんて 意味もあったりするから ホドホドにね~」



 七海さんが あたしの目を覗き込みながら 悪戯っぽく笑う。

 ……まさか 毎晩 オナニーしちゃってるの バレたりしてないよね?

 ………。

 ……。

 …。



                    to be continued in “part Kon 12/24 pm 7:20”


 


 

  


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る