part Aki 11/23 pm 3:45





 

「……うん。しばらくはデートできないと思う」


「あー そうなんだ…」


「年明けすぐに春高バレーあるから こっから先 土日は全部 練習試合か遠征。冬休み終わったら 修学旅行あるし…。クリスマスもさ 会えないかも……ってゆーか 会えるけど デートするほど時間取れないって感じになると思う。」



 ボクの作品を見てもらった後 一応 グリームスバーグ展を見て 今は 弁天町の喫茶店『ノエル』。オススメってゆー美味しいチーズケーキを食べながら 次のデートの相談したら なんと 次のデートは1月の末…。瞳にとって 春高バレーで全国大会に出るってゆーのは 一世一代の大イベントだから しょうがないのは しょうがないんだけど……。2ヶ月もデートできないとか けっこう 寂しい。



「……そっか。クリスマスも忙しいんだ」


「ゴメン。どっか行きたかった?」


「ううん。そうじゃなくて 聖歌隊でさ クリスマスコンサートやるから…」


「そうなんだ…。どこで? 何時から?」


「いや そんなスゴいイベントじゃないんだ。学校の講堂でやるだけだし」


「何時から?」


「3時」



 瞳は スマホとノートを見比べて なんか色々確かめている。



「その日の 午後なら 県商と練習試合だから 3時半になら ギリギリ聖心に着けると思う。3時半だと もう終わっちゃってる? 大丈夫かな?」


「いや 一応 45分くらいの予定だから やってるのは やってると思うけど あんまり無理しないで」


「ううん。亜樹が歌ってるとこ 見たい。絵は 今日 見せてもらって感動したし 歌も聴いときたい。亜樹だって あたしの試合 全部 見にきてくれたじゃん」



 ボクの絵で 感動したとか言われると 面映ゆい。でも さっき 瞳は 絵の前で ちょっと涙ぐんでた。瞳は ホント 嘘つけない性格だから ホントに感動してくれたんだ。そのこと 自体に感動して ボクも泣きそうになった。絵 描くの続けた方がいいって励ましてもくれた。自分では 画家よりグラフィックデザイナーの方が 性格に合ってるとは 思うけど 確かに 自分の気持ちを絵筆にのせる時間は持ち続けたいな。それは 素直に そう思えた。

 


「ボクも 春高バレー 見に行きたいんだけど お金ないし……ゴメン。さっきの10万円があったら 見に行けたんだけど」



 星光市から 東京まで 片道で1万円以上かかる。夜行バスなら もうちょっと安く行けるって こーちゃんが言ってた気もするけど 1人で夜行バス乗るなんて ママが 許してくれるとは 思えない。

 


「大丈夫 大丈夫。春高バレーだよ? TV中継あるんだよ? 小さい頃からさ 春高バレー出て TVに映るの夢だったんだよね~。インターハイはTV中継ないし やっぱ春高バレーが 最高だよね」



 よく知らなかったけど 春高バレーは TV中継があるらしい。TVで 瞳のこと見るとか 不思議な感じだけど ネットで試合結果だけ知るよりは 断然いい。



「あたしさ 中学の修学旅行 京都だったから 東京 行ったことないんだよね。たぶん 遊ぶ時間なんて無いとは 思うんだけど それでも ちょっと楽しみ」



 東京か…。昔 家族旅行で連れてってもらったことはある。それなりに 楽しかったけど あの頃は 正直 よく分かんなかった。今なら 行ってみたい お店とか 美術館とか 何箇所かあるけど。

 とは言え 星光市は けっこう都会だから 色んなお店あるし ネットで 何だって買える時代だから そこまで東京に憧れはない。でも やっぱ『星光 Girl's Rock Orchestra』だったら 人気 出なかっただろうなって気は する…。そこは やっぱり 東京なんだよな。

 瞳は 東京ってだけで 目をキラキラさせてる。さっき TVに映るかもってゆーのでも テンション上がってたし 芸能人に会ってみたいとか そーゆー感じだろうか…?

 


 

 

「冬休み終わったら修学旅行って言ってたけど どこ行くの?」


「……星北町で スキー合宿」



 さっきまで ニコニコだった 瞳が渋い顔。



「先輩達のハナシだとさ お土産売場さえない 宿舎に詰め込まれて 朝から晩まで ひたすらスキーさせられるんだって…。ヤレヤレって感じ。亜樹んとこみたいにカナダとは 言わないけどさ 同じスキーなら 北海道くらい連れてって欲しくない? 県内で修学旅行って アリエナイじゃん」


「あー そういや 瑞樹兄さんも そんなハナシしてたかも」


「あたし スキーってしたことないし……」



 おおっと? 運痴のボクだけど 実は スキーは 苦手じゃない。清瀧におばあちゃん家があるから 小学生のころは 毎冬 滑ってた。兄さん達ほどじゃないにしても パラレルくらいは 滑れる。基礎の基礎くらいは 教えてあげられるかも。カッコいいとこ見せるチャンス。



「ボードはさ 毎年 行ってるから けっこう滑れるんだけど」



 あ。ダメだな。運動神経 抜群の瞳だもんな。雪の上 初めてとかゆーなら ともかく スノボ 毎年滑ってるんなら 半日も練習したら ボクより上手くなるに違いない。やっぱ 運動関係で 瞳にいいとこ見せるのは 不可能に近い…。ボクの特技は 絵と お化粧 あとは 歌。あんま 男らしい感じじゃないけど しょうがない。男らしいとか 拘ることないって さっき 瞳にも 怒られたし。絵は見てもらったし 次は 歌かな? クリスマスコンサート来てくれるって言ってたけど ギリギリみたいだし ムリは ホントして欲しくない。となると カラオケかなぁ? ボクは カラオケ大好きっ子だけど 瞳は どうだろう?



「まあ そんな感じだから お土産は 期待しないでね…。東京でなんか買ってくるし」


「いや ホント お土産とかいいよ。そんなことにお金使わないで。それよりさ 優勝旗 持って帰ってきてよ」


「それ いいかも! 最高の東京土産だね。なかなかキビシイとは 思うけど 今のメンバー 最強だし 上手くやれば 可能性は あるかも」



 ………。

 ……。

 …。

 


 

             to be continued in “part Aki 11/23 pm 5:44”




 

 


 

 

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