part Kon 12/24 pm 4:54


 


 亜樹に手を繋いでもらって ルミナスに向かう。

 ルミナスって あんま 来ないから よく知らないけど 中央回廊のイルミネーションツリーは 有名だから TVで見たことある。

 クリスマスイブに 自分が そんなデートスポットに 恋人といるってゆーのが 夢みたい……ジャージ姿ではあるけど。


 改札を出て エスカレーターを乗り継いで 上の階へ。


 ぎゅっと手を握って 人混みの中 半歩前を 歩いてくれてる。

 混雑してるし 身体 小さいから 前 行くの大変だと思うけど『ボクが エスコートしなきゃ』とか 思って カッコつけてんだな…。


 ……ホント カッコつけ。


 ジャージ姿のデカ女のために そんなことしなくても いいのに…。

 

 でも カッコつけてこその〈男の子〉。

 カッコつけてこその亜樹だもん。

 その姿にキュンとくる。



「……間に合うかな」



 亜樹が ボソッと呟きながら 時間を 確認する。

 そして 歩く速度を さらに上げる。


 何の時間 気にしてんだろ?


 質問する間も無く長いエスカレーターを 半分 駆け足みたいに 急ぐ。



 エスカレーターを登りきったところが ルミナス名物の 巨大吹き抜け『大回廊』。

 

 50m x 300m 高さ7階分が 全部吹き抜け。 

 外の光を たっぷり 採り込むガラス張りの大回廊は 前 昼間来たときは 太陽の光で 明るかった。

 

 だけど 今は 冬の夕方5時。

 もう かなり暗くなってる。

 12月の冷たい外気が肌を刺す。

 

 その中央に ビル3階分くらいありそうな クリスマスツリー。



「よかった! 間に合った」



 亜樹は こちらを振り向き 嬉しそうな顔。

 


 カラーーーーン…… カラーーーーン………



 大回廊中に 響き渡る鐘の音。

 鐘の音が 5回。

 余韻を残して 鳴り終える。

 


 気がつくと ツリーの天辺に 金色の星が輝き始めてる。

 そこから 光の粒が零れ 枝を伝い 大回廊の床や 壁面を光で埋め尽くしていく。


 幻想的で ロマンチックな光景。

 あちこちで 歓声や拍手が起こる。



「……綺麗」


「うん。毎日 夕方5時に 点灯されるから……」


「……ありがと」


「ボクも 見るの初めて。こないだ クラスの子が スッゴく素敵だったって言ってたから…。……一緒に 来れてよかった」


「うん」



 あたしが頷くと 亜樹は 繋いでた手を 下に引っ張る。

 身を屈めた あたしのほっぺに 軽くキス。


 

 ちょっとムズ痒くて キュンってして でも 唇じゃないのが 残念で…。

 

 

 亜樹が お姫様扱いしてくれて 気がついたら じんわり 幸せに浸ってる。 

 たまんなく 優しいから ホント 何でもしてあげたくなる。

 

 

「ママとパパ お鮨屋さん行くからって 晩ご飯代に 5千円くれたんだ。瞳と ご飯でも行ったらって…」

 

「うん。一緒に 晩ご飯 食べよ? ……ちょっと 待ってて。ママに 連絡しとくし…」



 ……。

 …。



「……お待たせ。オッケーだって。『9時までには 帰ってきな』って言われたけど…」


「よかった。1時間ちょっとあったら 帰れるから ちょっとゆっくり お店見たりできるね。どこか 行きたいとこある?」



 ルミナスって ホント 知らないから 特に 行きたいお店とか 思いつかない。

 でも したいことは ある。


 さっき 電話してたとき 周りを見回すと 何組かのカップルが キスしてるのを見た。


  

 ……あたしも したい。


 

 ここは ルミナス大回廊の イルミネーションツリー前。

 今日は クリスマスイブ。

 

 

 TPO的に 恋人同士が ちょっとぐらい イチャついても 許されるシチュエーション……だよね?



 亜樹の腰に手を回し グッと抱き寄せる。

 ホントは 抱き寄せて欲しかったけど 身長差が あるからな…。


 亜樹は ビックリした顔してたけど そのまま 唇を奪う。

 

 暖かくて 柔らかな感触。

 久しぶりのキス。


 好き。

 大好き。


 誰にも盗られたくない。

 愛し合ってるって 見せつけたい。


 色んな想いが 渦巻く。


 

 少し抵抗してた亜樹も 背中に手を回して 唇をグッと 押しつけてくれる。


 ……舌 挿入れたい。


 でも 我慢。

 さすがにマズい。


 しばらく そのままの姿勢で 唇を重ねる。



「……ねぇ…アレって 女の子同士……?」



 そんな声が 風に乗って聞こえてくるけど 気にしない。

 あたし達は『恋人同士』だ。


 でも 亜樹は 気になったみたい。

 唇を離すと あたしの手を曳き 下りエスカレーターへ。



「……あんなの 気にすること無いって。あたし達『恋人同士』でしょ?」



 下りエスカレーターの上で 亜樹に言う。

 亜樹は ちょっと困り顔。



「あー まぁ それは そうなんだけど……」


「いーじゃん。恋人同士なんだし 堂々としてようよ」


「あー いや。そっちじゃなくて。ほら ボク 今日は制服着てるでしょ? 噂だとさ クリスマスの夕方って 生徒指導の先生達が 繁華街をパトロールしてるらしいんだって…。目立つ場所で キスは ちょっとヤバかったかも……」



 ……マジで?

 生指の先生が そんなことすんの?

 お嬢様学校って 大変…。



「……ヤバい?」


「たぶん 大丈夫だとは思うけど…。……ちょっとドキドキした」



 亜樹は うつむき加減で 羞じらい顔。

 カワイイ。

 やっぱ スゴい美少女。

 なんか 久しぶりに『女の子』っぽいって思った。


 なんかな~。

 亜樹の男の子っぽいとことか あたしが『女の子』でいられる感じとかが 好きの一番の理由。

 ……なんだけど この亜樹の『女子の夢の結晶』って感じの可憐な外見ってゆーのも やっぱ 好きなんだよな~。

 

 白くて細いうなじ。

 薔薇色の頬。

 小ぶりな耳。

 栗色のツインテール。


 亜樹が 決めることではあるけど できたら 女の子らしい格好 続けて欲しいな…。

 まあ 元がいいから ショートヘアにパンツスタイルとかでも 美少年風で いいかもしれないけど…。

 

 でもな。

 やっぱな。

 お人形みたいな感じが いいんだよね。

 

 ゴスロリとか…さ。

 勧めてみたら 怒るかな……?

 ………。

 ……。

 …。

 

 

                        to be continued in “part Aki 12/24 pm 5:04” 

 




 

 

 



 


  

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