クリスマスデート in 七海堂

part Kon 12/24 pm 5:43


 


「……さっき カバン 探してたけど いいのあった?」


「んー。いまいち」


「値段で悩んでるんだったら ホント プレゼントにするよ?」


「……いや まあ デザインかな。もうちょっと 探してみるよ。今日は やめとく。プレゼントも なんか欲しいモノあったら言うね。そのかわり 亜樹も 欲しいモノあったら言って? 安いのしか 買えないけどさ…」


「わかった」



 結局 何も買わずに お店を出る。

 ルミナス5Fは さっきより 人が増えて ごった返すような雰囲気。



「かなり混んできたね。これじゃ レストランとか ムリっぽいし 下のフードコート 行ってみる?」


「ん。わかった」



 亜樹に手を繋いでもらって エレベーターやら エスカレーター乗り継いで 1Fへ。

 ……ところが フードコートも すし詰め状態。



「……ゴメン。スゴい混んでる」



 亜樹は ヘコんだ声。

 あたしの気分の浮き沈みには 大人の対応で 落ち着いてられるのに。

 お店に入れないのは ショックみたい。

 エスコート失敗とか 思うのかな?

 カッコつけだからな…。


 あたし あんま 気にならないけど。

 一生懸命 エスコートしようとしてるところが カッコいいし。

 


「混んでるんだったらしょうがないじゃん。違うとこ 探そ?ってゆーか いっそ 桜橋まで 帰らない?」


「桜橋?」


「うん。さっき 聖心の前でケーキセット食べたから そこまで お腹 空いてないしさ。桜橋まで帰って 七海堂か マアム ドーナツとかさ。最悪 ウチでもいいし…」



 クリスマスにお好み焼って…って思うけど 毎年 それなりに お客さん入ってくれてるもんな。

 

 お金 ちゃんと払ったら お客さんだし。

 パパやママに 文句言われることも ないハズ。



「七海堂って そーいや 入り口のボードに 日替りランチとか載ってたね。食べたことないけど…」


「前 見たときはさ チキンのハーブ焼とか 書いてあったよ。美味しそうじゃない?」



 いつも行くときは 学校帰りだし ランチ食べてる人 見たことないんだよね。


 七海さん こだわり派っぽいし レンジでチンしただけの ピラフとか レトルトカレーとか そーゆーんじゃないと思うんだけど…。


  

「そうしよっか…。ここで 何分も待って ハンバーガー食べるくらいなら 七海堂の方が 絶対 いいよね。もし ダメなら 烈風伝 行こ」


「ウチ ラストオーダー10時半だから 絶対 大丈夫 大丈夫」



 ………。 

 ……。

 …。



 桜橋に着いたのは 7時前。

 クリスマスソングの流れる 桜橋の商店街を抜けて 裏通りへ。


 路肩の雪を避けながら 七海堂を目指す。


 ガス燈風の街灯に照らされて 七海堂は 静かに立っていた。

 店の前庭に植えられた 樹木はイルミネーションでキラキラ光ってる。

 けど 店の灯りは消えてるように見える。


 ……ダメかな?


 と 思ったその時 店の扉が開き 七海さんが 姿を現す。



「あら? こんばんは。こんな時間に 珍しいわね~」


「あの もう 閉店ですか?」



 亜樹が聞いてくれる。



「あらあら。こんなカワイイお客さんが 2人もいるんだもの。もちろん 営業中よ~。どうぞ 中に入って? すぐに 電気 点けるから~」



 カウンター近くのテーブル席に通される。



「お姫様 今日もジャージだけど ちゃんと女の子だってわかってるわよ~」



 七海さんが あたしの目を覗きながら 悪戯っぽく笑う。

 夏休みのときの あたしの大ボケは まだ 忘れられては いないみたい…。

 なんか ちょっと 顔が赤くなる。


 そーいや あのときの『男の子なのに 女の子みたいなカッコして』ってゆーセリフ…。

 あたしに 言ったんじゃないとしたら 亜樹に言ったってことだよね…。

 亜樹の中身が 男の子だって気がついてたってことなのかな?

 それとも なんか 別の意味が あったのかな?


 ……ホント 不思議で 謎な人。



「クリスマスイブのこんな時間に 2人で お出かけなんて ホント 仲良しね~。冬休みも アンティーク漁り?」


「あー いや そーゆーワケでもなくて…。ルミナスのイルミネーション見に行ったんですけど ルミナス スゴく混んでて ご飯 食べ損ねたんです。日替りランチとか この時間でも 食べれます?」


「もちろんよ~。日替りランチじゃなくて日替りプレートだから。今日はクリスマスメニューの『ハーブチキンのロースト』。ちゃ~んと2人分 残ってるわよ~」



 来るの分かってたんだからってゆーような雰囲気。

 でも 店の電気 消してたんだし ホントは もう店 閉めるつもりだったハズ…。

 しゃべり方が ってゆーか 全てが マイペースだから なんか引き込まれちゃう。

 やっぱ 魔女。



「日替りプレートって いくらですか?」



 引き込まれてる場合じゃあない。

 ちゃんと 値段 確かめておかないと…。

 ……ここは〈七海堂〉。

 アリエナイ値段の可能性が 十分に あり得るもん。



「ハーブチキンにサラダとスープ。で パンかライスが選べて 食後に紅茶かコーヒーが付いて 1200円。ケーキ付きのセットは1500円。せっかくのクリスマスだし ケーキセットにしたら~?」


「あー じゃあ ケーキ……」



 亜樹が ケーキセットを頼みかけるけど 割り込む。


 

「ケーキ無しのセットで」



 ケーキ さっき 聖心の前で食べたし。

 さっきのケーキセットも800円くらいした。

 ここで 1500円も使って 1日2000円越えとか 贅沢し過ぎ。


 亜樹は 晩ご飯代は 出してくれるつもりみたいだけど それでも 無駄遣いはダメ。

 ケーキ 1日2個とか 食べ過ぎだよね?


 だいたい 亜樹って スゴい少食なのに ケーキ2個とか入るのかしら?


 カッコつけは しょうがないけど 見栄張って 無駄遣いするのは 見張ってないと……彼女として。



「あら? そ~お? 七海の特製ケーキなんだけど? 美味しいわよ~?」


「ありがとうございます。でも あたし達 おやつにケーキ食べちゃったんで…」


「了解~。じゃあ ハーブチキンプレート2つで。コーヒーにする? 紅茶?」


「紅茶で」


「あたしも 紅茶で」


「よね~。ウチでコーヒー頼む人 あんまりいないから~。で 紅茶も 3種類から 選べるんだけど……」

 

 ………。

 ……。

 …。 


 

                        to be continued in “part Aki 12/24 pm 7:07” 

 

 

 


 

 


 

 

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