part Aki 12/24 pm 5:30


 


  ゆっくり目を見て話したら 瞳は 少し安心してくれたみたい。 

 話してるときも 表情がクルクル変わるから ホント 可愛くて ハグしたり キスしたりしたくなって ちょっと困った。少し怒った顔してたら しゅんとしてるし 別れ話 ほんの少し匂わせただけで もの凄く 怯えた顔。そして 何回でもデートしようって言ったときの 嬉しそうな顔。……なんか 失礼だけど ワンちゃんみたいって思っちゃった。犬 飼ったこと 無いけど 懐いてくれてたら こんな感じかも。


 ……こないだ カラオケでは『スケベな牝犬』って 自分で口にしてた。


 アレって 現実に起こったことだったんだろうか? 日にちが経つにつれ ボクの妄想の産物だったんじゃあって思い始めてる。あまりに過激で ホントに自分がやったこととは思えない。瞳も 一切 そんな話しないし。……いや。わかってる。ボクの暗黒面が暴走したんだ。妄想では アレくらい普通。もっと 酷いことしたこともある。あの後 瞳が 一切 あの話しないのは やっぱり 怒ってるのかな? パンツ返してくれたときも『これ』って 言って紙袋 押しつけて そっぽ 向いてたし。お互い 恥ずかし過ぎて話題にできない感じ。付き合って3ヶ月弱 いきなり2人の黒歴史になっちゃってる。



 予定は してなかったけど クリスマス公演の後 瞳と こうして 2人の時間を過ごせてる。ロマンチックなイルミネーションを見て そこでキス。ぷちケンカ。今は ウインドウショッピング。ご飯は まだだけど ちょっとはHなことも してみたい…。こないだみたいな過激なヤツじゃなく 嬉し恥ずかしぐらいで 全然 大丈夫。……いつものことながら 凡庸な 男子高校生のボク。

 とはいえ こないだみたいに カラオケで…ってゆーのは ムリかな? キスしたり ちょっと触りっことか できそうな気もするけど。……ダメだな。絶対 こないだのこと 思い出して テンパっちゃって 暴走しそうな気がする。どー考えても運がよかっただけで あんなこと2回もするとか ヤバ過ぎる。学校に通報でもされたら マジに退学もの。2人で 人目 気にせず イチャイチャできる場所って どこだろう? ラブホって『女の子同士』でも 入れるのかな…? ……いや。お金無いけど。あと 恥ずかしいし。……制服も着てるしね。



 

「瞳 このお店 入ってみない? ライブ行ったとき かぶってたマリンカラーのベレー ここで買ったんだ。もしかしたら いいものあるかも…」



 5Fのお目当てのお店 セレクトショップ『pastel chimeパステルチャイム』。

 GWに みんなで来たとき 見つけた ハイティーン~大学生向けのお店。値段も 安くはないけど 手が届かないってほどでもない。けっこうオシャレだし 瞳も 買わないにしても 楽しめるハズ。ってゆーか クリスマスなんだし 5000円あるし 瞳に なんかプレゼントするのも いいかも。



「へー あれ 可愛かったよね。ここで 買ったんだ? あっ コレとか 可愛いかも……」



 瞳も 気にいってくれたみたいで 店に入って行く。ボクも続いて中へ。決して広くはない店内に ところ狭しと 服やら 雑貨やら アクセサリーが並べられている。……このちょっとした 宝探し感が この店の魅力かな。



「このポシェット可愛い……」



 瞳は マネキンが提げた革のポシェットを チェック中。



「ポシェット欲しいの?」


「んー。いや あたし いつも リュックじゃん? デートのときくらい女の子らしいカバンとか あってもいいかな~って こないだから思ってて…さ。でも このサイズじゃ 何にも入れらんないよね。ちょっとしか 入んないのに 7000円とか 高過ぎ」



 モノ入る量とカバンの値段って 関係なくない?ってツッコミ入れる前に 瞳は 別の場所へ移動。瞳を目で追うボクの視界に 手書きのPOPが 飛び込んでくる。


『Merry X'mas プレゼントにピッタリ!二人の愛の証 ペアリングSALE中』


 POPに誘われるように 店の奥のガラスケースに 足を運ぶ。ペアリングか…。指輪って したことないけど ペアリングなら 結婚指輪と一緒で お互いに結ばれてる感は あるかも。瞳が 不安にならないようには いいかな? 値段は 一番安いので 8000円。財布の中には確か4000円くらいあったハズ。デート資金の5000円と合わせたら 買えないことはない。……晩ご飯はコンビニおにぎりとかになっちゃうけど。ただ この8000円のヤツは デザインが 今ひとつ 安っぽい…。どうせなら 気に入ったデザインのヤツが いい。でも ちょっといいかも…ってヤツは 24000円とか そんな感じ。お年玉つぎ込まないと 手が出ない。


 どーしたもんかと 思案していると 瞳が横にやって来た。



「ペアリングじゃん。……なんか 恋人同士って感じだよね」



 瞳も まんざらでも なさそう。プレゼントするって言ってみようか?



「一番安いのが 8000円で 1人4000円か…」



 瞳は いつものことながら お金の心配をしてる。まぁ すぐに春高で 東京行かなきゃだし お金 いくらあっても足りないハズ。ボクは ともかく 友達に 東京みやげも 買わなきゃいけないらしいし…。



「5000円 もらったし ボクが出そうか?」


「えっ? でも ペアリングって お互い 贈り合わなきゃ 意味なくない?」



 えっ? 言われてみると そんな気もするけど…。でも 結婚指輪って 男の人が買うんじゃないの? パパとママは そうしたハズ……たぶん。ボクって 古いのかな? ちょっと混乱する間に 瞳は 話を続ける。



「それにさ ペアリングって 憧れるんだけど 指輪って ちょっと困るんだよね。バレーするとき イチイチ外さないと いけないじゃん。せっかくだったら ずっと身につけてられる方が いいかな。ピアスとか…」



 ピアスか…。可愛いとは 思うんだけど 痛そうなんだよな……。



「ってゆーか 亜樹の学校って 校則厳しいんでしょ? 指輪とか ピアスとか ダメじゃないの?」


「あー そうだね。アクセサリーは 一切禁止。髪ゴムも 黒か茶色だけ可って世界だし」


「せっかく 買っても つけられないんだったら 寂しくない?」


「あー 確かに…。でも クリスマスだし 何か 瞳に プレゼントしたい」


「えっ? 嬉しいけど あたし 今 お金無いし 返せないから いいよ」


「……こないだの エプロンドレスのお返しできてないし。なんか プレゼントさせてよ。お返しとか また 今度で いいし」



 お誕生日プレゼントってことで エプロンドレス もらっちゃったけど アレって なんだかんだで10000円くらい かかってるハズ。縫製とかも 瞳 独りでやってるし プレゼントは気持ちだとは思うけど なんか ちょっとは 返しておきたい。ボクは 瞳と違って ハンドメイドで なんか作ってあげたりできないし。



「……絵 描いてくれてたじゃん? あたしが エプロンドレス頑張ってるとき 一生懸命 描いててくれたんでしょ?」



 ……ああ。そーいや 描いてたな。でも アレって 瞳用じゃなくて 自分用だし。



「大丈夫 大丈夫。イルミネーション見れたし 素敵なクリスマスに なったから」 



 そう言って 瞳は ニッコリ微笑んでくれる。ドキッとする。やっぱり 笑顔が一等好き。そう。クリスマスに 彼女とルミナスで デート。これ自体が もう完全に奇跡。ボクは 瞳に感謝してもしきれない感じ。ホント 晩ご飯ぐらい奢らなきゃ……まぁ パパが出してくれてんだけどさ。

 ………。

 ……。

 …。




                        to be continued in “part Kon 12/24 pm 5:36”

 

 


  



 


 

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