深川損料屋月見堂　～片見月～

歴史時代ジャンルといえば、王侯貴族や戦国武将、幕末の志士などにスポットをあてた物語が多いように思います。

私は、そうしたお話も大好きですが、こちら『深川損料屋月見堂　～片見月～』を読ませて頂いて、こんな風に市井の人びとの人間模様を描いた物語も素敵だなと、しみじみ感じました。


この物語は、武家の一人娘だった千世が、縁あって江戸深川に店を構える損料屋「月見堂」の主となり、そこに持ち込まれる数々の事件・騒動を奉公人や月見堂に集う人びとと一緒に解決していくお話です。

人物描写が巧みで、そこに生きる人びとの喜怒哀楽、ささやかな優しさなどを感じながらテンポよく物語を楽しむ事ができます。
 
江戸…続きを読む

主人公である千世は武家の娘でありながらもその身分から降り、損料屋の女主人として逞しく暮らしています。
お店で働く人との絆や町人とのやりとりが丁寧に描かれていて、物語全体を通して人情が節々に感じられました。
物語の展開がとても上手く、いくら読んでいても飽きません。
ぜひ最後まで読み切っていただきたい作品です。

　主人公の千世は、武家の一人娘から江戸時代の深川にある損料屋（レンタルショップ）月見堂の女主人。千世は物だけでなく人手も貸し出す店を切り盛りしながら、さまざまな事件に巻き込まれてゆきます。千世の過去や家族、そして許嫁の迅之介との進みそうで進まない……読者をやきもきさせる恋愛模様や、千世を助ける奉公人たちなど、個性的な登場人物たちも魅力的です。
　十五夜の月、十三夜の月、揺れ動く千世の心は夜ごと形を変える月のよう。折に触れて語られる月見の場面が心に染入る物語です。

傷ついた心になんとか蓋をして、前を向いて生きていきたい女の子の気持ちを応援したくなります
主人公を助けたいと思う周囲の人々のひとりになってしまいました
登場人物が魅力的で、それぞれの思いや人生を想像させられました
時代の雰囲気も感じながら楽しく読めました