第32話 寝取られてからが純愛。

「なに、深刻な顔して。そんな顔してもイケメンにはなんないわよ?(笑)」


「うっせぇ、このイケメン喰いイーター


「まぁ、否定はしないけど。なに、もう私が恋しいわけ? 仕方ないなぁ〜〜(笑)」


「何がどうなったらそうなるんだ? それよか、何だよその髪〜〜束ねろよ、鬱陶しい」


「なによ、何時までも自分の女扱い? 仕方ないから――」


「なに、ちょいちょいとしてんの? いや、結構なことやらかしたよ、?」


「えっ⁉ はい! 斎藤ですが?(笑)苗字イジリ好きね〜〜もイジる?」


「下ネタかよ⁉ クソビッチ!」


「いや、クソビッチにはクソビッチで存在意義ってあるもんよ?」


「いや、クソビッチ否定しろよ! なんか後味悪いだろ」


「はははっ、いや、こんな感じでも絡んで欲しいし〜〜(笑)」


「絡まれたいなら髪くらい何とかしろよ」


「ないもん、ゴムとか」


 コイツの口からゴムとか言われたら、他のゴムを想像するのは俺だけじゃないはずだ。


「前買ったシュシュは?」


「あぁ……流石に着ける資格ないなぁって……しおらしいビッチってどう? 需要ある?」


「まぁ、どうだろな。無くもないだろ。その買ってやろうか?」


「えっ⁉ いや、流石にお金で体は……梶君なら元カレということでお金はいいけど?」


「いや、なんの話? パパ活? そんな話してないだろ? だいたいお前そこまでしてねぇだろ? 誤解生む発言は控えなさい。元カレからのお願いです」


「からかっただけ〜〜で、なに買ってくれるの? 寝取られた元カノに?」


「どいつもこいつも寝取られネタ好きだね? けっこう辛いんだけど」


「ふむふむ。ここは逆転の発想として、寝取り返すのはどうよ? 私フリーだよ? あと、秘密は厳守します! 寝取りヘビーローテーション(笑)」


「ハハッ……笑えない。にシュシュ買ったげようかという話。嫌ならいい」


「えっ⁉ マジ⁉ 欲しい! うれしい! えっ、いつ? 今日? あっ、今日さ、めちゃ可愛い下着なんだけど? 見てみる?」


「いや、お前。シュシュ買うのに下着関係ないでしょ? また停学したいの? バカなの? 今日はダメ」


「じゃあ、明日? 明日ね? ねぇ、梶君ってどんな下着好き?」


「いや、下着関係ないでしょ? しないから! 元カノでしょ? ってか、この会話おかしいだろ、普通に」


「まぁ、いい! とりあえず内緒にしとく? 佐々木とかマジでヤバいでしょ? アレ? これって佐々木とか委員長から寝取ってる感じなの?」


「なに共通の秘密作ってんの? それにまだ、誰とも何にもしてませんが?」


 すると志穂はなんか思いついたのか『ちょ、ちょ、ちょ』と近寄ってきて囁く。


(梶君。それって、私のために童貞してくれてるの? もう、ちょー可愛いんですけど〜〜)


(いや、お前キャラ変おかしいだろ? もう、誰ってレベルなんだけど?)


(いやいや、もうこうなったら開き直って攻めるしかないでしょ! もう、浮気なんてしない! !)


(いや、なんで『たぶん』なの? そこせめて絶対にしてよね? 面白いからいいけど……)


(じゃあ、じゃあ、明日は放課後デートね? ねぇ、ねぇ、ラブホは停学になるから、今住んてるハイツならいいよね? あっ、明日だよ?)


(もう、志穂さん。黙ってくんない? あ、安全日なの? マジか……)


 ***

「そんな訳で『ビッチシスターズ』緊急招集を掛けたわけだけど」


 女子の体育の授業。球技と名ばかりの温いクラス対抗ソフトボール。


「長女どこ行った? 関さん何やってんのよ」


「どこって、和田っち。めっちゃいい顔してピッチャーしてんじゃん。なに、あの本格的なフォーム。オリンピック目指してるのか? あんな球誰が捕れる?」


「ミキティーナ。仕方ないわよ、脳筋ってのは手加減出来ないから。うわっ、ホントあの娘ちょースマイルだわ、なんでバレー部なのに変化球まで投げれんの? まぁ、どっちにしても、身長で決めた長女だからいいわ、いなくてさて……さて旧姓澤北さん」


「委員長。結婚して名前変わったみたいな言い方やめて。斎藤です」


「そう、ダーリンから聞いてると思うけど、あなたを渋々ながら、ビッチシスターズに迎え入れることにしたわ。瀬戸内海のように広い私の心に感謝して」


「和田っち。瀬戸内海は海としては割かし狭いからな?」


「さすがミキティーナ。よくお分かりで、そう私は心ミジンコなの。だから、ミジンコを自称する私が佐々木さんに代わり澤北さん改め、斎藤さんに物申すの! ん? 古賀さん。挙手までしてどうしたのかしら?」


「あの……重大な用と言われ来たのですが……もしや私もその……ビッチシスターズの構成メンバーなのですか?」


「何を言ってるの? あなたは大勢のクラスメイトの前で、自慰行為を披露したじゃない。もう、あなたのその勇気に感服した私は名誉顧問の称号を与えたいくらいよ。とりあえず誰からも愛される末っ子ね?」


「色々言いたいことはありますが、話が長くなりそうなのでいいです。はぁ……」


「ねぇ、ねぇ、委員長~~つぎ私打順なんだけど?」


「呑気ね、佐々木さん。だからあなたは『なんちゃって彼女』なんて言われて私の恋のライバルにもなり得ないの。知ってる? あなたがさっきから無駄にブンブン素振りをしている間に、真正ビッチ斎藤が明日ダーリンをデートに誘ったの。放課後デート」


「えっ⁉ 梶と⁉ あっ、でもアイツのことだから断るでしょ。平気平気〜〜」


「その梶君から誘われたんですが? 悲しみに沈む元カノの私を放っとけないんでしょうね……なんていうの? 焼けぼっくりに火がついた? もう、新たな恋の火が燃えたぎる予感しかしないわ」


「なんだろ、委員長。澤北じゃないわ、斎藤って反省とかないの? なに、名前変わったら寝取られ無罪なの? っていうか、なんで私じゃなくて斎藤を放課後デート誘うの? ねぇ、ねぇ、委員長〜〜」


「あぁ……なんて面倒臭い。特別顧問なにかいい案ないの?」


「えっ⁉ わ、私ですか⁉ その、私はその……恋愛関係にはからっきしでして」


「うん。見ててわかる。一応あなたの恋愛手腕に探りを入れただけ。これ以上恋のライバルいらないから。まぁ、私最強ですけど?」


「それがねぇ〜〜梶君たら私が心配で心配で仕方ないみたいよ、もう! 相変わらず可愛いんだから♡」


「いや、木田とラブホ行ったヤツがなに言ってんだか。斎藤っちさぁ、少しくらい立場わきまえろよ」


「ミキティーナ。それは重々承知してるわ。でも、恋を忘れさせるのは恋。この中で1番恋愛強者は誰? 私よ、私。佐々木に聞いてみて。どれだけのイケメンを手のひらで転がしてきたか」


「佐々木……そうなの?」


「それはもう、……でも、これって恋愛強者なの⁉ じゅ、純愛じゃなくない?」


「純愛なんて、本人同士が純愛って認めたら純愛なの。いや、むしろ寝取られてからが純愛?」


「えっ⁉ ミキティーナ、どうしよ⁉ 私寝取られなきゃなの⁉ 今のままじゃ私純愛じゃないの?」


「佐々木。お前黙ってろ。なにまんまと口車に乗ってんだ? それよか打順だろ? 下手なボケかまして三塁に走るなよ?」


「しゃ、来い!!」


 意気揚々とバッターボックスに入った佐々木だったが、関さんの剛速球がすっぽ抜けて、敢なくおケツにデッドボールを受け保健室に搬送された。

















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