第5話 僅かな違和感。
最近、些細な嘘を梶君についた。木田君と校外で何度か会った。木田君は学年で目立つくらいのイケメン。
だけど、これが私の性なのか残念なイケメン、薄っぺらいイケメンしか引き寄せない(泣)見てる分にはいい。だけど、話すと梶君の半分も面白くない。
一緒にいても退屈な存在。じゃあ、なんで嘘までついて会うのか。答えは、求められたいから。よくわかんないけど、自己肯定感低めなのかもね。
実のところ、梶君じゃ物足りないかと言えばそんなことはない。彼との出会い、交際はなんか色々な発見に溢れている。今までのってホントに恋愛?
そんな風に思わせてくれる1歩1歩な感じ。でもその1歩が小っちゃい。大事にしてくれてるのはわかる。でもなんだろ?
居心地はいいんだけど……なんかショーケースに飾られてる感。清純派みたいな見かけになってるけど、もっとグイグイきて欲しい! もっと雑に扱って欲しい!
道具のように!
失礼。
まぁ、人のせいにする訳じゃないけど、最初の相手、イケメンの車持ち大学生の時、色々そういう恋愛的なのをかっ飛ばしたせいだ。
結局するんでしょ?
そんな感覚が染みついてる。梶君が好きなのは変わらない。でも、1年間我慢したイケメン喰いの虫が騒ぎ出した。梶君がさっさと手を出してくれればいいものの、手を握るに留まっている。
こんな中1みたいな恋愛、いくら待っても進展なんてしない。だから仕方なく代替案としての木田君だった。でも、正直これが失敗。中学時代の経験から、こういう体だけのお付き合いは完全極秘に限る。
秘密を守れる人が最低条件。だって梶君と別れる気なんてない。佐々木桜花。絶対梶君のことが好きだ。隙を見せたら梶君を取られちゃう。それくらい佐々木のポテンシャルは高い。
だから本当なら木田君なんかと、こっそり遊んで隙作っちゃいけないんだけど、悲しい性でつい……
でも、これでも事前調査はした。木田君はイケメンだし普段から経験豊富みたいなこと言ってた。
だから、遊ぶ相手にした。
木田君だってそれ目的だと思ったから。結論から言うと童貞。いや、口では言わないけど私の経験値的に木田君は童貞。
やっちゃった……正直な感想。割り切った遊びの関係という約束だったが、童貞故に依存された。いや、自己主張し始めた。
私が木田君の女みたいな。なんで私がこんな薄っぺらいイケメンの彼女なの? そして新たな事実が判明した。薄っぺらいだけではなく、ヘタレだということ。
残念なイケメンの代表格。そしてその残念君に私は弱みを握られた『梶にバラされたくないでしょ?』だ。ここで青い顔でもしたら付け込まれる。
私は『お好きにどーぞ』な態度に徹した。でもクギだけは刺した。学校で馴れ馴れしい態度を取らないでと。
もし守れないなら2度とさせない。
裏返せば、約束さえ守ればある程度定期的に、受け入れるとも取れる……身から出た錆とはこのこと。
長々と自分語りをしたのは、梶君に嘘ついてまで木田君とラブホに出かけたのは、ノルマ達成のため。まぁ、それなりに楽しんでるけど。流石に2日連続でつき合ったから、しばらくは大人しいだろう。
そんな訳で久し振りに梶君と絡んで癒されたい。
いつもより早く教室に入り、彼が来るのを待つ。だけど、違和感を感じた。気のせいだとばかり思っていた。最初に感じたのは校門辺り。なんか見られてる感じ。
中学時代みたいにバッチリきめてる訳じゃない。
自分でも少し無理はあると思うが、地味な清純派に路線変更してから、そういう視線を集めることはなかった。
それを校門で感じ、靴箱でも。気のせいか。そう思って教室に来たが、その視線はある。しかも、教室ではあからさまだ。佐々木一派。
大袈裟な呼称だけど、私はそう呼んでいる。クラスの女子最大派閥。っていうか、それしかない。
あとは群れたくないボッチか私。私は梶君という防波堤があるから、数人の女子と会話する程度で問題ない。しかし、今朝の佐々木一派はあからさまな視線を投げつけてくる。でもここは我慢。
梶君が来たら佐々木は大人しくなる。あなたの大好きな梶君は私の彼氏。そんな目で見るなら、言いつけてもいいんだけど?
はぁ……それにしても、遅い。遅いし、木田君の視線がウザい。そんなにチラチラ見たらバレるでしょ。
ホント人の迷惑考えないんだから。それにしてもおかしい。ホームルームのチャイムが鳴っても梶君は来なかった。
遅刻なのか、まさか体調不良で欠席? 聞いてない。きのうも用事があるって私言ったから遠慮して連絡くれなかったのかなぁ……
いつの間にか佐々木もいない。すると委員長の和田さんが担任の所へ行った。なんでも、梶君は胃痛。佐々木はお腹が痛い……アレか。
なるほど、だからさっき機嫌悪げだったけど、アレで体調が悪かっただけか。心配して損しちゃった。なんか後ろめたいと、余計なこと考えちゃう。
でも、あれだなぁ……木田君の相手を卒業までするのはダルいなぁ。もう、1年間清純派な私を梶君に焼き付けたんだから、私から次のステップに誘おう。
そういう関係になってから、木田君のこと相談しようかなぁ……脅されてるみたいな感じで。
もう、最初から梶君に色仕掛けしとけば、もっとシンプルだったのに。
私は梶君と佐々木のいない教室で1限目の授業を受けた。保健室で何かが起きようとしてるのも知らずに。
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