第27話 でも、仕方なくない?

「申し訳ございませぬ~~」


 土下座。場所は雪ちゃんのベッド上。土下座ほど土下座じゃない。そもそも目線が高い。見ようによれば、ちょっとしたストレッチだ。そして土下座をしてるのは俺じゃない。来島雪華。雪ちゃんだ。なんでこうなったか……


「あのさ、怒ってないけど?」


「いや、怒ってるよ! 十分過ぎる程怒ってるって! お姉さん何年君といると思うの? 君の人生は私との思い出で埋め尽くされてんだよ⁉」


「いや、じゃあなんで、俺の人生を埋め尽くしてる雪ちゃんが!」


「はい……ヤバ……」


「なんで、読み違えた?」


「いや……ほら、大体さぁ、。最終、君ヒヨるじゃん? 基本チキンていうか?」


「はははっ、自分の事を棚に上げてディスります? いまディスりましたよね?」


「だって‼」


「だって、なに?」


「うわっ、コイツ大人げねぇ~~だから土下座してんじゃん‼ 淳之介のいじめっ子‼」


「はっ⁉ いや、雪ちゃん。土下座と言いますが目線俺よか上ですから! 雪ちゃんベットの上 オレはベッドの下な? 誠意感じないんだけど?」


「あ⁉ 下手に出とけば調子こきやがって! なに? お姉さん畳に額擦り付けて土下座させたいわけ⁉ おまっ、表出ろ、表‼」


「はいはい、キレて誤魔化す、お得意ムーブ‼ もう何回騙されてきたやら! 何年付き合ってると思ってるかって? こっちのセリフだよ! 何『ぽっと出の男』だ! 煽るだけ煽っときながら『」ってなに⁉ 軽いわ! めちゃくちゃ軽いわ‼ だいたいこの流れ、、普通!」


「いや、しょうがなくない? お姉さん『アレ』なんだし! 君もさぁ、姉ちゃんいるんだから知ってんでしょ? 女子は大変なんだよ? 大人になんなよ、大人に。まったくもう!」


「いや、だからいましましたが⁉ 大人の階段上る気満々ですが?」


「いや、だから~~いつもはさぁ、君ヒヨるか笑いに逃げるでしょ? お姉さんいつも快く見逃してんじゃん! なんで今回だけそんな乗り気なの? あっ! アレでしょ! 彼女寝取られたからって焦ってんでしょ! 絶対そうだ!」


「寝取ら……」


「あっ……ヤバ……ごめん、その……今のはダメなヤツ。その……親しき中にも礼儀ありでした……怒るよね……淳之介、ごめん。黙んないでよ、謝ってるじゃん」


「別に。事実だし。寝取られてるし。きっと雪ちゃんも、ぽっと出の男に寝取られて……きっとこの先俺の人生要所要所で寝取られる運命なんだ……」


「要所要所ってなに?(笑)あのね、お口が過ぎたのは許して。ごめん、あと……私イヤって言った?」


「今の俺の状況で女子の言葉を信じろと? 学校中どこにいたって寝取られ男だって言われてるような俺に、女子の言葉を信じろと?」


「女子じゃない、私のことを信じて、みたいな?」


「何が『みたいな?()』だよ!」


「いや『(てへっ)』言ってないでしょ! いや、でもさ。淳之介、考えてよ」


「何を?」


「いや、別にって言うか……そういうの……初めてってことよ? するの淳之介がいいと思ってる。だけどさぁ……アレなんだって! 嫌じゃない? 初めてがアレ中とか! 君のことも考えてるんだからね!」


「なんでここで逆ギレ?」


「いや、逆ギレもしたくなるっつーの! あのさ、自分でも言ってるでしょうが。今の状況で女子の言う事信じられないのわかる、だからよ!」


「何がどう、だからなんだよ!」


「怒んないでよ! いい加減怒るわよ ‼ だからはだから! ちゃんと聞いて、いい? 聞いてくれないっと約1か月無視したげる、覚悟ある? マジだよマジ! 1か月って30日じゃないよ、31日よ? 31日お姉さんのスマイルなしで、君生きてく覚悟あんの? 一応『ある!』なんて言ってみ? 泣くからな?」


「覚悟は……ない。ごめんなさい」


「素直でよろしい。じゃあ話す。私、初めてなのは何となくわかるよね?」


「それは、うん……」


「淳之介が好きなのも、その気持ち我慢してるのもわかるよね?」


「うん、それは……うん」


「君がさ、いま女子が信じられないのはわかる。仕方ないもの。でも、私のこと、クラスの娘たちも信じてるでしょ、実際?」


「それは、うん」


「君が最初がいい。そう思ってる。さっきも言ったけど、私らいつまで愛莉の顔色伺わないっとなのってのも本音。でも、愛莉のこと嫌えないのも事実。いや、こういうんじゃない、そんな難しいこと言いたいんじゃないの!」


「えっと……?」


「いや、単純にさ、淳之介! アレなの! 多いの! マジで‼ いや、どうしても君が今がいいっていうなら、しかたないよ? でもさ、今アレで、してもさ、わかんなくない?」


「わかんない」


「いや、だから初めてだからの出血なのか、アレでなのか! 君いま女子信じらんないんでしょ? 後になって『あの時の出血って単にアレだったんじゃないの?』って絶対思うでしょ! 証明しようがないじゃない! ヤダよ、初めてなのに後になって疑われるなんて。そうなったら私マジ切れじゃ済まないよ? だから1週間待って! 私何年待ったと思ってるの!」


「ごめん、なんかごめん」


「おーい! 淳之介! 言葉と行動変じゃないか? なに脱がせに掛かってる? 確認か? 一応目視確認しとくか、みたいな軽いノリか? 君、そんなバカなの?」


「いや、確認しないと精神衛生上よくないかなぁと」


「私の精神衛生上は? いいよ、でも脱ぐのはマジ勘弁。触って確認出来るでしょ?」


「直接?」


「バカなの⁉ 上からよ‼ 当ててるから! それでいいでしょ? ガードルはいてナプキン当ててるからカチカチよ! 確認それでよくない? いい加減嫌いになるよ!」


 ここは折れないと仕方ないか……俺は脱がせに掛かった手を渋々止め、半分ズラした下着を元に戻した。触って確認しろって事なんだろう。俺は雪ちゃんのスカートの中に手を入れ、を手探りで触ってみた。


 確かに雪ちゃんが言うようにはカチカチに固められていた。姉を持つ弟なので『多い日』はという情報というか、無駄知識は持っていたので、ウソをついてるんじゃないのはわかる。いや、こんな確認するまでもなく、雪ちゃんが俺にそんなウソは付かない。


 じゃあ、なんでムキになって確認までしようとしたかと言うと、単に大好きな雪ちゃんのを触りたいという、男子的願望なだけ。いや、思春期男子として普通の反応だろうと自負する。


「それにしても、あれだね……」


「なに?」


「客観的に見て、シュールな絵面だね(笑)」


「それ、君が言う? それと笑えない!」


『ぽこ!』


 軽く握られた拳でゲンコツされた。そうか、雪ちゃん未経験だったんだ。知ってたけど(笑)俺はなぜか晴れやかな気持ちになった。










 







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