8話 第二回義妹会議
おにいが柑奈にデレデレの可能性がある。
それを知った以上、やるべきなのは——
「"第二回義妹会議"を開くよおねーちゃん」
あたしは恥を忍んで寝る前に勉強中のおねーちゃんに声をかけた。
「義妹会議? 海里は何か議題があるの? それに、わたしたちはもう仲が決裂して完全に敵同士よね? 今更泣きついても遅」
「おにいが!」
「?」
「……柑奈に惚れたかも」
「詳しく」
おねーちゃんはせっかく手に垂らした化粧水を全部ティッシュで拭き取ると、ベッドにいるあたしの隣に座った。
食いつき良すぎでしょ。
さすがのおねーちゃんも第三勢力の存在がチラつくとこんなに焦るんだ……。
「まずはあたしの情報を提供するから、おねーちゃんと停戦協定を結びたい」
「ダメよ。わたしはもうお兄ちゃんの童貞をしゃぶり尽くすまでの勝ち筋が見えているの。今さら海里と手を組むなんて3●(ピー)することを自分から認めるようなものじゃない」
「なら教えないだけ。勝ち筋が見えてるならおねーちゃんは何も知らずにあたしと一緒に負ければいいじゃん。あたしはおにいが女性恐怖症から立ち直れるなら柑奈におにいの童貞取られても悔いはないし」
これはハッタリに近い嘘。
おにいのことは……あたしだって欲しい。
ただ、女性恐怖症が治っておにいが幸せになれるなら……柑奈でもいいとは思う。
「……海里、あなた知らない間にズル賢くなったわね」
「おねーちゃんほどでは無いけど」
どちらにしてもあたしだけじゃこの問題は解決できない。
ここはおねーちゃんの持つ地頭的な賢さが必要になってくる。
バレンタインまで残り一か月。
おねーちゃんはチョコと一緒におにいに処●を捧げておにいの童貞を食べると言っていた。
でもこのままじゃおにいを奪われるのはおねーちゃんも一緒のこと。
さあどうする……小樽優梨。
「わたしが協力すれば、金川柑奈、いや、カンタの問題は解決するの?」
「う、うん」
「……分かった。停戦協定を結んだ上であなたに協力するわ」
良かった……。
あたしは安堵する。
「協定にする上で、お互いに裏切ることができないような約束事を決めるわよ」
「約束事?」
突然、あたしのスマホにエアードロッパーで写真が送られてきた。
なんだろ? と思ってスマホを開くと、おねーちゃんから一枚の写真が共有され、そこには自分の机でお兄ちゃんのパンツを咥えながら自撮りをするおねーちゃんがいた。
「な……なにこれ」
「もしわたしが裏切ったら、この『食後のデザートにお兄ちゃんの生おパンツを食べるわたし』の写真をお兄ちゃんに見せてもいいわ」
「お、おおえぇ……汚いよおねーちゃん」
あたしは嗚咽を漏らしながらおねーちゃんから距離を置く。
我が校が誇る生徒会長が、兄の脱ぎ立てパンツをむしゃむしゃ食べてるなんて世間に知られたらヤバイかも。
「海里も恥ずかしい写真をわたしに送りなさい」
パンツ食ってる写真に恥ずかしいという羞恥心があるだけまだおねーちゃんは救いがあるのかもしれないけど。
それにしてもあたしの恥ずかしい写真かぁ……。
あたしは写真フォルダを開いて写真を探すが見つからない。
じゃあ、今から撮ろっと。
あたしはスマホのカメラをインカメにして、目を閉じながら唇を尖らせると、写真を撮った。
「ど、どうこれ? キス顔はおねーちゃんのパンツ食いより恥ずかしいっしょ」
「あなた……よくそれでお兄ちゃんの童貞を食べようなんて思えるわね。性知識小1なんじゃないの?」
「別にいいじゃん! キス顔も恥ずかしいし!」
「……ま、いいわ」
自分たちのえっちな自撮りをお互いのスマートフォンに送り合って、協定を結んだ。
「茶番は終わったことだし、話してもらえるかしら」
「うん」
あたしはおねーちゃんにここまでの経緯を話した。
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