2話 海里の友人参戦?
ったく、妹相手に何をドキドキしてるんだ俺は。
「それもこれも海里のメッセージカードが悪いんだ……」
でもあんなのに惑わされてる俺も俺だし、頭冷やさないとな。
俺がトイレから出ると、今度は海里が自分の部屋から出てきた。
今朝のメッセージカードを思い出すだけで海里が今何を思っているのか気になる。
「おはよーおにい! 昨日はあんがとね」
「か、海里……おう」
あんまり気にしてない様子だ。
「ん? おにいさ、なんか顔赤いけど……もしかして風邪?」
「ちがっ」
ダメだ、なんで海里にまで変に緊張してるんだよ俺……。
海里は海里で、昨日のメッセージカードについて、何か話すことはないのだろうか。
照れくさいからあえて触れない方向で行ってるとかなのかな……?
それはそれで可愛く見えて——い、いやいや、落ち着け俺!
間違いなくおかしくなってる。
妹に対しての可愛いであって、そういうアレじゃない。
落ち着け……落ち着け……。
「ま、元気ならいいやっ! 昨日は寒かったから心配したんだけどね」
海里ははにかみながら、俺の横を通り過ぎて洗面台の方へ行く。
優梨同様に、海里の金髪も、朝は寝癖で跳ねてることが多い。
でもさっきの優梨みたいに撫でるのは……ダメだ。
「あ、そだそだ!」
海里は何かを思い出したかのように、俺の方を振り向くと、両手を合わせる。
「おにいにお願いしたいことがあってさ?」
「お願い? プレゼントならもうないぞ」
「そうじゃねーし! あたしのことガメツイ妹だと思うなし!」
ぷくっと頬を膨らませ、いじける海里。
「あたしが頼みたいのは、おにい塾の件で」
「まさかお前、今さら志望校を戻すから勉強会を辞めたいとか言うんじゃ」
「違うっ! おにいとの勉強会を辞めたいとか言うわけない! ……あっ」
海里は「ヤバっ」と言いながら口を塞ぐ。
海里は俺との勉強会を……辞めたくない……?
海里がそこまで勉強会が気に入ってくれてたなんて、知らなかったな。
「やっぱ今のはナシ!」
「ナシって……教えてる側の俺にとっては、そう言ってもらえると嬉しいけど……」
「え、もしかしておにい照れてんの?」
「照れてはないが! ……でも、海里が嫌々勉強してなかったのが、嬉しいっつうか」
「へぇ〜」
なんだよこれ……。
さっきの優梨のこともあって、今の俺はどうかしてる。
落ち着け、俺はこいつらの兄なんだから、変な気持ちは持つんじゃない……。
「で、さっき言ったお願いの件なんだけどさ」
海里は俺を揶揄うのに飽きたのか、本題に戻してくる。
「実はあたしの友達もおにい塾で勉強したいらしくて」
「お前の友達? ……ってことは、女子なのか?」
女子なら受けられないよな。
警戒気味に俺が渋ると海里がわちゃわちゃと両手を動かす。
「ち、違う違う! 男子男子!」
「男子……?」
男……?
ってことは、その男子がきっかけで海里が習学院高校を受けることになったのかな?
わざわざ自分の家まで呼ぶんだから、きっとその男子のことだよな?
「お願い、できないかな? おにい」
なんだよ海里のやつ……なんだかんだで意中の男子と上手く行ってるみたいじゃないか。
ここはこいつの兄として、快く受け入れよう。
いずれその彼が義弟になる可能性もあるわけだしな。
「おう! 俺なんかでもいいなら、任せてくれ」
「ホント!? ありがとおにい!」
嬉しいからか、やけに興奮気味な海里は、勢いで俺に抱きついてきた。
海里の綺麗な金髪からシャンプーの甘い匂いがして、正月前だってのに餅みたいに柔らかな海里の胸が思いっきり俺の上半身に押し当てられる。
この膨らみ……でっかい。
変なこと考えるなよ俺……妹は妹なんだ。
「じゃあ明日の朝から来るように言っとくね!」
「あ、ああ。分かったよ」
なんだかんだでついに妹の好きな男子とご対面……か。
一体どうなることやら。
海里の好きな男子がどんな感じの男なのか気になっていた。
翌日まで楽しみと不安が混ざり合っていたが、迎えた翌日——。
「うぇーい! 海里の親友で金川かん……じゃなくて、オレ、カンタって言いますっ!」
やけに甲高い声で挨拶してきたのは『カンタ』と名乗る男子。
海里と同じくらいの金髪で、男子にしては少し長めのショートヘアで前髪を掻き上げており、どう見てもギャル男。
こいつが海里の……好きな男子なのか?
服装はブカブカの黒いパーカーにデニムパンツ。
身長は170くらいで俺とあまり変わらず、かなり細身でスタイルがいい。
「へー! あなたが海里のお兄さん? 海里のお兄さんにしては結構普通だね? あーでも、そんな所が海里は好きそうだなぁ」
「ちょっ、カンタ!」
海里とカンタくんはイチャイチャしながら揉めている。
こ、こいつがいずれ俺の義弟になるのか……。
ギャル男とギャルは相性抜群かもしれないが、こんなやつに海里をあげていいのだろうか……。
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