3話 柑奈は天然ボーイッシュぎゃる
おにいは女子が苦手ということもあり、男装をするならおにい塾に来てもいいと親友の柑奈に伝えていた。
実際におにいと会ってみて、おにいの反応からして女子ってことがバレてないっぽいし、柑奈の男装は成功してるってことだよね?
これなら柑奈でもおにいから勉強教えてもらえると思う。
あたしの親友・金川柑奈は元バレー部のエースでいつもあたしと二人で連んでる金髪ショートのギャル。
胸は男子みたいにぺったんだし、男勝りな性格をしていて、あたしに近づく男子たちをいつも自慢の腕っぷしでケチョンケチョンにしてくれる。
身長も170cmあるから男装をしていても違和感はないし、さらにオーバーサイズの服を着てるからとりあえずこれで色々と誤魔化せてるはず。
一つ懸念点があるとすれば……柑奈って声がめちゃカワボなんだよね……。
「カンタくんは海里とどういう関係なの?」
「親友っすよ!」
「し、親友……へぇ」
まあ、中学生なら声変わりしてない男子もギリいるし、おにいも疑ってる素振りはないから大丈夫だとは思う。
「カンタ、さっさと上がりなよ。勉強するよ」
「うん! じゃなくて、おお!」
先行きがかなり不安だけど、おにいに疑われなければオーケーだし、気にしない気にしない。
「カンタくんってこの家に来るの初めて? 俺が知らないだけで結構来てたりするのか?」
「あー、海里の家に来るの初めてっすけど、海里はいつもオレの家に来てますよー」
「へ、へー、海里が……」
柑奈が余計なことをベラベラ話すので、おにいが苦い顔で見てくる。
なんだろ……も、もしかしてカンタが女子ってバレた!?
あたしは脂汗が頬を伝うのを感じる。
「あ、あのさ、単刀直入に聞くけど」
や、やばい……!
「二人って付き合ってるの?」
「「は?」」
あまりにも突拍子もないことを聞かれて、あたしはカンタと一緒に目を丸くした。
「いやぁ、男女の仲で家で遊んでるっていうのはそういうことだと思っちゃうんだけど」
「そういうこと? い、いやいやないっすよお兄さん! オレも海里も処女ですし」
「しょ、処女!? な、なに言ってんのカンタくん!?」
しょ、しょじょ? スマホスマホ。
あたしはすぐにgoggle先生で「しょじょ」の意味を調べ…………って!
「カンタのバカァ!!!」
「ぐふぉっふ!?」
あたしは廊下でカンタの頬に思いっきりグーパンを入れた。
✳︎✳︎
「いやぁお兄さん、さっきは言葉のアヤっていうか、お互いにSE●とかしたことないって言おうとしたら処女って言っちゃいました! 男が処女って、なんか可愛いっすよねー。アナ●処女ならあるんすけど、あはは」
苦し紛れに柑奈は言い訳を並べるけど。おにいはまだ苦い顔をしており、若干バレてるんじゃないかと思い始めている。
てかそれより、あたしがエッチなことしたことないっておにいの前で堂々とカミングアウトするのもデリカシー皆無だし!
この金髪短髪バカ女! 今度絶対にメシ奢らせるから!
と、目で訴えると柑奈は「こっわ」と小さく呟く。
「まあ何はともあれ、今日はカンタくんも勉強しに来たんだろ? さっさとやろうか」
おにいがしっかり本題に戻すと、あたしと柑奈はリビングのテーブルに勉強道具を広げ、生徒同士で並んで座り、向かいの椅子におにいが座った。
やっと勉強会が始まる……ったく、めっちゃ変な汗かいたし。
「じゃ、お願いしますっ」
そこから柑奈とあたしは、おにいに先生をしてもらって勉強を始める。
柑奈は自慢の愛嬌を振りまきながら、いつの間にかおにいと自然に話せる関係になっていた。
あとはさっきみたいに柑奈がボロを出さなければいいだけだけど……まあ、柑奈はやればできる子だし、上手いことやれるっしょ。
「ん? カンタくん、肩からピンクのヒモみたいなのが出てるけど」
「ああ、これブラ紐っす!」
「ぶ、ブラ紐?」
っておぃぃいいいっ!
言った側からフラグ回収すんなし!!
「か、カンタ! 違うっしょ!」
「お……おお、そうだった」
あたしが一喝すると柑奈は「冗談っすよぉ〜」と呑気に言いながら頭を掻く。
「これはスポブラっす! オレ、結構、乳首デカくて擦れるんで!」
って、おぃぃぃいいいいい!!!!
「へ、へぇ……スポブラか。今どきは男子でもするものなの? 俺、ファッションとか疎いから知らなかったよ」
おにいは自分の乳首の周辺を触りながら言う。
へぇ、おにいの乳首ってそこにあるんだ? 意外と横の方にある————じゃなくてっ!
あたしは首をプルプル振って正常な思考に戻る。
ヤバい、このままの調子だとそのうち柑奈が女っておにいにバレる!
もしバレたら大変なことに……って、あれ?
そういやー、おにいが女子苦手っていうのは知ってるけど、仮に柑奈が女子だって分かっちゃったらどうなるんだろ?
失神するとか? 嘘ついたからブチ切れたりも……?
最低な考えってわかってるけど、少しだけブチ切れるおにいを見てみたい気持ちも。
「だ、ダメだし!」
「うおっ! どうしたんだ海里? 何か分からない問題があったのか?」
「へ? ……あ、えと、カンタばっかじゃなくて、あたしもちゃんと見て欲しいっていうか」
上手いこと誤魔化しながら、しれっと自分の欲望を口にする。
あたしも少し賢くなったからか、だんだんおねーちゃんみたいに良くも悪くも口が上手くなってきてるのが、血は争えないっつうか。
「もー、海里ったら嫉妬深いなぁー」
「カンタうっさい!」
と言いながら、柑奈に向かって「マジで気をつけろ!」と目で訴える。
すると柑奈は調子よくウインクで応えた。
こいつ分かってねぇし!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます