4章 第三の刺客
1話 海里からの贈り物
双子の美人妹たちと過ごしたクリスマスの翌朝。俺が目を覚ますと、ベッドの枕元に封筒が置いてあった。
薄ピンク色の小さな封筒。クリスマスツリーの形をしたシールで、
「なんだこれ」
寝起きのガラガラ声で言いながら、爪でシールを剥がして封を開ける。
すると中から、赤と緑のストライプ柄をしたクリスマスカードらしきものが出てきた。
二つ折りのクリスマスカードを開き、中身に目を通す。
『おにいへ。
めりくりー!
昨日プレゼントしてくれた手袋ちょーいいね! ありがと!
ってか昨日の夜さぁ、おねーちゃんもおにいの手袋ちょー喜んでたし!
おねーちゃんさぁ、昨日のおにいのプレゼントでおにいに惚れちゃったんじゃないかなぁ? なーんてね。朝起きたら頭でも撫でてあげたらー?
海里より』
という文が赤と緑のストライプ柄が入ったクリスマスカードに印刷で書かれていた。
は? 優梨が俺に惚れてる……?
兄妹同士で馬鹿馬鹿しい。
やっぱりどれだけテストで点が取れても海里は海里のままだな。
しかし、あの海里がわざわざメッセージカードなんて珍しいな。
普段なら用があればlimeのメッセージを送ってくるし、最先端を行くギャルの海里がメッセージカードなんてロマンチックなローテクを好んで使うか?
それに、わざわざメッセージカードで感謝の気持ちを伝えてくれるなら、せっかくだし手書きにしてくれればいいのに……と思ったけど、海里は字がめちゃめちゃ汚いからこれでよかった。
いつもテストの丸つけの時にどれだけ苦労してることか。
「ま、いいや。顔洗ってこよ」
俺が寝癖を直しながら部屋を出ると、たまたま同じタイミングで洗面所から出てきた優梨と鉢合わせる。
「おはよ。お兄ちゃんっ」
羊みたいに白くてモコモコのパーカーを着た優梨。
優梨も寝起きだからか、いつもの艶やかな長い黒髪が少しだけ跳ねていた。
「お……おはよう優梨」
俺は不意にさっきのクリスマスカードに書かれていた文を思い出す。
優梨が俺に惚れ……って、ないない。
実の妹が兄に惚れるなんて激ヤバ展開、ラノベじゃあるまいしあり得るわけない。
「あれ? ボーッとしてどうしたのお兄ちゃん?」
「あーいや、その」
優梨が俺に惚れた云々は置いておいて。
あのメッセージカードに書いてあったように、優梨の頭を撫でてやるくらいなら昔からやってたし、いいかもな?
俺は少し恥ずかしく思いながらも、優梨の寝癖を直す感じでそっと優梨の髪を撫でた。
「えっ、お兄ちゃん?」
優梨は驚いた様子でぴくんっと反応する。
あれ……やっぱ、嫌だったのか?
俺はすぐに手を離すと、誤魔化そうと言い訳を探す。
「あ、えっと、これは……寝癖! そう、寝癖がついてたからさ!」
「お兄ちゃん…………ふっ」
優梨はクスッと笑いを堪えながら、俺の方を上目遣いで見てくる。
揶揄うようで、誘うようなその瞳……。
「お兄ちゃんったら、そんなにわたしに触りたかったの?」
「ち、ちがっ! これは!」
「別にいいよ? だってわたしはお兄ちゃんの
優梨は言いながら、俺の手に頭を擦りつけてくる。
優等生キャラだった優梨が、最近やけに距離が近い……。
海里が言う惚れてるって、まさか……ほんとにブラコンになったとか?
だとしたら……。
「お兄ちゃん? 顔赤いけど風邪でも引いたの?」
「……わ、悪い、俺ちょっとトイレ!」
俺は逃げるようにしてトイレへ飛び込んだ。
ちくしょう。海里のせいで変なことばっか頭に
優梨は……妹なのに……っ。
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