10話 祭りの後に新しい展開
あっという間にクリスマスデートが終わってしまい、わたしも海里も名残惜しく思いながら部屋まで戻ってきた。
海里は戻ってきてからずっと、お兄ちゃんから貰った赤い手袋を頬に擦り付けている。
「ふっ……それくらいで喜ぶなんて、海里もまだまだよね」
「なんなのおねーちゃん? 別にいいじゃん」
そう言って海里は再び手袋を見つめていた。
気持ちは分からなくもない。
でも、このプレゼントはお兄ちゃんが、わたしたち姉妹に選んだものであって、わたしのためだけに注がれた愛ではない。
海里への愛という余計な成分も入っているから、素直に喜べないところあった。
まっ、それでもわたしは、当然これで毎日自●行為するけど。
「おねーちゃんさ、おにいと二人の時何話してたの?」
手袋を机に置いてブラシを持った海里は、ベッドの上でその金髪を梳かしながら、わたしに聞いてくる。
「ノーコメントよ。わたしにはわたしのやり方があるの。海里みたいにバカ丸出しのラブラブアピールはいつか限界が来るもの」
「は? あたしはそんなアピールしてないし」
「……どうだか」
海里とは今日一日でより一層険悪な関係になったような気もする。
しかし、それは仕方のないこと。
お互いにお兄ちゃんの義妹として、この義妹戦争を勝ち抜くには蹴落とす必要がある。
海里は少し頭が良くなったけど、肝心の受験に落ちればこのレースからコースアウトすることになる。
そうすれば、わたしだけがお兄ちゃんの寵愛を授かることに……。
「おねーちゃんよだれよだれ。またキモいこと考えてるっしょ」
まあ何はともあれ、クリスマスに計画していた、お兄ちゃんに"妹"を女として意識させる作戦は成功。
あの時のお兄ちゃんは、確実にわたしのことを女として見ていた。
お兄ちゃんにとって、海里はまだ妹としての印象が強くても、わたしは優位に立った。
海里みたいにベタベタしなくても、少ないチャンスでじっくり攻めるのが頭のいい人間のやることだし、わたしはそれができる。
「お兄ちゃんとバレンタインデイSE●をするのはこのわたし……」
「お、おねーちゃん、欲望が口から出てるって」
✳︎✳︎
おねーちゃんが先にお風呂へ行ったので、あたしは机の上にある、おにいがくれた赤い手袋を舐めるように見ていた。
「おにいがプレゼントくれるなんて、いつぶりだろ」
確かあれは、あたしらがまだ小学高低学年の時。
パパとママが、あたしのクリスマスプレゼントだけ、間違ったものを買ってきちゃったことがあって、その時おにいは、真っ先に部屋を飛び出して玩具屋を回ってあたしのクリスマスプレゼントを買いに行ってくれたことがあった。
「……おにいは、ほんと、昔から優しい」
だからあたしがおにいを守んないと。
おにいと同じ高校に入って、一番近くでおにいを守る。
それがあたしにできる、最大限の恩返しなんだし。
「……てか、バレンタインデイS●Xって、マジでなんなん? なんかの造語なんかな」
スマホでそのワードを調べていると、突然、lime電話がかかってきた。
電話の主は、同じ中学で一番仲の良いギャルの
「もしもしー? 柑奈ぁ?」
『海里ぃ……たすけてぇー」
「どしたん柑奈? 今日は高校生のフリしてクリスマスパーティーの合コン行く予定だったんしょ?」
『実はウチ……それ行ってないんだわ』
「え、マジ?」
あれだけ高校入る前に大学生のカレピ作る〜って言ってた柑奈が……?
『海里にお願いあんだけどさ』
「お願い? べ、別にいいけど」
『お願い海里っ! ウチも海里と同じ志望校行きたいから、海里の通ってる塾教えて!』
「え、ええ……そんなのクリスマスの夜に頼まんくても」
『海里と同じ塾行きたいの! 最近海里の成績めちゃくそ良くなってんじゃん! だからウチも行きたくて……ね、親友の頼みだと思ってさ! お願い!』
おにい塾はあたし専用っつうか、そもそも柑奈連れてきたらおにいの女性恐怖症? 的なやつが再発しちゃうんだよね。
でもあたしも、親友の柑奈と同じ高校行きたい気持ちは、凄いあるし……。
「そだ。柑奈! 一つ提案があんだけど」
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