妹が"義妹"ってことを俺だけが知らない〜双子の美人姉妹は何も知らない兄を堕としたい〜

星野星野@2作品書籍化作業中!

1st シーズン『高校受験編』

プロローグ

妹が義妹ってことを俺だけが知らない。


「お兄ちゃんと結婚するのはわたし!」

「違う! おにいと結婚するのはあたしだもん!」


 瓜二つの可愛らしい顔をした幼女たちの甲高い喧騒が、マンションの一室に響く。


 その幼女は604号室に住む小樽家おたるけの双子姉妹で、名前は小樽優梨おたるゆうり小樽海里おたるかいり

 二人は小学2年生で、一つ上に長男の小樽悠人おたるゆうとという兄がいる。


「こらこら二人とも! 仲良くしろって」


 妹たちが喧嘩する声が聞こえてリビングへ駆けつけた兄の悠人に宥められ、二人はやっとつかみ合いの喧嘩をやめた。


「どうして喧嘩になったんだ?」


 悠人が訳を問い糺すと、二人は同時にお互いを指差す。


「「海里が(優梨が)おにーちゃんはわたしと結婚するって言うから」」


 それを聞いた悠人は「やれやれ」とため息を溢して、二人の肩に手を差し伸べた。


「あのな二人とも、よく聞け。血が繋がってる男の人と女の人は、結婚できないんだよ」


「「え」」

 

 悠人が諭すと、姉妹は同時に目を丸くしながら口をぽかんと開ける。


「だから優梨も海里も、オレなんかじゃなくて、もっとイケメンでカッコいい男と結婚するんだぞ?」


 優梨と海里には、悠人が何を言っているのか分からなかった。

 二人にとって悠人は、スマートでスポーツ万能で勉強もできて、いつもみんなから褒められている自慢の兄であり、物心ついた時から彼のことを兄として——そして、一人の男子として好きだったのだ。


「ねえねえおにーちゃん。なんで血が繋がってたら結婚できないの?」

「おにいは、あたしたちと結婚したくないの?」


 優梨と海里が立て続けに悠人へ問いかける。

 悠人自身もまだ小学3年生ということもあって回答に困っていたが「そ、そーいう法律があるんだよ!」とはぐらかした。


 その日からずっと——双子姉妹は、自分たちの気持ちに靄がかかっていた。


 でも、そんな靄が一気に晴れたのは7年後のこと——。


「おねーちゃんもう12時だし電気消すよ」

「待って海里。もう少し勉強したい」


 中学3年生になった優梨と海里。

 勤勉で、中学でも学年トップの成績を誇る優等生の優梨と、ネイルやアクセサリーにしか関心がなく、髪を金色に染めたギャルの海里。


 双子の姉妹は両極端な育ち方をしたが、二人に言えるのは、美人でスタイルも他人より優れていること。


 優梨はガリ勉優等生なのに、制服越しでも分かるエロティックで豊満な胸と、ムチッとした太ももで周りを誘惑し、それに対して海里は校内一のギャルとして、いつもその大きな胸を揺らしながら胸元のボタンをちょっぴり外し、制服を着崩している。


 芸能活動をしていると言われたら自然と納得してしまうくらいに、二人の顔は端正で可愛らしく、同い年の男子たちにとっては"初恋ハンター"でもあった。


 そんな彼女たちは、もちろん現在通う中学でも大人気。

 優梨は優等生男子から、海里はヤンチャな男子からの人気が根強く、中学では【トップ美少女は優梨・海里】論争が起こるくらいだ。


 そう、この7年で彼女たちは、近所では有名な美人双子姉妹になっていたのだ。


「つーかおねーちゃん勉強しすぎでしょ。そこまでしておにいと同じ高校入りたいの?」

「べ、別にお兄ちゃんは関係ないから」


 深夜になっても勉強机に齧り付く優梨に呆れながら、爪の手入れをする海里。

 双子姉妹ということもあり、昔から彼女たちには一人部屋が与えられず、二人で一つの部屋を自室にしている。


「海里の方こそ赤点ばっかり取ってるし、このままじゃお兄ちゃんと違う高校になっちゃうけどいいのー?」

「別にあたしおにいのこと好きじゃねーし、おねーちゃんみたいなブラコンでもねーから」

「ぶ、ブラッ!? ち、ちがうから!」


 怒った優梨はシャーペンを置くと、立ち上がり、部屋から出て行こうとする。


「ちょ、おねーちゃんどこいくの?」

「お……お手洗い」

「待ってよ。あたしもトイレ行きたい」

「ええ……」


 優梨と海里は二人で部屋を出て、トイレまで行くことに。


「あたしが先ね?」

「は? わたしの方が先に行こうと思ったんだからわたしが先に決まって——」


 どっちが先に入るか言い争いをしながら、トイレに繋がる廊下を歩いていると、リビングの方で電気が点いてることに気が付く。


『そろそろ——あの子たちに話してもいいんじゃないかしら?』


((お母さんの声?))


 二人はリビングのドアの前まで忍び足で近づくと、耳をすませる。


『だが、このまま知らない方がいいんじゃないか?』


((お父さんの声も?))


 そして——彼女たちは知ることになる。


『優梨と海里が、悠人とことは——まだ黙っていた方がいい』


((え…………))


 二人は目を見合わせながら、自室へ戻った。

 尿意が一瞬でなくなるくらいの衝撃。


 そしてそれは……彼女たちの大願だった。


「おにいと」

「わたしたちが」


「「義兄妹ぎきょうだい⁈」」


 一方その頃、何も知らない悠人はというと……。


「うっほぉー! この新人Vチューバーかわええー! 認知してもらうためにスペチャ投げまくってやるぜぇぇえええ!」


 Vチューバーにスペシャルチャットを送金する、ただの非モテ男子になっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る