7話 柑奈の逆襲


 柑奈、さんと……お出かけ。


「い、いやいや、待て待て」


 さすがにマズいだろ。

 海里が一緒とはいえ、妹の友達とお出かけとか、ちょっとおかしい気がする。


 それに海里と相談したってことは、海里に俺たちがlimeを交換したことも話したってことだよな?


 海里にわざわざ話して、お出かけを提案するとか……まさか柑奈さん、俺のこと。


「なっ! ないだろ! 目を覚ませ俺!」


 海里と仲がいいってことはクラスの一軍女子みたいな立ち位置の可愛い子なんだろうし、俺みたいな顔も知らない男のことなんて意識するわけない。


 きっと柑奈さんは俺の女性恐怖症を治すトレーニングの一環だと思って、誘ってくれてるんだ。


「そもそも二人は受験生なのに遊びに行っても大丈夫なのか?」


 まあ正月だし、少しくらいはいいのかもしれないが……。


 俺は『了解』と返して海里の元へ向かった。


 ✳︎✳︎


 まさか柑奈が、おにいとlime交換して裏でカンタと双子設定作って恐怖症を治す手助けしてくれてたなんて……全然知らなかった。


 最近、おにいがスマホを見る時間が長くなったと思ってたけど、そういうことだったんだ。


 これはあたしにとっては好都合。

 絶対におにいの女性恐怖症を治してあげて、その上であたしが義妹って伝えてやるんだから。


 そしたらあたしは、お、おにいと、ちゅ、ちゅーなんかしちゃったり。


「おーい、入るぞ」


 あたしが唇を尖らせていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

 お姉ちゃんはお母さんの買い出しに付き合って外出している。

 あたしに用、だよね。

 あ、お出かけのことかな。


「いいよー」

「おう」


 いつもの部屋着用ジャージ姿のおにいは、ゆっくりとドアを開けて入ってきた。


「お出かけのことで来たの?」

「あ、ああ」


 おにいはいつになく強張った顔をしている。

 やっぱあたしら以外の女子と会うのは緊張するのかな。


「大丈夫だよおにい。柑奈はめっちゃ優しいしコミュ力あるし、ほぼ男みたいな感じだし」

「お、男?」

「ほら……カンタと双子なんだから、胸もお察しっていうか」


 こんなの柑奈に聞かれたらぶん殴られそー。


「そう……なのか」


 おにいは微笑みながら、あたしの方を見た。


「俺……本音を言うと、やっぱちょっと怖い気持ちもあるっつうか。でも柑奈さんはlimeで親身に話を聞いてくれて」

「うんうん」

「それが、嬉しくてさ。だから俺、お前たちとお出かけ行くよ。そこで、しっかり柑奈さんにお礼を言いたい」

「うんうん」

「それで……少しでもまた女子と話せるようになったら、その、柑奈さんと口で話せるくらいにはなりたいっていうか」

「うん……ん?」


 ちょ、待って。

 おにい……柑奈のことめっちゃ意識してるんじゃ?


 これは……マズい。

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