9話 バチバチの姉妹


 rising1に来ていた俺と海里と柑奈さんだったが、塾で勉強していたはずの優梨が突然俺たちのカラオケボックスに現れ、そのまま流れで妹たちによるディスり合いの姉妹喧嘩ラップバトルに発展してしまった。


 なんで優梨が……ここに?

 一人だけ除け者にされたことに怒っているのか、優梨の顔はまさに鬼の形相だった。


「おいお前ら、喧嘩はやめろって」


 俺が喧嘩を収めようとすると、二人が俺の方を睨みつける。


「おにいは黙って」

「お兄ちゃんは関係ないから」


 関係ないことはないだろ、と思いながらも二人の顔が真剣すぎてそれ以上言えない。


「なんでわたしを裏切ったの?」

「……うっさい。裏切ってないし」

「裏切りよ。話と違うもの」


 海里が裏切った? なんのことだ?

 俺には理解が追いつかないような話が、さっきからどんどん続いていく。


「それに……どうやらあなたの計画は成功してしまったようね」


 優梨は俺と柑奈さんの方へ目を向けながら言った。


「なんだよ、計画って……」


 俺が問い返しても優梨は何も言わない。


「海里、今からでも遅くないからここで決着をつけましょう」

「は? 決着ってなんなのおねーちゃん?」

「裏切り行為があった以上、もうわたしたちの間に利害関係はない。だからここでわたしたちの勝負に決着をつけるの」


 いや、だからお前らの勝負ってなんだよ!


「勝った方の邪魔はしない……っておねーちゃんは言いたいの?」

「ええ。その通りよ」

「それで、勝負の内容は?」

「屋上のスポーツエリアに行くわよ、海里」


 なんかバチバチしてるな……。


「お兄さんいいんですか? 二人が……」

「よく分からないけどまぁ、殴り合いじゃないならいいかなぁ」

「日和見すぎぃ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る