6話 アイシテル


「あたしもう眠たいから。電気消してい?」

「……いいよ」


 義妹会議が終わり、部屋の電気がやっと消える。


 わたしの提案で開いた義妹会議。

 塾から帰ってきた時にリビングであの光景を見てから、海里にはその件について問い糺さなければならないと思っていた。


 でも海里があの勝負に乗ってきたってことは、海里もわたしと同じでお兄ちゃんのことが好きだってこと。

 海里の本心を知ることもできたわけだし、あれだけ挑発したら、しばらく海里は躍起になると思う。


 頭の悪い海里のことだから、どうせ最終的にお兄ちゃんから愛想尽かされるのがオチだろうし、わたしはその様子を見ながらゆっくりやればいい。

 勝負事は先急いで焦った方が負ける……それがこの世界の理なのだから。

 消灯してベッドで寝てから3分くらいが経つと、海里のベッドの方から「すーぴー」という寝息が聞こえてくる。


「むにゃ……お、おにぃ」


 相変わらず海里はバカっぽい。

 外見だけは、わたしと同じくお母さんに似て美人だけど、言動や行動が幼稚でガサツだ。

 中学でもほとんど授業を聞いてないし、体育はいつも生理を理由に休んでるただの不良。


 海里こんなのが、高貴なお兄ちゃんの彼女になんてなれるわけがない。

 いや……させるわけにいかない。


 昔は神童と呼ばれていて、わたしたちにも優しくて、いつもカッコ良かったお兄ちゃん。

 そんなお兄ちゃんの隣には、わたしのような努力家で優等生が相応しい。

 そう思って、わたしは海里みたいにグレたりせず、お兄ちゃんのことだけを考えて生きてきた。


 そもそもギャルの海里がお兄ちゃんと同じ高偏差値の学徳学園高校に合格できるわけがない。


 海里が当然のように落ちて違う高校になれば、朝の登校も、お昼休みのお弁当も、放課後の寄り道も、わたしがお兄ちゃんを独り占め。


「つまり、わたしの圧倒的勝利……」


 さっきの勝負は完全にわたしの結婚ウイニングランが約束されたようなものだ。


 それに義妹会議で提案した勝負は、単に、女性へトラウマがあるお兄ちゃんへの配慮だけが目的じゃない。


 実はもう一つ、がある。


 それは——お兄ちゃんに"妹を好きになる"という性癖を植え付けること。


 今は2次元にお熱なお兄ちゃんに、執拗なまでにわたしを意識させることで、お兄ちゃんの中に、他の女性は無理でも妹なら……という倫理観のバグった性癖を植え付ける。


 その後、わたしのことが大好きになったお兄ちゃんに、妹は近●だからデキない……という欲求不満の状態にさせて、そんな時にわたしが「実は義妹だったよ」なんて伝えたら、欲求不満のお兄ちゃんはもう大興奮♡しちゃうに決まってるし、衝撃の事実を知ったお兄ちゃんの性欲は間違いなく爆発♡する。


『まさか優梨が義妹だったなんて……でも、それなら遠慮なくいくぞ……優梨ぃっ』


 妄想上のお兄ちゃんが、ベッドで寝ているわたしの身体に跨った。


 絶対に気持ちいい……この世で一番の快楽が、そこにはあるはず……。


 お兄ちゃんとのエッチな行為を想像しただけで身体が疼き、わたしは無意識のうちに下半身へ手を伸ばしていた。


「もうお兄ちゃんはわたしだけのもの♡」

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